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いっせいピョン

友くんの春さがし


友くんの春さがし(なぎのお話箱)

友くんの春さがし



 寒くて暗い冬の夜、ぼく達はとても心地よい気持ちだった。

空から舞い降りて地上にたどり着くまで、月明かりに照らされて

キラキラと仲間達の姿が見えたり隠れたりした。

月が雲に隠され、あたり一面暗闇に包まれても、そこには自分と同じ 

いのち があることを知っていたから

ちっとも寂しくなかった。

ただ、初めてのことで風が吹くたびドキドキした。

 月は優しく祝福のうたを歌ってくれた。

それを聴きながら、たくさんの仲間達は一面に降り積もっていく。

 急な突風で混乱する中、大きな木が枝をいっぱいに広げ僕らを

受け入れてくれたことをかすかに覚えている。

雪だるま 5



「できた、できた!雪だるまができた!お兄ちゃん、名前何にする?」

「友くんがいい!友達の友くんにしよう。」

「おーい、友くーん。一緒に遊ぼうよ。」

 女の子の声で雪だるまが目を覚ましました。

「おはよう、友くん。私はあいちゃん。よろしくね!」

「友くん?ぼく友くんなの?」

「そうよ。昨日の夜はとても寒くて雪がいっぱい降ったから、

お兄ちゃんと明日になったら雪だるま作ろうねって約束してたんだ。

友くんはここに飾った葉っぱがポイントなの。」

「そうなんだ。どうもありがとう。

         ぼく雪だるまになっちゃったんだね。」
 
 それから友くんは、あいちゃんとお兄ちゃんと3人で

お散歩に行くことにしました。

「雪だるまっていいね。だって自由に動けるんだもの。

ただの雪だったらこうはいかないね。」

 友くんは得意気に大歩きをしてみせました。

「友くんっておもしろいね。

春になってもとけなかったらいいのになぁ。」

「とける?お兄ちゃん、とけるってなーに?」

「雪はね、暖かくなるととけてなくなっちゃうの。」

「みんな?」

「そうだよ。そして冬が終って次に春が来るの。分かった?」

「ふーん、そうなんだ。あれ?あいちゃん、あれは何?」

「あー!!うさぎさんだ。友くん、うさぎさんだよ!まて~。」

「僕に似てる。お兄ちゃん、あれもとけるの?」

「あれはとけないよ。動物だもの。」

 友くんがうさぎを触ってみると温かく、

似ているけど違うことが分かりました。

 お兄ちゃんがソリを持ってきてくれたので3人で何回も滑りました。

「うわぁ~、落っこちる~。」「助けて友くん!」

「ソリって楽しいな。嬉しいなぁ。」 3人とも大はしゃぎです。


 ふと気がつくと、何だか周りが薄暗くなってきました。

雪だるま 6

「何これ。さっきと色が違って見えてきた。」

「いけない!もうすぐ日が暮れて夜になっちゃう。

ぼく達帰らなくちゃ。」

「友くんは家に入るととけちゃうからここでバイバイね。

 明日も一緒に遊ぼうね。夜の間に迷子になっちゃイヤよ。」

「分かった。家の中には春が来ているんだね。

 僕、寒くても暗くても平気だよ。

 また明日、寒くて明るかったら遊ぼうね。バイバーイ!」



 友くんはこんなに美しい景色を見ないなんてもったいないと思って

いました。

 又、昨日見た世界は別の場所なのではなく、同じ所が暗くなったり

明るくなったりするなんて不思議で仕方ありませんでした。

 でも夕日が沈んでいく姿を見ながら友くんは

「何だか分からないけれど、この世界はたくさんの色や物でできていて

なんて素晴らしいのだろう。」と思いました。

ふゆ  3


夜になりました。

 昨日とは違ってとても静かな夜でした。

月明かりが雪に反射してまぶしい程でしたが、

誰かが外に出てくる気配はありませんでした。

それでも月はみんなが安らかであるように子守唄を歌い始めました。

 友くんは大きな木の下にしゃがみ込み、

月をじっと見つめていました。


クモ

「眠らないのかい?」

 木の幹にある小さな穴の中から一匹のクモが話しかけてきました。

「こんなすてきな夜があるのに眠っちゃうなんてもったいない。

ずっと聴いていたいんだ。」

 そうして友くんは長い長い静かな時を過ごしました。



 やがて月は、優しく歌いながら薄明かりの中に消えていきました。

その代わり、力強い朝日がぐんぐん空へ昇ってきました。

「すごい、これで又新しい1日が始まるんだね。

みんな、おはよーう!」

 友くんは急いで丘を駆け下り、あいちゃんの家の方へ走っていきました。

あいちゃんとお兄ちゃんは友くんと遊びたくて、

いつもより早起きして待っていました。

「友くーん!おはよう。夜は外でごめんね。寒くなかった?

風邪ひいてない?」

「大丈夫だよ、僕雪だるまだから。それよりも、

さっきすごいもの見たんだ。

お日様が自分の力でぐんぐん空へ昇ってきて、

今はもうあんなに高い所まで行っちゃったんだ。」

 友くんはたった今味わった感動を伝えようと一生懸命でした。

 ところが、「当たり前だよ、友くん。だって朝だもの。」と、

お兄ちゃんはあっさりと答えたのです。

「お兄ちゃん、そんな言い方しないで。友くんは知らなかったのよ。

あのね、朝になるとね、お日様は空に昇るものなのよ。」

「え?でも、それってすごいことだよね。」

「毎日見れるよ。」

「毎日見れても、、、毎日すごいんだよ!今見て、

僕そう思ったもの。ねぇ、2人とも本当に見たことあるの?」

「寝てる時間だからじっくりはないかもしれないけど、、、

でも、そんなの知ってるし分かるよ。友くん、

雪だるまだからびっくりしてるんだよ。」

「そうかなぁ、、、。」

 友くんは、なんだかがっかりしてしまいました。



うさぎ

「ねぇ、それより今日もソリ遊びしようよ!

友くん、昨日より速く滑る競争しよう!」

「いいね!行こう、行こう。」

 3人はかけっこしながら丘の方へ向かいました。

「あ、昨日のうさぎさんだ。」

「おはよう。私もみんなとソリに乗りたいの。一緒に遊ぼう。」

「いいよ。みんなで遊ぼう!」

 友くんとあいちゃんと、お兄ちゃんとうさぎは雪の中を

元気に走り回りました。

ソリ遊びに雪合戦、石を隠して宝探しゲームをしたり、

かくれんぼをしたり、、、

みんなの笑い声が絶えることがないほど、

思いっきり楽しんでいました。

 ふと、友くんがうさぎに話しかけました。

「ねぇ、うさぎさん。僕ね、春になるととけちゃうんだって。」

「知ってるよ。だって友くん雪だるまだもの。

あのね、雪がとけたらここは一面お花畑になるのよ。

今は雪で真っ白なこの丘が上から下まで全部、赤や黄色やピンクや緑、

たくさんの色であふれちゃうのよ!信じられる?

ぽかぽか暖かい春が来ると、とってもきれいで気持ちがいいの。」

「あー!あいちゃんも。あいちゃんだって春が1番好き。」

 友くんは何も言いませんでしたが、春を知らない友くんにも

春がすてきなものだということは十分伝わりました。

 それからみんなは仲良しになり、毎日一緒に遊びました。

楽しいおしゃべり、新しい発見、すてきな時間、、、。

でも、友くんの心の中にひっかかって、どうしても消えないものが

ありました。

「どうして僕はとけちゃうの?」



 お日様とお月様が毎日交代していること。
    
            夜はみんな眠ること。

 冬の次には春が来ること。           
  
            とけないものととけるものがあること。

 雪がとけるということ。

            僕が雪だるまであること。



 みんなが平気な顔をして言う当たり前のことが、

友くんにとってはどれ一つ当たり前ではありませんでした。



 夜、いつもと変わらず月は優しく歌っています。

だけど、あんなに嬉しかった月のうたはとても寂しくて

聴きたくないほどでした。

「こんなことがあるなんて、、、。」

 その夜、友くんの目から初めての涙がこぼれ落ちました。

ゆき


翌日、友くんはあいちゃんの家には行きませんでした。

「きっと待っててくれてるんだろうな、、、。」と申し訳なく

思いましたが、とてもみんなと一緒に遊ぶ気分にはなれませんでした。

「春って突然来るのかな。」

友くんは急に不安になり、みんなが楽しみにしているはずの

春というものがおそろしく感じました。

「どうしよう。どうしよう。」

とうとう友くんは大きな木の下で泣き出してしまいました。

 すると、木の穴から昨晩のクモが顔を出しました。

「ねぇクモさん、春ってどうやって来るの?

みんなが春には雪がとけちゃうって、当たり前だって言うんだ。

そうなの?」

「春は急には来ないよ。君も突然とけたりしない。

宇宙のしくみの中での大きな流れやきまりはあるけれど、

だからといってそれが当たり前かというと、それはまた別の話だよ。

この木が『木だから立っている』

と言ってしまえばそうかもしれないけれど

『木としてここに存在している』ということは

決して当たり前のことじゃないんだよ。」

 クモの話は少し難しくてはっきりとは分かりませんでしたが、

ちょっぴりほっとした友くんは泣くのをやめて静かに座り込みました。

「少し休むといいよ。」

クモは月のように子守唄は歌えませんでしたが、

友くんのそばでずっと糸をつむいでいました。

風で糸が何度ちぎれてもかまわずに、、、。

はな


 どれくらいの時間が経ったのでしょう。

友くんが気付くと辺りには見たことのない風景が広がっていました。

「あ、雪がない!わぁ、、なんていい香り。」

大きな木の周りにはどこまでも続くお花畑が広がり、

楽しそうな小鳥のさえずりが聞こえてきます。

真っ白な冬とは違いたくさんの色であふれています。

友くんの体もはずみ軽やかに動きます。

「もしかしてこれが春、、、。春が来たんだ。」

空を見上げるとチラチラ雪のようなものが降ってきました。

「とけない、、、。」

友くんは時々目をつむり、ここちよい春を味わいました。

横に赤い小さな花が咲いていました。

「やあ、こんにちは。君はお花だね。かわいいなぁ。

君はこんなにすばらしい季節に生まれて幸せだね。

みんなが春を待ち遠しいというのが僕にも分かったよ。

 すると、花は小さな体をふるわせてシクシク泣き出しました。

「どうしたの?どうして泣いてるの?」

 花は泣きながらこう言いました。

「だって私いずれ枯れちゃうのよ。枯れるって分かる?

みんなはお花だから仕方ないって言うけれど、、、

私一体どうしたらいいの?かわいいって言われたって、

そんなのどうしようもないわ。ちっとも楽しくないもの。」

 友くんは花の悲しみにふれてドキッとしました。

こんな美しい春の中で、まさか花が自分と同じような思いを

抱えているなんて、、、。

「でも、、、でも、今君は立派に咲いているじゃないか。

もしいずれ枯れるとしても、

今こうやってすてきな景色を見ることができて、

小鳥と一緒に歌えて、眠る時は月のうただって聴くことができて、、、。

ねえ、お花は夜眠るの?お日様が昇るの見たことある?」

 花はハッとして叫びました。

「あるわ。みんなは眠るの。でも私、眠るのももったいなくって。

だって夜は夜ですてきなのよ。

月からの光に照らされている桜の花びらは本当に神秘的なの。

ある時クモさんが『雪みたいできれいだ。』って言ったことがあるの。

私、冬を知らないから何とも言えなかったけど、、、

その分とても冬に憧れているの。」

「僕は君に憧れていたよ。友達はみんな春が大好きで、

お花畑で遊ぶのを楽しみにしていて、、、とてもきれいだって。

僕、本当にうらやましく思っていたんだ。」

「まあ、そんな風に思われていたなんて知らなかったわ!

私もお花畑の一員としてみんなをがっかりさせないように

しなくっちゃね。」

りんとした花は薄いショールをまとい、

咲きほこったポーズをとって見せました。

「それなーに?」

「これクモさんがつむいでくれたの。花びらが風に飛ばされないように。

少しでも長く美しくここにいられるように。」

「とても似合っているよ。」

「ありがとう。何だかすがすがしい気持ちになってきたわ。

私、朝日も大好きなのよ。だって何もかもが新鮮に思えるんだもの。」

「僕も!僕とおんなじだ。」

 大きな大きな木の下で友くんは花と一緒に桜吹雪をながめていました。

月の光に包まれて、美しい瞬間を幸せに感じながら、

心のどこかで朝日を待ちながら、、、。

せみ


「ミンミンミン、、、、」

「何の音!?」騒がしい鳴き声で目を覚ました友くんはびっくりしました。

 そこにはお花畑はなく、力強い太陽の光がギラギラとみんなを

照りつけていました。

その中で休むことなく、太陽にも暑さにも負けないほど激しく

鳴き続けていたのはセミでした。

「あの、、、どうしたの?」 

話かけてみたものの友くんの声はかき消されてセミには届きません。

あっけに取られていると、糸をつむぎながらクモがこっそりと

教えてくれました。

 クモの話では、セミは何年もの間土の中で暮らしていたそうです。

このセミは人生の中で地上の世界に出て飛び回ることができるのは、

ほんの数日間だけだと知っていました。

だから、その貴重な時間を思い切り空を飛び、大声で鳴き歌い、

世界のあらゆるものを出来る限り見たり楽しんだりできるように

毎日コツコツと強い体を作り勉強していたそうです。

朝も夜もなく境目のない毎日は地上の時間とは比べられないほどの

長い時間でした。

そして、その長い長い時が流れやっと外の世界へ出てきました。

「なんて明るくて広いんだろう!体が軽く感じる。」

初めての風、初めての光、初めての空。感動の中、

セミは果てしなく広い空に飛び込みました。

土の中にいた時「失敗しないでちゃんとできるだろうか。」

「怖くはないだろうか。」と不安でしたが、

そんなものは吹き飛んでいました。

セミは力いっぱい飛び回り、お腹の底から声を出しました。

「気持ちがいいなぁ!なんて素晴らしい世界なんだ。」

なつ


 ところがその時です。突然人間が近づいて来て「うるさいなー。」

とセミの体をつかもうとしました。

驚いたセミは慌てて逃げ出しました。

 次の日は、たくさんの木がある場所で仲間達と喜びを分かち合ったり、

おしゃべりを楽しんだりしていました。

すると人間の子ども達が来て、次から次に仲間をカゴの中に

入れてしまいました。

「やめて!僕達には時間がないんだ。やっと出てきたのに

どうしてそんな事するの?こんな狭い所に入れないで!」

そうやって泣いている仲間を見つめる子ども達は、

ただただ嬉しそうでした。

「ひどいよ。こんな事があるなんて。」セミは本当に悲しかったのに、

どうすることもできませんでした。

「うわぁー!」泣き叫びながら飛んで飛んで、そしてこの木に

たどり着いたというのです。


 セミは昼も夜も鳴き続けました。仲間の為に、

自分の為に命いっぱい叫び続けました。

 そして、とうとう力尽きてしまったセミは木から体が

離れてしまいました。地面に落ちそうになったセミは、

途中でクモの巣に受け止められ仰向けになりました。

そして、初めて夜空を見上げ月の姿を見ました。

「わぁ、、、なんて美しいんだろう。」大きく深呼吸したセミは、

ずっとそばにいた友くんに「気持ちがいいね、、、。」

とささやきました。

セミは、そよ風に揺られて初めて安らいだ時間を過ごしました。

 友くんの心の中には、セミの鳴き声とその言葉が深く残りました。

 次に目が覚めた時、そこは雪景色でした。

雪だるま 8

「僕、いろんな夢見ちゃった。」

 するとクモが「それは夢じゃないよ。木の記憶だよ。」と言いました。

「友くーん!」

丘の下から、あいちゃんとお兄ちゃんとうさぎが走ってきました。

「友くん、この前は本当にごめんね。とけちゃうなんて言ってしまって。

僕の家の冷凍庫にいれば絶対とけないから、大丈夫だから安心してね。」

「ありがとう。でも、それじゃあ僕は氷だるまになっちゃうね!」

友くんは思わず笑ってしまいました。

「あいちゃん、友くんに会えなくて寂しかった。

あいちゃんはやっぱり冬が1番好き。だって友くんがいるもの。

これ、プレゼント!」

そう言ってあいちゃんは、色紙で作った花を1輪友くんに渡しました。

「わぁ!プレゼントなんて初めてだ。うれしい~!!ありがとう。

僕も何かお返ししたい!えっと、、、何がいいかな、、。

考えておくから待っててね!」

 花をもった友くんは大きく息を吸いました。

「僕ね、お兄ちゃんが教えてくれなかったらきっと、

春どころか冬の素晴らしさも知らずに過ごして

しまったかもしれないって思うんだ。

世界はたくさんの色や物であふれていて、

でもそれだけじゃなくて、たくさんの命があって、

喜んだり悲しんだりして、その中で僕は今生きているってことが

分かったんだ。だからもっともっと冬の素晴らしさを味わって、

そして必ず本物の春を見るんだ。」

 思いがけない言葉にみんなはびっくりしましたが友くんは真剣でした。

「見付けよう!!みんなですてきなもの探ししよう!」

「賛成!友くん、絶対できるよ。何でも協力するからね。」

「みんなで一緒に見ようよ!冬も、そして春も。」

「よーし、そうと決まれば早速行くぞー!!」

 お兄ちゃんの一声でみんなはソリに乗り、丘の上から滑り出しました。

「友達がいてよかった、、、。」

 夜、大きな木の下に友くんはいました。

暗くなってもクモは相変わらず糸をつむいでいました。

細くて見えないクモの糸が月の光で一瞬見えた時、

友くんは空から舞い降りてきた時のことを思い出しました。

見えなくても、そこには確かに仲間の いのち があり、

今、この雪の下にある土の中にも次の命があるのです。

「もともと僕だけじゃなくてみんな地球のかけらだったんだ。

その僕が心をもっていろんな事を考えて、

今ここに生きているのは奇跡だね。

そして世界は、この瞬間にも奇跡を繰り返しているんだ。」

 瞬く星を見ながら友くんは、巡り巡って又ここに来たいなぁと

思いました。

雪だるま 1


「友くん、できたよ。これあげる。」

クモが糸をつむいで作っていたのは風通しのよい手袋でした。

「僕の為に!?ありがとう!!わぁ、涼しくて気持ちがいいや。

これなら僕の手もとけないし、あいちゃんと手をつないでも冷たくないね。

一緒に手をつないでお散歩できるんだね。」

 クモは大喜びの友くんを見てニッコリしました。

「あいちゃんへのプレゼントは決めたのかい?」

「あいちゃんに聞いたら何もいらないんだって。

別に僕が何もしなくても、丘の上に僕の姿を見付けたら

それだけで嬉しいって。だから僕ね、生き続けよう、って思うんだ。

ちょっととけたって諦めないで。

そしたら、たとえとけてしまっても何かなくならない

僕のかけらだってあると思うんだよね。

それが僕にできるあいちゃんへのプレゼントじゃないかなって

思ってるんだけど、、、。クモさん、どう思う?」

 クモは相変わらず糸をつむぎながらこう答えました。

「それが一番だ。」

友くんはクモからもらった手袋をはめ、

しばらく手を眺めたり合わせたりしてみました。

そして、大きな木にそっと触れてみました。

大きな木は、初めて会った時と同じように枝をいっぱいに広げ、

友くんを受け入れてくれました。

「この前は大切な思い出を見せてくれてありがとう。

あなたが春には美しい花を咲かせるなんて知らなかったよ。

その大切な花達の旅立ちはあまりにも美しくて、

みんなが雪のように舞うのをお花と一緒にずっと見ていたんだ。

でも、あの時僕は、こんなに側にいたのに、

その時のあなたの痛みをこれっぽっちも知る事はなかったんだよ、、、。

本当にごめんね。」

 木の枝がザワザワと揺れました。

「僕のこと、ずっと覚えていてね。そして僕と同じようにここで

誰かが泣いていたら、春を見た雪だるまの事を思い出して見せてあげて。

『おもしろい雪だるまがいたね』って笑って元気を出してくれるかな。

そしたら、手が届く所にだってあるすてきなものを、

いっぱい見付けられるかもしれないよね。」

 すると、木が友くんに語りかけました。

「友くん、私が木であることを選んだりできただろうか。

セミがセミであることを決められただろうか。

毎日、日が昇ること、夜が来ること、決まっているけど誰かが

決められることではないよね。

 でも同じように、君がどういう雪だるまであるか、

ということも他の誰にも決められないんだよ。

これは、君にしか決められないことなんだよ。」


 月は優しく子守唄を歌い続けています。

月は月として歌い、クモはクモさんとして糸をつむぎ、

セミはセミとして、花はお花として精一杯に、、、。

 そして雪だるまである僕は僕として、、、。


 やがて辺りが白みだし、夜が明け始めました。日が昇り、

今日も新しい1日が始まります。

 丘の上から友くんは、みんなに心を込めて

「おはよう!」と言いました。


 手袋をはめた雪だるまは早速冬のすてきなもの探しに行きました。

 心の片隅で春を見つめながら、、、。

                                   
 おしまい

ふゆ





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