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EMBRACE OF LIGHT

EMBRACE OF LIGHT

第22話

・・・・何でこんな辛い思いしてんだ?俺・・・

飛鳥はその事ばかり考えていた。

敗北という味・・・誰しも必ず味わう・・・だが、できるなら味わいたくない結果。

飛鳥は・・・悩んでいた




第22話
「2つの




ベルが帰還する少し前・・・飛鳥はウルフの状態を見ていた。

顔が潰れている━━━

腕が無い、脚が無い━━━

所々、火花が飛び散っている━━━

見るも無残な状態だった。


・・・何でこうなるかなぁ。

憎イカ?


ふと、ライトハンドとの戦闘中に聞いた声が頭を過ぎる。

この世のものとは思えない声━━━

飛鳥の心を見透かした様な声━━━


・・・・わからねぇ事だらけだ。

今の状況・・・あの不思議な声・・・そして敗北。飛鳥の頭は完全に容量をオーバーしていた。

??? : 飛鳥?入るよ・・・

意識を回想から戻したのは・・・由紀だった。後ろには━━━

天山  : ・・・・・・・・・。

神妙な面持ちの天山が居る。

飛鳥  : ・・・どうした?

由紀  : いや・・・何してるかなぁ?と思って。

・・・・見ての通りだよ。

天山  : ・・・・・・・。

飛鳥  : ・・・・んで。天山は何?んな怖い顔して。

天山は飛鳥の質問に答えない。代わりに━━━

天山  : 来なさい。

飛鳥の腕を掴み、無理やり引っ張り出そうとする天山。

由紀  : ちょっ、天山さん!?

飛鳥  : イテテテテテ!な、何すんだ!離せよ!!

天山  : 良いからこっちに来い!!

戦闘以外では聞かない天山の怒りまじりの声。飛鳥も由紀も驚き、なされるままに外へと出される。


連れて来られたのはウルフを置いてある仮設整備場だった。パイロットが精神的に参ってるにも関わらず、整備スタッフは自分の持てる技量を駆使して修理にあたっている。


飛鳥  : ・・・・・・。

天山  : コレを見て・・・何も感じませんか?

飛鳥  : ・・・・・・。

天山  : ここに居る人たちは、キミが凹んでいる事を知ってます。中には、このままパイロットをやめるのではないかと心配している人も居ます。

由紀  : ・・・・天山さん?

天山  : それでも・・・あの人たちは必死にウルフを元に戻そうとしてるんです!いつキミが戻っても良い様にと!!

飛鳥  : ・・・・・・。

何なんだよ・・・みんなして。別にいいじゃねぇか、俺が居なくたって。ボロッボロにされたんだよ?もう・・・イヤだよ、あんな負け方。

天山  : 誰だっていつかは負けを感じる時が来ます。遅かれ早かれ必ず・・・・。

飛鳥  : ・・・・・・。

天山  : でも・・・それでも頼られる人は居るんですよ?キミみたいに。

・・・・何が言いたいんだよ。

天山  : 自分が居なくたってなんて考え・・・やめましょう。

!!・・・・なん・・・・?

完全に見透かされてた。飛鳥の気持ちを天山は理解していた。

由紀  : ・・・・あのさぁ。

不意に由紀が語り始めた。

由紀  : アタシ・・・やっぱり今でも飛鳥には戦いとか・・・そういうのはして欲しくないと思ってる。

・・・・だろうな。

由紀  : でもさ・・・こんなん見せられたら・・・やっぱそれはマジでは言えないよ。

飛鳥  : ・・・・由紀?

由紀  : アンタは期待されてるんだよ。少なからずあの人たちからは・・・・。だからさ・・・アタシも応援するから・・・もう1度やってみない?

・・・・・・・。

飛鳥は整備員の顔を見た。よく見たら女性まで整備を手伝っている。設備が整っていない場所では初めてだったのか・・・先輩と思われる人に怒られながらも必死に資材を運んでいる。

よく考えれば椿だってそうだ。今ここには居ないが、今までの発言から考えれば彼女も必死に自分のサポートをしていてくれていた。

研究所が壊滅の中、疲れを押し殺して頑張っているのだろうか・・・作業員の1人が眠そうにしながら、それでもコンソールと睨めっこしていた。


飛鳥  : ・・・・・ハハ、馬鹿だなみんな。

由紀  : ちょっ!何て事言うの!?

飛鳥  : 誰がパイロットやめるっつったよ・・・・今までテントに居たのは、これからの事考えて瞑想してたんだよ!!

・・・・俺はバカか?強がってるよw・・・・でも。

飛鳥  : みんなの頑張り・・・やっぱ無駄にしたくねぇや。

由紀  : ・・・・飛鳥。

えらく曲がった表現だったが、飛鳥の立ち直りを目の当たりにした由紀は安堵の笑みをこぼす。天山も同様に・・・。

飛鳥  : 天山・・・俺はこれからどうすればいい?

天山  : ・・・恐らく、今のキミがウルフをメチャクチャにした相手と再戦しても結果は変わりません。

・・・・ストレートに言うのな、アンタ(;´Д`)

天山  : 取るべき選択は2つあります。

飛鳥  : 2つ?

天山  : えぇ。1つはウルフを完全なものに仕上げる・・・。

由紀  : 完全って・・・ウルフは不完全なの?

天山  : ウルフはテストタイプとして作られていたんです。なので、正式採用型と比べていくつかの武装、システムはオミットされてます。

由紀  : そ、そうなんだ・・・・。

飛鳥  : 確かに・・・ウルフはウィッチとウィザードのテストに使う為に運ばれてたんだよな。

天山  : えぇ。テストに必要とされないものは全て取り除かれていたんです。

当初の予定としてはタイプ2Wのテストに使用する為ガラティーンに積んでいたウルフだったが、それを飛鳥が操縦し、パイロットと認識された為に予定を変更して運用していた。つまり、完全戦闘向きではなかったのだ。

飛鳥  : で・・・そのオミットされた武装とシステムってのは?

天山  : 予定ではウルフには用途に合わせて変形させるマルチウェポンを持たせる予定でした。

由紀  : ・・・・それで、システムっていうのは?

天山  : ・・・・問題はソレです。実は・・・システムにはドラグーンと同じモーション・アクト・システムを載せる予定なんです。

飛鳥  : ・・・・マジかよ?

モーション・アクト・システム。通称MAS。パイロットの動きをトレースし、機体に反映させる事で細かな動きまで再現できるシステム・・・。現在のHOPESでこのシステムを載せているのはドラグーンだけであった。

天山  : マルチウェポンを扱うには機体の細かな動きが必要だったみたいで・・・採用型にはMASを取り付ける予定でした。

飛鳥  : 確かに機体を自在に動かすにはパイロットの動きに合わせて動かせるMASの方が有利かもしれないけど・・・俺は無理だぞ?今まで対人戦とかした事・・・・あ。

何かを思い出した様な飛鳥。

天山  : ・・・・どうしました?

由紀  : 天山さん・・・やった事あるんですよコイツ・・・対人戦・・・剣道ですけど。

事実だった・・・。昔の事であったが、親の言いつけで少しばかり剣道をかじっていた。

天山  : なら話は早いじゃないですかw

飛鳥  : ・・・・・は?

天山  : 2つめの選択・・・・。それは飛鳥君自身のスキルアップです。

・・・・・えぇ!?Σ(´Д`lll)

飛鳥  : ちょっ、待っ!やってたっつっても昔の話だし・・・それに試合形式だから次元が違うだろ!?

天山  : 大丈夫です。ちゃんと講師はこちらで用意しますから♪

飛鳥  : そういう問題じゃねぇ!(゚Д゚#)

飛鳥のいつも通りの突っ込みが出た。天山は笑っていたが、すぐに真剣な眼差しを飛鳥に送った

天山  : キミには素質があります・・・強くなれますよ、あの人の所に行けば。

・・・あの人?

天山  : 皆の期待を裏切らない為にも・・・強くなりましょう。ね?

飛鳥  : ・・・・わぁったよ。やるよ。

逃げ道は無かった。天山の言葉・自然に出た自分の決意・そして何より自分に期待してくれている人たちの気持ちを無下には出来なかった。

天山  : そうと決まれば支度してください。すぐに此処を発ちますよ♪

飛鳥  : 今すぐかよ!(゚Д゚;)

膳は急げと言わんばかりの天山の行動に飛鳥は戸惑いながら、その場を後にした。途中、振り返り━━━

飛鳥  : あ、由紀!

由紀  : ん?何?

飛鳥  : あの人たちに、「強くなってくるから、整備と追加武装よろしく!でも倒れない程度に頑張ってください」って伝えといて!

そう言い残し、走り去っていった。

はるか後方には、後にシリウスたちが驚愕する新造戦艦ドレッドノート
の影が見えていた・・・



つづく


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