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EMBRACE OF LIGHT

EMBRACE OF LIGHT

第16話

ガラティーン ベル個室



ベル  : ・・・・・。

ベルはコード・ドラグーンとの戦闘を思い出していた。いや、正確に言うならば思い出さずにはいられなかった

ウィッチ: メインカメラ 破損。モニター デキマセン

椿   : やめろ天!!ひきつけはもう十分だろ!?

ベル  : あ・・・・あぁ・・・・!!

ウィッチ: 右腕部 大破

ベル  : くっ!・・・え、SMS!!

ベルが手早くSMSを全機展開する。しかし、SMSが攻撃を始めるよりも早くドラグーンが斬りかかっていた

ウィッチ: SMS 3機 沈黙 2機 中破 機能停止

ベル  : う・・・ウソでしょ?

ウィッチ: コード・ドラグーン 接近 警戒レベル SSS

椿   : もういい天!!もう終わりだ、こちらは動けない!!

ウィッチ: 攻撃 キマス

ベル  : ・・・・・・!!

・・・・・・・・・・



戦闘開始直後の戦局は、ほぼ互角だった。その直前まで暴れていたウィッチは、エネルギー残量の心配はあったものの、実弾とエネルギー弾を上手く使い分けて応戦していた。

━━━一撃だった。

ウィッチの放った実弾がコード・ドラグーンのフェイス部分に当たった直後、それまで攻守を上手くこなしていたドラグーンが、異常なまでの攻めを始めた。

ウィッチはそれに対して守りきる事が出来ずに、このような醜態を晒す事になった。

トドメをさされると思った瞬間・・・来るはずの最後の一撃は未遂に終わり、代わりに━━━


天山  : ・・・・模擬戦だったな。・・・少々本気を出しすぎてしまった。

刀を鞘に収める音が聞こえた。そして━━━

天山  : ベルリアさん・・・貴女の機体が最新型なのは判ります。ですが・・・貴女はその機体のポテンシャルを活かせていませんよ。

コックピットが揺らいだ。どうやら抱えられたようだ。

ベル  : ・・・・・・・。

ベル  : ・・・・・・・全く、歯が立たなかった。



第16話
「強くなるために・・・」




艦に戻ったベルは自室に閉じこもっていた。半ば放心状態でソファーにうずくまったままピクリとも動かない。

1人用のテーブルに立ててある写真・・・父親であり、コード・ウィッチの開発者ロッド・マリミットと仲良く写っている写真を見ながらベルは思った。


ベル  : (ウィッチのポテンシャル・・・あんまり気にしてなかったんだよなぁ。一応開発に携わってたのに・・・・テストパイロットとしても開発者としても失格かな?)

泣きそうになっていた。愛機となったウィッチは完膚なきまでに壊され、同時に今まで蓄えてきた自信すらも壊されたのだ。それ程までに天山という男は恐ろしく強かった。

ベル  : ・・・・・・セスト、私・・・どうしたらいいんだろ?

普段は自分でも判る程の自信過剰だが、こういう時だけ人に頼りたがる・・・ベルも知っている自分の悪い癖だった。だがそうも言ってられなかった。何かにすがらなければ、不安で仕方なかった。

机に視線が行く。自宅から持ち込んだノートパソコンと━━━


ベル  : ・・・・・・・・・。

[ある物]に気づき、立ち上がるベル。フラフラした足取りで机の前にたどり着き、それを手に取り眺めた。


コード・ウィッチ
バリエーション・プラン



コード・ウィッチ完成当初から自分が書いてた物だ。データ化が進んでるこのご時世で、丁寧に手書きの書面に起こしていた珍しい物だ。

ベルはそれをパラパラとめくり、自分の字を目で辿った。丁寧に書いてる部分もあれば、殴り書きの部分もあった。その時の心境で書いていたプランだった。

暇があれば丁寧に書き、何かに苛立っていた時には、思いをぶちまける様に書き殴っていた。


ベル  : ・・・くっだらない・・・・・こんなもの、何の役にも立たないわよ!!

ベルは途中で読むのをやめ、ゴミ箱へと乱暴に投げつけた。そして、泣き崩れた。

何も考えたくなかった・・・ただ、あの時味わった恐怖から逃げたくて泣きじゃくっていた。


━━━いつの間にか泣くのをやめていた。再び放心状態が続きしばらく経った時、部屋にノックの音が響いた。


由紀  : おーい・・・・えと、ベル・・・さん?居る?

「何で疑問系なのだろう?」ふと思ったが、考え続けるのも億劫だった。無論、返事すらしたくなかった。

由紀  : ・・・・・おじゃましまぁすw

部屋の扉が開いた事にベルは驚いた。内側から鍵をかけていた筈なのに、どこから持ってきたのか、由紀の手にはマスターキーが握られていた。

由紀  : 何だ、居るじゃないw・・・・うっわ、相当泣いたねぇ。

ベルの顔を見て苦笑いを浮かべた由紀。恐らく酷い顔でもしていたのだろう。メイクも何も関係なしに泣いていたから仕方ないと言えばそうだった。

由紀はベルの隣に座り、自分の持っているティッシュで丁寧にベルの顔を拭く。妙にくすぐったい感じにベルは再び驚く。


ベル  : な、何してんのよ・・・

由紀  : あ~はいはい、動かないの・・・・ったく、少しは自分が女って事くらい意識しなさいっつのw

「・・・そんなに酷い顔をしていたのだろうか?」そう思った瞬間、急に恥ずかしくなったベルだった。

由紀  : ・・・・ボロ負けしたんだって?天山さんに。

ベル  : ・・・・!!

いきなり痛い所を突かれたベル。悪気があった訳じゃないことぐらいは判ったが、それでも良い気分ではなかった。

ベル  : ・・・・何よ?

由紀  : いや、「何よ」と聞かれても・・・・つか、そんな事で閉じこもってんの?呆れるわw

ベル  : な、何よそれ!?戦った事もないクセに━━━

由紀  : 無いけどそれが何だって言うの?

ベル  : ・・・・!!

別な意味で反撃の余地なし・・・・ベルは2度目の敗北を味わおうとしていた。

由紀  : ・・・・悔しかった?

押し黙ったベルの顔を再び拭きながら、由紀は問いかけた

ベル  : ・・・・・・・それなりに。

由紀  : それなりに・・・ねぇ。その程度でアンタは閉じこもっちゃうんだ?

ベル  : ・・・・!!

手厳しい言葉ばかりだった。「コイツは・・・私を怒らせたいの?」そう感じる程だった。

由紀  : ・・・・あ、そうそう!飛鳥がね、アンタにお礼言いたいってさ。

ベル  : ・・・・え?

由紀  : ほら、牢屋から助けてくれたそうじゃん。アイツ、あぁ見えて几帳面だからさ。お礼の1つも言えないのか!って・・・泣いてたよ?w

ベル  : (・・・・ウソだ)

由紀  : ・・・・まぁ、ウソだけどねw

ベル  : (認めたぁ!?Σ(゚д゚lll))

あっさり認めた由紀にベルは心の中で驚いていた。

由紀  : ・・・・あ、話変わるんだけどさ。アタシ・・・飛鳥を説得するの、やめるわ。

ベル  : ・・・・まだそんな事考えてたの?

由紀  : う~ん・・・本当はまだ心のどっかで戦わないで欲しいなぁとは思ってるけど・・・アイツの気持ち知っちゃったから。

ベル  : ・・・・気持ち?

由紀は手を止めて、物思いに耽るように語った。

由紀  : ・・・アイツもね、やっぱ怖いんだって。戦うの。

ベル  : ・・・・そりゃそうでしょ。訓練してたわけでもないのにいきなり戦場に出されてるんだから。

由紀  : うん・・・・でも、アイツ「怖いからって逃げるのは嫌」なんだって。

ベル  : ・・・・!!

由紀  : それに・・・「自分が出る事で助かる人が居るかもしれない」って。真顔でだよ?w

ベル  : (・・・・私とは大違い・・・か)

怖いのを堪えて、必死に助けられる人を助けようとする飛鳥。ベルは今の臆病な自分と違う意思を持った飛鳥を羨ましく思った。

ベル  : ・・・・強いね、飛鳥は。

由紀  : いやいやいやいや!アイツなんてまだまだ弱いってw

ベル  : ・・・・だって、普通言えないって。そんな事。

由紀  : 単にバカなだけだよw

ベル  : (・・・・強調したね、バカの部分)

由紀は部屋を見渡す。整理された部屋を見て、ベルが几帳面なのが窺えた。ふと、ある1点に視線が止まった。由紀は立ち上がり、そこに向かって歩き出す。

━━━ゴミ箱だった。中にはそうとう厚いノートが捨てられていた。それを手に取り中を見る。


ベル  : ・・・・・あ

由紀  : ・・・・・アンタは

ベル  : ・・・・・え?

由紀  : アンタは飛鳥の話聞いて・・・何か思うところ、あった?

ベル  : ・・・・どうかな。飛鳥が凄いのは判った。でも・・・私には関係ない事だし。そもそも私にはその考え方・・・出来ないし。

由紀  : そんな事ないんじゃない?

ベル  : ・・・え?

由紀  : 天山さんに、「本気でやれ」って言ったんでしょ?それって、リアリティ出せば飛鳥への注意を反らせるって思ったからじゃないの?

ベル  : ・・・・!!

図星だった。確かにそう考えての行動だった。だが、由紀に説明はしていないはずだ。なのに考えを見抜かれていた。

由紀  : おかげでアイツも・・・アタシも助かったじゃん。それって、アイツが目指すところなんじゃないの?

ベル  : ・・・・あ

確かにそうだった。無意識の内にベルは飛鳥の目標を達成していたのだ。だが━━━

ベル  : でも・・・その結果がこれだよ?ウィッチも壊れちゃったし。

由紀  : 壊れたんなら直せばいいじゃん。その為の━━━

由紀は手に持ってる物を掲げた。

由紀  : これでしょ?w

ベルは掲げられたものを見つめた。自分の書いたウィッチのバリエーションプランだ。

ベル  : ・・・・で、でも━━━

由紀  : 「でも」も「だって」も無い!・・・部屋でウジウジ考える暇あったら、まずやれる事からやってみたら?

ベル  : ・・・!!

前にも聞いた事のある言葉・・・飛鳥だった。セントラルエリアに向かう中、いっぺんにトラブルが起こりすぎた事に心が追いつかなかった自分たちに飛鳥が言った言葉だった。

飛鳥  : 色々あーだこーだ考えるより、今は出来る事を手当たりしだいやるのがベストだと思うよ。

ベル  : ・・・・ぷっ!

由紀  : !?な、何?いきなり笑って・・・

ベル  : い、いや・・・飛鳥とアナタ・・・似てるわw

由紀  : あぁ!?(#゚Д゚)

ベル  : だ、だって・・・前に飛鳥も・・・同じこと・・・・アハ・・・アハハハハ!!

由紀  : ちょ、ちょっと!冗談よしてよ!!アイツと一緒にされるのはすんごい心外!!

ベル  : で・・・でも・・・アハハハハハハハ!!

由紀  : (-∀ー#)

怒りのボルテージを上げている由紀に構わず笑い続けるベル。そして笑いがさめると、由紀の手からノートを取り上げた。

由紀  : あ・・・・

ベル  : やる事やる・・・か。だったらまず私はウィッチを直さなきゃ。・・・私の知恵も使って。

由紀  : ・・・・うん。そうだね。

ベルと由紀は一緒に部屋を後にした


ガラティーン 整備室



ベルは途中で由紀と別れて整備室に向かい、自分のプランをそこに居た椿に渡して意見を聞いていた

椿   : ・・・なるほどね。これくらいだったら修理がてら、本部からかっぱらってきた部品で何とかなるよw

ベル  : いきなりで申し訳ないんですが、お願いします。

椿   : しっかしまぁ・・・凄いじゃないベルちゃん。ウィッチの欠点・・・特に近距離攻撃の対処法をこういう形で補うなんてw

ベル  : 私もウィッチ完成当初から問題点として見てましたから。ただ・・・このプランを実行に移すとなると、機体は完全に私用にアジャストされますけど。

椿   : ん~・・・いいんじゃないかい?ウィッチはベルちゃんの物も同然なんだからさ。

ベル  : アハハw

椿   : ・・・・その、何だ。天の言ってた事なんだけど・・・あまり気にするんじゃないよ?

ベル  : ・・・・あ~大丈夫です。気にする以前の問題ですから。

椿   : ・・・・え?

ベル  : 聞こえてませんでしたw

椿   : なっ!・・・・ぷっ!アハハハハ!!天のヤツ、かわいそうだなぁw

ベル  : 私にあんな仕打ちしたんです。これくらいは当然ですよw

椿   : そうかいw・・・・ん?このプランは・・・・!!

ベル  : ・・・あ~、それはウィッチの設計図をベースに私が新しく描いたものです。今度お父さんに渡そうと思って・・・どうかしたんですか?

椿   : ・・・・い、いや。

椿が驚くのも無理は無い。プロの設計者ですら難しく思うほどの綿密な設計図だったのだ。理論さえ組みなおせばすぐにでも作れそうな気すら感じる。 

椿   : (・・・血は争えないですねぇ、ロッド先生w)

ベル  : じゃあ、私ブリッジに行って来ます。改修作業、お願いしますね。

椿   : あ、あぁ・・・任されたよ。

ベルは一礼をしてその場を後にした


ガラティーン ブリッジ前



ベル  : (・・・・あれ?由紀ちゃん、ドアの前で何してるんだろ?)

ベルの姿に気づいた由紀は、早く来るようにベルを手招きする。ベルは急いで由紀の下へと向かった。

ベル  : どうしたのよ?

由紀  : HOPES本部から盗んだデータ見てるみたいなんだけど・・・いいから聞いて

ベルは由紀に言われた通り聞き耳を立てた。ブリッジからは飛鳥とシリウスの声が聞こえる

飛鳥  : コスワースって・・・まさか!!

シリウス: おそらく・・・セストの御両親だろう。

ベル  : (セスト?・・・・何でセストの名前が出てくるの!?)

飛鳥  : ・・・・こ、これ書いたヤツは?

シリウス: ・・・・・一番下を見ろ。

飛鳥  : ・・・・ろ、ロッド=マリミット

ベル  : (・・・・!?)

自分の父親の名前が出た。確かアミィはHOPESのトップシークレットを盗んだはずだ。そのデータを書いたのが自分の父親・・・ベルは驚く事しかできなかった。

由紀  : ね、ねぇ・・・何の事か判る?

ベル  : わ、判らない・・・。

アミィが何かを語り始めた

アミィ : HOPESが所有するマリオネットは、昔は本部で作ってたんだって。ロッド主任が別の場所で作ったのをきっかけに他のエリアにもHOPESの息がかかった施設が出来たらしいよぉ。でも、それほど純粋なHOPESの施設は出来なかったみたいだけどねぇ。

シリウス: おそらく主任は、この事件をデータに起こして何かを感じたのだろう・・・。それで、直接監視される事のない場所での開発を選んだ。

飛鳥  : ・・・・何かを感じた?


シリウス: 俺たちはこれからそれを聴きに行く。今はそれが一番だと思う・・・

ベル  : (・・・!!)

ベルは居ても立っても居られずブリッジに入っていった

ベル  : なら行きましょうよ・・・・今すぐ

飛鳥とシリウスはベルの方を振り向いた

飛鳥  : ・・・ベル・・・それに由紀も。

ベル  : アタシも・・・お父さんに用事が出来たから。(あのプランを渡すチャンスが出来たわ)

シリウス: ・・・・ウィッチの事か?

ベル  : ハイ・・・・少し考えがありまして。(多分・・・驚くでしょうねぇ。)

シリウス: ・・・・そうか。なら決まりだな。

シリウスはアミィに指示を出した。それに応えるかの様にアミィは艦体をNエリアに向けて加速させた。

ベル  : (・・・・もう、逃げない。怖いとも思わない・・・・自分のやれる事、やるんだ!!)

続く


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