●◇信じる者は…◇●石持浅海『心臓と左手』
警視庁の大迫警視は、新宿の書店で、かつてハイジャック事件で知り合った、ニックネーム座間味くんに再会しました。1本筋の通った彼の態度に好感を持っていた大迫は、声をかけて飲み友達になります。 『心臓と左手』は、飲みながら大迫が語る過去の事件に、座間味君が鮮やかな推理を返す連作短編集です。 『心臓と左手』 新興宗教団体の拠点になっていた家で、血まみれの男女3人と左手が切り取られ、胴体を切り開かれた死体が発見されました。3人は教団の幹部、死体は教祖のものでした。 教祖は、左手をかざすことで、念派治療を行っていたようです。教祖の死後心臓を食べたものが教祖の力を引き継ぐという遺言に従って、3人の幹部が死体を切り開き争った事件でした。 切り取られた左手の意味も、神聖な手の力にあやかるためだったのか?否、さらに恐ろしい意味が…。 教祖は、手をかざすことで病気を治せるという触れ込みでしたが、偽薬効果と生活改善の勧めによって、症状の改善があったとみられます。「信じる者は救われる」は、ある状況では真実です。 座間味君は、話を聞いて違和感を感じた点を挙げていきます。すると、事件は全く異なる様相を見せるように。切り口は鋭く、確かに「あれ?」と思った点を突いていきます。 事件の真実を暴きながら、その罪を問うことが果たして正しいのか、と座間味君は問います。これも鋭い。 しかし「あっ」…最後にオチがつきます。 参照元:石持浅海『心臓と左手』カッパ・ノベルス 光文社