一枚のしおり

＜「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」――江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。
「俺、ここでいったい何をやっているんだろう」。江戸・深川の鉄瓶長屋を舞台に店子が次々と姿を消すと、差配人の佐吉は蒼白な顔をした。親思いの娘・お露、煮売屋の未亡人・お徳ら個性的な住人たちを脅えさせる怪事件。同心の平四郎と甥の美少年・弓之助が、事件の裏に潜む陰謀に迫る「宮部ワールド」の傑作。＞

時代物でも定評ある宮部作品らしい読み応えのある連作です。
ぼんくらな同心・平四郎を中心に繰り広げられる、江戸市民の悲喜こもごもの生活に共感したり、はらはらしたり・・・
「ぼんくら」「日暮らし」共に、最初にいくつかの短編があり、それがすべて長編に繋がります。
実はうかつにも「日暮らし上巻」から読み始めてしまいました。
もちろんそれでも面白いことには変わりありませんし、充分流れはわかります。
でもできれば「ぼんくら」から読むのをお薦めします。

登場人物も、超美少年なれどおねしょをしてしまう弓之助・驚異的な記憶力のおでこ・働き者で人情家のお徳・生真面目な佐吉・「うへえ」が口癖の小平次など、いずれ劣らぬ魅力的な人ばかり。
謎解きだけでない読書の楽しみがたっぷり詰まった、秋の夜長にぴったりの作品です。