sotto voce

2009/03/30(月)22:41

譜めくり

昨日はアンサンブルのお友達との演奏会だった。 室内楽の本番ではどのような緊張に襲われるのか予測がつかなかった。前日の気分もあいまいだった。今回の経験では自分にソロが回ってきたときはソロのときの緊張感、伴奏のときはオーケストラのときと同じ気分だった。ソロは、音程がおかしかったり、のびやかさに欠けたり、テンポがおかしかったり、やはり弾くのに精いっぱいの領域を出られていなかった。伴奏のところはオーケストラのときと同じで本番が一番集中した。ただオーケストラのときよりずっと音程が気になった。今回思ったのは、もっと基礎的な力があればアンサンブルに集中できるのだということ。 今回は若い人たちといっしょだったのであまりおばさんでも悪いかと思って、口紅以外お化粧をしない私だがファンデーションをつけた。何年かぶりのファンデーションなので、何かあるといけないので前日にもつけて練習した。もともと身のまわりのことがいつもと違うとすごくプレーシャーになる。例えば雨の日にチェロの弓と傘を持ってバスに乗って小銭を出すというくらいでもういっぱいいっぱいの気分になってしまう。でも今回は、セーターもちゃんと脱いで、靴も変えて、舞台に出ることができた。ただ楽譜関係でトラブってしまった。 だいたい私は発表会のときは暗譜なのでチェロと弓を忘れずに持って出ればよい。オーケストラのときはこれに譜面が加わるのだけど3回やったうち2回は外側だったので内側の人が譜面の面倒を見てくれた。この間は初めて内側で譜面を準備したり譜めくりをしたりかなりのプレーシャーだった。でもオーケストラのときはほかの人が弾いているので早々に私は弾くのを中断してゆっくり譜めくりしていた。しかし今回は弾くのをやめられないし譜めくりを自分でしなくてはならない。私は速く譜めくりをすることはできない。もし無理してしたらたぶん弓を落としたり譜面台を倒したりチェロを転がしたりしかねない。そこで今回はめくれそうにないところは次のページのコピーをつけて3ページ見開きにしたり、次のページの最初の部分のコピーを切り貼りしておいたり、楽譜に細工をした。 最初に舞台に出るときに気がついたのだけど皆はもうあらかじめ譜面台に楽譜をおいてきていたらしい。「あれ楽譜置いとかなかったの?」と言われて初めて気がついたけれど、まあ持って出ればいいんでそれほどこれは大きなミスではなかった。 しかしシューベルトの鱒のときにとんでもないことになった。4楽章の前にチューニングをすることにしていたのだけど、その時に弓があたったのか楽譜が譜面台から床に落ちてしまった。それを譜面台に戻したりしていて私のチューニングは遅れてもたついてしまった。そして演奏再開。次は5楽章、1212と早目のテンポで行こうねって約束を思い出して、そうしたら、穏やかな4楽章の鱒のメロディーが始まって凍りついた。譜面台にあるのは4楽章の後半と5楽章のページ。とっさになんとなく覚えていた4楽章の最初を弾いたけれど、弾きながら、今見えていないページ1ページすべては覚えていないこと、このページを出すためには見開き3ページの細工があるためにかなりの時間を要すること、次の長い休符はかなり先でそこまでは覚えていないこと、今はピアノが弾いていない弦だけの部分で私がいなくなるのはかなり目立つこと、などを思った。そう思っているうちにやはり思い出すのも限界になってきたので、悪いけれど弾きやめて悠々とページをめくらせてもらった。皆は私が今までなんともなかったところで落ちてしまったのでかなり驚いたみたいでほんとに申し訳ないと思っている。ピアノの人は私の姿も見えなかったので何が起こったのだろうと思ったらしい。 5楽章でまたしても譜めくりをめぐるトラブルが発生した。今度は切り貼りをした部分で、ここは次のページの切り貼りを見て弾いて、リピートの前のピアノのソロの間にめくって、そのあと新しいページでリピートをするという計画で、それを首尾よく実行していた。そうしたら、ページをめくった後に隣のチェロの子が私に何か言った。「何?」と思った時に、弾き損じてリピートの後のフレーズはすかすかになってしまった。そのあと弾きながら彼は私に何を言おうとしたのだろう?なんかとんでもないことが起こっているのだろうか?などと思って集中力を少しの間欠いてしまった。あとで聞いたところでは彼はまだリピートがあるのに私がページをめくったので「まだリピートあるぞ」と教えてくれたそうだ。その親切は余計なお世話だったのだけど練習のときにはしていなかった私の行動なので仕方ない。 この譜面をめぐるミスはすごく悔しい。でもやはり楽譜の製本は本番直前ではなく練習の時からちゃんとして、譜めくり計画もちゃんと練習すること、次は何楽章かくらいは弾く前にちゃんと確認すること(あたりまえ)、という教訓をもらった。

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