街の書店の衰退が言われてから久しく時が過ぎました。
紙の本への愛着もありますが、老眼の目には電子書籍のほうが見やすいし、読み終わった本の置き場所にも困らないので、電子書籍も活用しています。本屋さんがなくなっていくのは、本当に寂しいのですが。
野村美月の描く幸本書店も、店主が亡くなり、閉店の時を迎えようとしています。

10年前には町で5軒あった書店も次々に閉店し、最後に残ったのが幸本書店でした。49歳の若さで不慮の事故を遂げた店主は、高校2年生のむすびに、本を託すという遺言状を遺していました。
バイトリーダーの水海(みなみ)は、面白くありませんでした。むすびは、本の気持ちがわかるというのです。
連作短編集です。お金がない幼少期に立ち読みを認められて、豊かな世界に浸ることができた獣医さんの話、高校時代すれ違って同じ本を大切に読み込んでした男女が、時を経て再び出会う話、作家として大成功したのに、心にわだかまっているものを持つ作家と店主の交流、など、本を媒介にした人と人とのつながりが描かれていきます。
最後、店主の死の秘密も明かされ、本たちはそれぞれのあるべき場所に落ち着いていくのでした。
参照元:野村美月 「『さいごの本やさん』の長い長い終わり」株式会社KADOKAWA