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青き天体研究所

青き天体研究所

第三十五話  不安なる動き

ラトゥーニがマオ社に帰還して約3日が経過した。

破損されたMk-2カスタムの修理をしている中、セインはパイロットを集め会議を行った。

新たに仲間に入ったアラド、ゼオラを紹介した後、いよいよ本題に入ろうとしていた。

「さて、本題に入るか・・・。」

「本題?てことは何かあるんだな。」

「そうだ。まずはこれを見てくれ。」

その合図と同時にフィスはキーボードを叩き、目の前のスクリーンに何かを表示する。

「コロニー・・・だよな?何でこんなもんを出すんだよ。」

「このコロニーで最近、妙な動きが見えるんだ。何かを生産しているような・・・な。」

「別におかしくはないと思います。コロニーは元々、宇宙に出た人達の住居区として造られたんですし・・・。」

「確かに俺もそう思っていた。だが、Mk-2カスタムの通信記録に残っていたんだ。ファントムのパイロットの声で『コロニーに戻るぞ』てな。」

「テンザンの声でだと!?」

セインの言った言葉に反応し、リュウセイは前の机をいきよいよく叩きつけた。

その音が皆のいるこの部屋に響き渡る。

「落ち着け、リュウセイ。俺は調査へ向かおうと考えているのだが、クロガネは修理中の上俺とフィスは出る事が出来ない。そこで、だ。」

セインは集まったメンバーを見渡し、何かを確認する。

見渡された彼等は何をしているのか分からない様子である。

「小隊を作り調査班とここの警備班に別れたいと思う。」

「・・・なるほどね。私達を呼んだのはそのチーム分けて事ね。私はキョウスケと組めれば問題は無いけどね。」

「俺は別に離れても良いんだがな。」

「んもぅ。キョウスケは恥ずかしがり屋なんだから♪」

「本心を言ったまでだ。」

と、いつもの漫才(?)を無視し、セインは話を続ける。

入ったばかしのアラドとゼオラはその様子を見て、呆気にとられている。

「調査班はリュウセイ、ライ、アヤ、マサキ、リューネ、ラトゥーニ、アラド、ゼオラ、そしてイリスだ。後は警備班になってもらう。」

セインの言葉を聞き、皆頷く。

「なお小隊長はライにやってもらう。ライ・・・」

そう言ってチラリとリュウセイとマサキを見て、再びライの方を向く。

「頑張ってくれ!!」

「「オイコラちょっと待て!どう言う事だ、ゴルァ!!」」

「なるべく善処します。」

「ライ、テメェ何納得してんだよ!ヲイ!!」

セインの言おうとした事が分かったのかすぐに了承するライに対して、リュウセイとマサキは納得がいかないようである。

他のメンバーも内心分かっているものの怒りを買う事になるので黙っている事にしていた。

だが・・・・・・。

「納得するに決まっているだろう。重度の方向音痴に熱血馬鹿、不安要素の宝庫だろうが。」

「セイン・・・言わせておけば良い気になりやがって・・・。」

リュウセイの右手には拳が握られるものの手を出さない所を見ると、自分でも納得する部分があったからだろう。

それでもやりきれない気持ちがリュウセイとマサキの中で渦巻いている。

そのやりきれない気持ちを察したのか、セインはリュウセイに近寄り呟く。

「それに・・・のテストが出来るかもしれ」

「今すぐ行くぞ!!」

セインが言い終わる前にリュウセイは準備を始める。

そして一番最初に部屋から飛び出してしまった。

その様子に呆気に取られながらも調査班に選ばれたメンバーは急いでリュウセイの後を追った。

「ライ・・・気を付けて行け。私と同じ間違いをするなよ。」

「あんたに言われなくとも分かっている。俺は・・・絶対にな。」

レーツェルの助言を煙たがりながら、ライは部屋を出て行った。

「カトライア・・・やはり私は間違っていたのか・・・?」

レーツェルは今は亡き妻の名を呟き、自らに問い掛けた。








調査班が出撃して約2時間が経過した。

リュウセイが飽き始めてブツブツ言っている間に目的のコロニーにたどり着く。

「今からコロニーに潜入する。なお、ここからは高領域範囲の武器と高エネルギーを発する武器を禁止にする。」

「ん?ライ、どうしてだよ。」

「コロニーが沈む可能性があるからだ。あの中には何十、何百万人の命があることを忘れるな!」

「なるほど、了~解。」

マサキとリューネはライの話を理解し、直ぐにサイフラッシュ、サイコブラスター、コスモノヴァ、クロスマシャーを封印する。

それらの武器はこの中でも群を抜いて強力な兵器である為である。

その事を確認するとライはコロニーの進入口まで誘導し、コロニー内に突入した。










「オッサン!何時まで俺らはここに居なきゃならねぇんだよ!!」

「艦長と言え、テンザン!アレの量産が完了し次第、ここから脱出しクロガネを追い込むつもりだ。それまで休んでろ。」

このコロニーに潜伏して約一ヶ月、テンザンはここに潜伏する事に飽き始めていた。

ゲーム感覚でやってるテンザンにとって、オウカを助ける時の一回のみの出撃ではさすがにストレスが溜まってきているのであろう。

今にも飛び出しそうな勢いで話している。

「お前もそう思うだろ?」

「私はどちらでも構わない。あの子の名を語る奴を殺せればね。」

「お~恐ッ!まぁ俺もあの変態野郎を殺せりゃあ良いんだけどな。」

そう言いながらテンザンはゲラゲラと笑い出す。

「あまり上品とは思えない考え方だね。でも、それだけに純粋だけどね。」

その声を聞き、その場に居た全員は振り返った。

そこには銀色の髪をした少年が立っていた。

外見からして12歳位なのだが、どことなく年齢以上の貫禄が見え隠れする。

「サディケル様、どうしたんですか?」

「ミカエルの贈り物を届けに来たんだよ。僕は非戦闘要員だからね。」

サディケルはそう言った後、リーに何かを投げ渡した。

リーは投げ渡された物を掴み、その内容を確認した。

「ラピエサージュにシャドウファントム。これは・・・。」

「前者はオウカの、後者はテンザン専用に造った機体だよ。相手もそろそろ決戦に向けて来ると思うしね。」

「スッゲェェ!ファントムの何十倍も強えじゃねぇか!!これならあの変態野郎も・・・。」

純粋に喜ぶテンザンに対してオウカの表情はあまり浮かれてはいなかった。

その事に気付いたサディケルはオウカに尋ねる。

「どうしたんだい?あまり喜んでいなさそうだけど。」

「いえ。そんな事はありません。」

「・・・・・・まあ良いや。今から調整を行うから早く格納庫に来てね。」

そう言ってウリエルは出て行き、後に続くようにテンザンが出て行った。

オウカは一抹の不安抱えながらも格納庫ヘ向かった。

まるで自分がいなくなってしまうような不安を抱えながら・・・・・・。










「ここがコロニーか。地球と何ら代わりねぇじゃねぇか。」

「当たり前だ、マサキ。ここは地球と同じような生活が出来るように調節しているんだ。当然に決まっているだろう。」

何とかコロニー内に潜入する事に成功したライ達は機体から降りてコロニー内を散策していた。

ライ以外の殆どの者が地球出身である為、物珍しそうに辺りを見回している。

「良い気持ちねぇ・・・。聞いてた通り、本当に良い所ね。」

「そうだろうね。コロニー内は空気まで作ってるって噂だから空気も美味しいんじゃないかなぁ。」

「確かにコロニーは空気、つまり酸素を精製し無料で提供している。だがそれだけにコロニーは危険と隣り合わせなんだ。」

「どう言う事だよ、ライ。」

「コロニーという密閉空間に毒ガスを注入されたらどうなると思う?」

突然、今まで話さなかったイリスの口が開く。

その事に驚いたがイリスの質問に答えるべくリュウセイ、マサキ、アラド、リューネは考えている。

「どうなるって・・・。どうなるんだ?」

「一瞬にしてその毒ガスがコロニー内に入り、数秒で大勢の人々を殺す事が出来る。しかも、自分の手を汚さずに・・・ね。」

「故にコロニー内での毒ガスはタブーとされているのよ。・・・てアラド、あなたも『スクール』に居た時習った筈よ。」

「そうだっけ?でもよ、そんな事する奴いねぇんじゃねぇか?」

アラドの言葉を聞き、ライの表情が暗くなる。

事情を知らないリュウセイ、マサキ、アラドはその表情に疑問を浮かべる。

「・・・・・・・先に進むぞ。」

「お、おい!話はまだ・・・。」

「リュウセイ・・・人には話したくない事もある。無理に聞こうとしない方が良い。」

ライに尋ねようとするリュウセイを止めるイリス。

イリスのその行動に驚いたが、その必死な眼に何も言う事が出来ず尋ねるのを止める。

「・・・分かったよ。兎に角、テンザン達が居ないかどうか調べないとな。」

「そうよ、リュウ。ここを戦場にしない為にもね。」

そう言ってリュウセイ達はライの後を追いながら、シロガネの情報を調べ始めた。









「おや?どうやら侵入者のようだね。」

「サディケル様。本当ですか?」

シロガネのブリーフィングルームで何かを話していたリーはサディケルの言葉を聞き反応する。

「ああ、パーソナルトルーパーらしいけどね。如何する?」

「・・・今すぐここから出るぞ。現在完成しているあの3体を回収後、コロニー内を通って外へ向かうんだ!」

「コロニー内を?」

「コロニー内でこのシロガネが沈んだらこのコロニーは消滅します。その事ぐらい、奴らとて知ってるでだろう。」

「なるほど・・・。コロニーという人質を立てての行動ね。確かに良いアイディアだね。」

「ゲシュペンスト、ドールの発進準備を。奴らの行動を止めるには丁度良い相手だからな!」

リーの即座の判断により、すぐさま準備に入るシロガネクルー。

その様子をただ笑みを浮かべながらサディケルは見ていた。





コロニーを散策した結果、シロガネの発見情報は何も見つからなかった。

その事をまとめる為、ライ達は機体を置いていた場所に戻っていた。

「如何するだ?この近くを調べても何も情報は無いんだぜ。」

「それを相談する為に集まったんでしょ。少しは話をちゃんと聞きなさいよ。」

「そうなのか?」

アラドのその言葉に少しばかし怒りに震えるゼオラ。

そんな事など気にせずにライ達は話し続けた。

「俺としてはもう少し遠くへ行って聞き込みをした方が良いと思うんだが・・・。」

「確かに良い案だとは思う。だが機体をこのまま置いてはいけないだろう。」

「そうだよな・・・。」

と、話がまとまらないまま考え込むライ達。

その話の内容に興味の無いイリスはふとウィルのモニターをチェックする。

モニターを何の気無しにチェックすると、ある高熱源反応に気付く。

「戦艦クラスの熱源がこちらに接近している。方向、北北西。」

イリスの声に反応し北北西の方向を見る一同。

「ば、馬鹿な!?何を考えてるんだ、あの艦長は!!」

「ライ、如何するんだよ?」

「兎に角全員機体に乗り込め!話はそれからだ!!」

ライの指示の元、リュウセイ達はそれぞれの機体に乗り込んだ。

機体を起動させ、念のため戦闘準備をする。

「良いか。たとえ戦闘になってもコロニーに傷一つ付けるな!絶対にだ!!」

「「「「了解」」」」」

その通信が終わり、各機体はシロガネの元へと急行した。


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