320life

毎日、ブログを更新する。

楽しい時は、問題ない。
朝起きて、「今日は、あのこと書こうかな」と思う。
ぽちぽち打つ。

そのうちに、気乗りしない時がやってくる。
パソコンに向かっても、ドラマやアニメをぼーっと眺めて、本を手に取って、時間だけが過ぎていく。
「今日はもう、いっか」と思う。
誰に頼まれているわけでもない。仕事でも何でもない。
更新するかしないかは、私の自由なんだから。

少し休んで、また気が向いたら書けばいい。

でも、思う。
一度手を止めたら、もう終わりのような。
今日はもういいや、が明日になり、三日になり、一週間になり…。
そうして消えていった、これまで運営してきたサイトやブログ。
自分の移り気な性格を知っているから、ここに二度と戻って来ない気がしている。

だから、無理にでも続ける。
自分も楽しくないし、もちろん読む人だって楽しくないだろう。
私は何を意地になっているんだろう。
ふと我に返るように、手を止める。

私、何してるんだっけ。
何のためにやってるんだっけ。
こんなことしてて、意味あるのかな。
ブログ、やめよっかな。

２か月に一回くらい、やってくるこの周期。
何度も、繰り返し。

ブログをするのは、楽しい。
アクセス数が増える。ランキングのボタンをクリックしてくれる人が増える。コメントがつく。
自分が感じたこと・思ったことを表現して、アウトプットする場がある。
家庭でも職場でもない、第三の居場所。
そこで、自己肯定感を得られる。

楽しいから、続けられる。
それが苦痛になったら、もう続けてはいけないだろう。

楽しさと、続けること。
一方に、続けていないと見えてこないこともある。

「何かあったっけ？」とポケットを裏返す。
丸めたティッシュと、お菓子のくずにレシート。
これしかないのか、と肩を落とす。

引き出しの中をぐちゃぐちゃと掻きまわし、何か良いものが入っていないか探る。
自分が仕舞って忘れている、何か素敵なものがあるんじゃないかなんて。
そんなもの、なおした憶えもないのに。

私にも、魔法が使えるだろうか。
がらくたにしか見えないものを組み合わせ、錬金術師みたいに意味が与えられるだろうか。
何もない自分の引き出しから、何を出せるだろう。

―――何もない、のか。

空白のページ。
点滅するカーソル。
はじめの一文を、書き始める。

ポケットの中に、ビスケットはない。
引き出しの中に、宝石はない。

そんなもの、はじめからなかった。

何の変哲もない日々。
平坦な日常。
ただの市井の人。

ポケットを裏返し、粉々になったビスケットのくずをはたく。
引き出しに転がっていた石が、いろんなものに見える。

私はそうして生きていくのだ、と思う。

お菓子のくずにやってきた鳥の種類や、蟻の行列のこと。
拾った石が、丸まったライオンや、大福もちに見えること。

何もない世界に、意味を与えること。
ちっぽけな自分の人生を、誰にも渡さないこと。

そしてそれを、みんなに言いたい。
魔法が使えなくても。

からっぽの冷蔵庫を見て、何が作れるか考える。
普通の日々。当たり前のこと。それくらいなら出来る。

ブログやめよっかな、と思う。
ここにいる意味は、あるのかな。

ありあわせのものを総動員して作る料理。
そのうえで、美味しかったよ、と言ってほしくてやっているの？

どうかな。
それはもちろん、言ってもらえたら嬉しいけど。

「何もない」と思っていたところから、生み出せたもの。
ささやかな達成感。
箱の底に残った希望。

自分がどこまでやれるかも、楽しみではあるんだ。

誰かに美味しいといわせるための料理は、楽しい？
「自分が美味しいものを食べたいから」のほうが、ずっと幸せだ。

ポケットを空にして、引き出しを開けておく。
そこにあったはずのものを、あってほしかったものを、数え上げるのはいやだ。

泣いている子供に花を差し出す手品師のように、なれたらいい。
種も仕掛けもございます。

だって、魔法使いではないから。



だから、「書くことがない」ということを、書いたのだけど、どうしてもこう、冗長になる。