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EMBRACE OF LIGHT

EMBRACE OF LIGHT

9th 強き心

別行動4日目 廃墟外


英明を見送ったリーベルと瑞樹は、互いのシンクロを深める為、そしてリーベル自身の戦闘能力を高める為、修行に入っていた。

リーベル 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

瑞樹   「あらあら、もう息が上がったの?まだ1撃ももらってないわよ?私。」

瑞樹に1撃を当てる。リーベルに与えられた試練だった。始まって4日。リーベルは休む事無く瑞樹に向かう。だがそれを瑞樹はすまし顔で回避していく。

リーベル 「あぁもう!何であたらないンスか!?」

瑞樹   「あらあら、今度は逆切れ?だらしないわねぇ、男の子なのに。」

リーベル 「!!」

リーベルが再び向かう。突進に近い1撃。だが回避。リーベルは地面に倒れこんだ。

リーベル 「いったたた・・・何で・・・?」

瑞樹   「ん~何て言うのかな?・・・素人とプロの差?」

リーベル 「うっ・・・」

瑞樹   「そういうのは抜きにするとなると・・・意思の弱さ・・・かな?」

リーベル 「意思の・・・弱さ?」

瑞樹   「そう。武道の強さは意志の強さ・・・意思が弱ければその1撃は相手に届かない。」

いつになく真剣に話す瑞樹にリーベルは圧倒された。瑞樹はなおも語る。

瑞樹   「何でかは分からないけど、君からは何か[自棄的な意思]を感じるわ。」

リーベル 「自棄的・・・」

瑞樹   「そう。今までが悪かったのね。マスターがつくことも無く、いつも刻真君に助けられる形になってた。それが結果的に、自分が居    なくても刻真君が何とかしてくれるって考えを作り上げてしまったのね。」

リーベル 「・・・だって・・・刻真君は僕と違って・・・強いし・・・いつも冷静だし。」

瑞樹   「その甘ったるい考え・・・何とかなさい。」

瑞樹の口調が変わった。恐怖さえ感じるトーンの低い声。そして表情も・・・

リーベル 「瑞樹・・・さん?」

瑞樹   「麻都ちゃんも言ってたわよね・・・私も言わせてもらうわ。」

リーベル 「・・・・・・」

瑞樹   「リーベル君。この世界にアナタは1人しかいないの。アナタが居なくなれば、リーベルという存在は無くなってしまうの・・・分かる?」

リーベル 「・・・はい。」

瑞樹   「アナタは決して捨て駒じゃないの。それだけは・・・肝に銘じておきなさい。いいわね?」

リーベルは無言で頷き、瑞樹を見る。その目に、何か強い意志を感じた瑞樹はいつもの笑顔に戻る。

瑞樹   「じゃあ、リーベル君に取っておきの秘策を教えちゃおう。」

リーベル 「・・・秘策?」



遠くから2人を見ている人間が居た。レオンと行動を共にしている[ヴェスタ]だった。

ヴェスタ 「あ~あ・・・イチャイチャしやがってからに、ったく。・・・・潰しにかかるか。」

ヴェスタの姿が消える。



リーベル 「・・・え?・・・え!?」

瑞樹から伝えられた秘策を聞いたリーベルは絶叫した。

リーベル 「むむむ無理ッス!絶対無理ッス!そんな事したら僕の手が」

瑞樹   「この4日間・・・結局私に1撃当てられなかったけど、それでもアナタの体術はめざましい成長を遂げたわ。だから・・・」

リーベル 「ででででも!!」

瑞樹   「あらあら、怖がっちゃだめよ・・・ちょうどいい獲物も来たみたいだし。」

リーベル 「・・・獲物?」

2人の前に突如1人の男が現れた。レオンに遅れをとらない程綺麗な顔をした男。

ヴェスタ 「・・・狩りの始まりだ。」

リーベル 「・・・誰?」

瑞樹   「味方・・・じゃないわよねぇ。」

ヴェスタ 「めんどっちいから自己紹介は簡単に。オレはヴェスタ・・・お前らを狩る者だ。」

リーベル 「・・・狩る!?」

ヴェスタはホルスターから拳銃を取り出した。数は2。

ヴェスタ 「さぁて・・・暴れるかねぇ・・・デビル!サタン!」

ヴェスタはトリガーを引く。2つの黒いマズルフラッシュと共に現れた2つの影。

リーベル 「せ・・・精霊!?そんな・・・アレ魔銃なの!?」

サタン  「あ~あ・・・久しぶりに暴れられると思えば・・・ガキと女かよ。」

デビル  「まぁまぁ、そう言わんでくださいよオヤブン。肩慣らしには最適じゃないっすか。」

リーベル 「喋った!!」

瑞樹   「あらあら。」

ヴェスタ 「おいお前ら、いいから早く殺ってくれよ。俺はそんなヤツよかゼロとかいうヤツに興味があんだよ。」

リーベル 「ゼロ君に・・・?」

サタン  「へいへい・・・分かりましたよ。」

デビル  「そんじゃま・・・さっさと終わらせますか!」

サタンとデビル。2つの精霊はリーベルと瑞樹に向かって突進を始める。

瑞樹   「来るわよ!!」

リーベル 「う、え?あ!?」

サタンとデビルの1撃。瑞樹は後ろに引いて、リーベルは横に飛んでかわした。精霊達の拳は地面に叩きつけられて、地面はありえない程膨らみ弾けとんだ。

リーベル 「・・・・うわ~。」

瑞樹   「バカ力ねぇ・・・」

サタン  「あ~あ・・・よけやがったよ」

デビル  「地面こんなんしちゃって・・・まいっか。」

リーベルは震えた。同時に思った。勝てないと。それを悟ったのか、瑞樹は笑いながらリーベルに語りかける。

瑞樹   「よく出来ました。ちゃんとよけられたじゃない。」

リーベル 「・・・・え?」

瑞樹   「4日間の修行は・・・無駄じゃなかったみたいねぇ。」

瑞樹の優しい言葉で、リーベルは体から余分な力が抜けるのを感じた。

瑞樹   「やられっぱなしってのも何だから・・・お返ししちゃおっか?」

リーベルは静かに立ち上がり、自信の表情を浮かべた。

リーベル 「・・・そうッスね!!」

リーベル・瑞樹の2人は互いの背中を合わせ、サタンとデビルを各々が相手にする陣形をとった。

サタン  「あ~らら、何だ女も戦うのかよ?」

デビル  「バカだねぇ、人間如きが精霊に敵うとでも思ってるのかよ?」

瑞樹   「あらあら、そんな事言っちゃっていいのかしら?」

リーベル 「無知なだけなんすよ・・・この漫才コンビ。」

サタン  「・・・・あぁ?」

サタンの目つきが変わる。デビルは呆れた表情で話す。

デビル  「言っちゃならん事言っちゃって・・・お前ら殺されるよ?」

瑞樹   「つべこべ言ってないで・・・来なさいよ。」

瑞樹の目つきも変わった。先ほどリーベルに見せた物だ。

サタン  「マスター・・・こいつらは必要ないんだよなぁ?」

ヴェスタ 「あ?・・・・あぁ、いらね。お前らの好きにしな。つかとっとと終わらせろ、早く帰りてぇんだよ。」

リーベル 「心配しないでよ・・・すぐ帰らせてあげるから。」

サタン  「調子に・・・・乗るなァ!!」

サタンが突撃を開始する。それに合わせてデビルも動きだす。だが、2人が動きだしてもリーベルと瑞樹はピクリともせず、ただ黙って立っていた。

サタン  「一発だ、デビル!!」

デビル  「あいよオヤブン!!」

2つの精霊は拳に力をためる。その拳は激しく光り始め、それを瑞樹・リーベルに向けて放った。

サタン・デビル 「クラッシュ!!」

着弾。後に激しい爆発。勝利を確信した2つの精霊は不敵に笑う。・・・だが

リーベル 「・・・いやぁ、ビックリしたぁ。」

サタン  「・・・・何?」

サタンは目を疑った。リーベル、そして瑞樹の周りに赤い粒子が漂っている。

デビル  「何だ・・・あれ?」

瑞樹   「ん~・・・まぁ合格。」

リーベル 「ほ、ホントッスか!?」

瑞樹   「でもこれからよ?・・・・次、攻の構え!!」

リーベル 「お、押忍ッス!!」

リーベルは腰を落とし、拳に力を加える。空中に漂っていた赤い粒子はリーベルの拳に集まり始めた。

サタン  「な、何だよ?」

デビル  「や、やばくないッスかオヤブン!!」

ヴェスタ 「・・・・・」

瑞樹   「爆炎!!」

瑞樹の号令と共に、集まりきった赤い粒子はリーベルの拳を激しく燃やし始める。

リーベル 「!!ぐ・・・・」

瑞樹   「耐える!!」

リーベル 「オ、押忍ッス!!」

2人の掛け合いをサタンとデビルは見ているだけだった。むしろ動く事が出来なかった。

瑞樹   「目標、あの偉そうな精霊・・・構え!!」

リーベル 「押忍ッス!!」

瑞樹   「・・・・始めぇ!!」

瑞樹の号令と同時にリーベルはサタンに向かって走り出す。

サタン  「な・・・なんだよテメェ!!」

リーベル 「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

2人の距離が数メートルまで縮んだ所でサタンが動き出す。再び拳が光だした。

サタン  「来るんじゃねぇ!!」

拳を放つ。リーベルに着弾。勝利を確信したサタンだったが、その表情はすぐに凍りつく事になる。

リーベル 「遅いッスよ!」

サタンの背後にリーベルが居た。

サタン  「な!いつの間に」

リーベル 「にっ」

リーベルは無邪気な笑顔を見せて、拳をサタンに叩きつけた。

リーベル 「爆砕!!」

ヒットした腹部を中心に放たれた炎はサタンに苦しみを与える事無く燃やし尽くした。

デビル  「お、オヤブン!!」

ヴェスタ 「デビル。」

デビル  「!!」

ヴェスタ 「・・・ムカつくけど、いったん引くぞ。」

デビル  「え!?」

ヴェスタがデビルを銃へ呼び戻す。炎の塊となったサタンも銃に戻っていった。

リーベル 「・・・・っはぁ。」

瑞樹   「はい、お疲れ様。」

瑞樹の表情はいつもの笑顔に戻っていた。

リーベル 「・・・ほんとッスよ。・・・でももう1人・・・残ってるッスよ。」

2人はヴェスタを捕らえる。だがそのヴェスタはまだ余裕を見せていた。

ヴェスタ 「や~めとけって。お前らじゃまだ勝てねぇよ。」

瑞樹   「あらあら、あんだけ派手にやられちゃったのに?」

ヴェスタ 「やられたのは俺じゃねぇ。・・・駒だよ。」

リーベル 「・・・駒・・・だって?」

リーベルの目つきが変わった。

瑞樹   (・・・リーベル君?)

ヴェスタ 「まぁそう怒んなよ。お前らの事・・・気に入ったんだ。」

瑞樹   「あらあら、それはありがとう。で、お気に入りになったらどうなるの?」

ヴェスタ 「・・・俺らの頭はってるヤツの言葉を借りるなら・・・時が近い。」

リーベル 「・・・時?」

ヴェスタ 「お前らの二挺拳銃使いにでも聞くんだな。」

瑞樹   「刻真君に?」

ヴェスタ 「時が来たら・・・また戦ってやるよ・・・今度は本気でな。」

ヴェスタの周りが光りだした。

瑞樹   「な、何!?」

リーベル 「逃げる気だ!!」

ヴェスタ 「あばよ!!」

光は最高点に達した。やんだ時にはヴェスタの姿は消えていた。

リーベル 「・・・・・・。」

瑞樹   「聞きに行った方が良さそうね・・・刻真君に。」

リーベル 「・・・えぇ。英明を呼んでくるッス!」



リーベル戦闘前  廃墟



英明   「・・・・・・・・・。」

英明の瞑想は続いていた。渚を思い続けた。

英明   (渚・・・答えろ・・・また俺の前に姿を見せてくれ。)

そう思い続けていた。

英明   (とは思うものの・・・本当にこんなんで戻ってくれんのかよ?なんか・・・これじゃあ)

???  「ストーカーみたいじゃねぇか」

英明   「!?」

突然の声に反応して英明は目を開け、振り向く。そこには知った女性がいた。

???  「お久しぶりね・・・英明。」

英明   「・・・何でここにいる?ファナ。」

ファナと呼ばれた黒髪の女性。彼女の手には刃の付いた鎖が握られていた。

ファナ  「この状況を見れば分かるでしょう?・・・アナタの命、戴きにきた。」

英明   「は~あ・・・物騒だねぇ。」

ファナ  「物騒なのはアナタです。精霊使いでもないのに精霊を行使しようとしている。物騒極まりないわ。」

英明   「あ~そうかい・・・そりゃあ光栄だねぇ。」

ファナ  「・・・光栄?」

英明   「俺は物騒主義なんでな・・・願ってもない褒め言葉だよ。」

ファナ  「・・・相変わらずね・・・私が惚れた時のまんま。」

英明   「・・・あんま嬉しくねぇなぁ。それに今は敵同士・・・だろ?」

ファナ  「そうね・・・だから殺しに来たのよ。」

ファナが身構える。反射的に英明も身構えた。

英明   (やっべぇなぁ・・・武器もねぇ・・・おまけに渚も居ないときたもんだ・・・これじゃあ)

ファナ  「フクロ決定だぜ。」

英明   「・・・・心を読むな。」


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