夜想
貫井徳郎 著:「宗教」をテーマにした小説の第2弾。第1弾は『慟哭』。『慟哭』は、宗教に入信する側の目線で書かれた小説。『夜想』は、宗教を立ち上げる側の目線で書かれた小説。主人公の雪籐は、交通事故で妻子を目の前で失ってしまう。その悲しみからなかなか抜け出せず、生きる気力すら失ってしまう。そんなある日、人の持ち物に触れることにより、その人の過去や気持ちが分かってしまうという能力を持つ女子大生に出会う。そして、彼は、彼女だけが自分の本当の悲しみや苦しみを分かってくれる唯一の人物であり、彼女のそばに居て、彼女の力になろうと決心する。そして、いつしか彼女は彼にとっての生きる糧となる。人は、誰でも弱い心と強い心の二つを同時に持ち合わせていて、その二つのバランスを取りながら日々生活を送っていると思う。しかし、ちょっとしたキッカケでそのバランスは崩れ、弱い心に支配されてしまう時もある。そして、そんな状態の時に何かの支え(救い)を必要とする。それは家族であったり、友人であったり、恋人であったり、宗教であったり。支え(救い)を必要とすることは決して悪いことではないけれど、その支え(救い)に依存してしまうことは怖いことだと思う。何事もバランスが大切。(←クリックよろしくお願いします)