「異体字」と呼ばれる漢字があります。標準的な漢字と認められた「正字」に対して、同じ読み、意味を持つけれど字体が異なる漢字です。標準字体の一部を省略したり(「幅」→「巾」)、二字を合体したり(「麻」+「呂」→「麿」)することでできる場合もありますが、全く違う字体のこともあります。中国唐代以降に整理され、減少しました。
現在、日本でよく目にする漢字としては「烟(煙)」「埜(野)」「裡(裏)」などがあります。
「裡」は衤=衣なので、「裏」と位置関係が変わっただけで、全く同じ「衣」+「里」の組み合わせの字です。「裡」は俗字とされます。
「庫裡(くり)」=寺院の台所、または僧職と家族が生活する場所のように使いましたが、現在は常用漢字の「裏」を使用することが多くなりました。

和菓子の「岡埜栄泉」さん
「埜」は、「野」の異体字なのですが字形が全く違い、土の上に林がある形です。実際使われるのは、人名や地名です。地名では「緑埜(みどりの)」「鍛埜町(かじのちょう)」など、苗字の「中埜(なかの)」さん「岡埜(おかの)」さん、名前の「晴埜(はるや)」さん、「埜乃(のの)」さんなど。
「気焔(気炎)」=燃え上がるような盛んな意気のような熟語を作る「焰」も、多くは常用漢字の「炎」に書き換えられます。
穂のように燃え上がったようすから、ほ(火)のほ(穂)→「炎」の字が、火が少し燃え上がったようすから「焰」の字ができたといいます。日本ではこの二字は同じ意味で使われるので、常用漢字に入っている「炎」と書かれることが多いのです。