60ばーばの手習い帳

2020/03/12(木)00:00

△▲燈台の光▲△伊東静雄『詩集 夏花』から

詩とやまと歌と(170)

 ​暗い海に、緑色の燈台の灯りが点滅する夜です。「おれ」は、燈台の光を、こう思うのです。​​おれの夜に いろんな いろんな 意味をあたえる​​ 一夜、自分の上を照らし続けてくれる灯りは、なんとやさしいのだろう。(「燈台の光を見つつ」)  燈台の光は、「おれ」の心を照らし出し、見守ってくれる存在として慕われます。  別の詩では、夕暮れの「目当てのない 無益な予感に似た」(意識されない)燈台の灯りは、夜の闇になって輝くのですが、規則正しく回転・点滅するだけの光は海を退屈させる、と言います。(「夕の海」)  燈台の灯りは、一方的に与えるだけの行為です。あまりにも律儀で、同じことの繰り返し。何も起こらないときは海を退屈させるだけのもの。けれど、海に出ている船舶にとっては命を守る光です。退屈と言われると気の毒ですが。  伊東静雄は長崎出身の詩人。京都帝大を卒業後、教職に就きながら詩作を続けました。萩原朔太郎から「日本にまだ一人、詩人が残っていた」と賞賛され名声を高めました。命日は今日、3月12日です。季節の花に因んで「菜の花忌」と呼ばれます。​     引用および参照元:伊東静雄『詩集 わがひとに与ふる哀歌』日本図書センター

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