今日は、車の話をしよう・「誇りを取り戻せ!」
友人から預かることになった、一台の旧型スポーツカー。オープンカーだが、ハードトップを被せられ、日常の足にのみ使われていた。特にハイパワーな訳ではない。ツーシーターでトランクの狭い車体は実用に向かず、マニュアルシフトは面倒だと敬遠され、乗り手も現れない。車も、自分がオープン・スポーツカーであることを忘れているかのようだった。暫く乗られることもなかったその車は埃が積もり、誰にも振り向かれずに終わるかに見えた。「誇りを取り戻せ。」その車を預かった時、そう思った。水垢だらけでツヤのないボディを磨き上げ、ハードトップを取り払い、砂だらけの室内とトランクルームを掃除した。硬くなりかけた幌を掃除し、艶出しをかけた。暫く乗っていなかったエンジンは妙に重い。ミッションも固く、シフトチェンジがイマイチ楽しくない。そこで、お気に入りの添加剤を使った。エンジンとミッションが次第に軽くなっていく。車は汚れたままにしない。乗らない時もピカピカにしておく。出かける時は、雨でない限り、オープンで走る。そんな事を続けていたら、車好きが集まってきた。小学生に手を振られるようになった。ようやく、車も、自身の魅力に気が付いたようだ。不思議なオーラで、乗り手と見る人を魅了し始めた。コクコクとキマるシフト。軽く吹け上がる1.6Lエンジン。スッと曲がる、ライトウェイトボディ。見上げれば、信州の空と流れる木々。スポーツカーは、やっぱり楽しい。