。〇゜てくてく散歩の日゜〇。
10月9日は「10(Ten=てん)」月9(く)日で「てくてく」の語呂合わせから、散歩の日だそうです。国木田独歩の『武蔵野』に「散歩」という語がみられることから。 『武蔵野』は、自身の日記の記録をもとに、秋から冬にかけての武蔵野の自然と武蔵野への思いを綴った随筆です。日常に溶け込んだ自然の美しさがストレートに伝わる文章は、さすがです。武蔵野の面影を残す皇居東御苑の雑木林 独歩が「趣がある」と取り上げるものは、落葉樹の林、黄葉、落葉といった林の樹々たち(視覚)、葉と風や雨の音とのハーモニー、水流の音(聴覚)、思いがけず出会う落日の美しさ、差し込む日の光と立体的です。 そして、この中をそぞろ歩く散歩に言及します。十一月十八日━━月を踏んで散歩す、青煙地を這い月光林に砕く。十二月二十六日━━…今日は終日霧たちこめて野や林や永久(とこしえ)の夢に入らんごとく。午後犬を伴うて散歩す。…(日記部分から) 独歩が武蔵野に惹かれるのは、大都会の生活の名残と田舎の生活の余波がここで落ち合って、緩やかに渦を巻いているようにも思われる、生活と自然が配合された場所が武蔵野だから、と述べています。 独歩が住んだのは「渋谷村」現在の宇田川町で、世田谷、中野、小金井などの地名も見られます。 当時の武蔵野を思わせる場所は少なくなってしまいましたが、足の向くまま、気の向くままの散歩もいいですね。てくてく、てくてく。 参照元:『日本文学全集12 国木田独歩・石川啄木集』集英社 から 国木田独歩『武蔵野』