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テーマ:徒然日記(22702)
カテゴリ:雑記
自分の顔が好きですか?
自分の身体が、自分のことが。 そういうことを最近、考えている。 年齢を重ねることがマイナスであるという国で、老いることは価値を減じることだ。 若いことにこそ価値がある。自分の行く先を恐れ、老いを嘲笑う。 それは呪いだ。 と、『逃げるは恥だが役に立つ』で百合ちゃんが言っていた。 目減りしていく若さで許されていた「おまけ」みたいなこと、それと逆に年をとることで手に入れていける「楽さ」と「寛容さ」のこと。 年をとって、美しく、可愛く、そうであることに重きが置かれる世界が、遠くなる。 なぜ画一的で一律的なその世界に、若い頃に苦しまなければいけなかったのか、不思議になる。 時折、年を経てなお、その残滓を求められていることに気付いて辛くなる。 選択の問題だ。 やりたい人がやればいい。そうでありたい人は、そうすればいい。 ただ、それだけのことなのに。 私は子供の頃から自分のことが好きではなかったので(それは顔や体というよりも、自分の存在というそのもので、自分を欠片でも生かしておきたくなかったから、献血や臓器移植を絶対にしたくないと思っていた。)、容姿についてとにかく「無自覚であること」を装っていたように思う。 私は無頓着である。丸腰だ。手を挙げて白旗を振る。だから攻撃しないでくれ。 けれど最近、思う。 私は、けっこう私の顔が好きかも知れない。 気に入らないパーツはたくさんある。ダイエットにも挫折してばかりだ。 けれどそれは美醜を超えたところにある愛着というか、この顔で、この身体でここまで来た、という矜持のようなもの。 そしていつも思い出す。 マルグリッド・デュラスの『愛人(ラマン)』で、かつて美しかった主人公が年老い、しかし彼女はこう言われるのだ。 私は今のあなたの方が好きだ、嵐が通り過ぎたあとの、あなたの顔の方が。 私も同じことを自分の顔に思う。 長い嵐を抜けて、私は生き延びた。 たくさんのことを考えて、たくさんのことを学んで、いまだ苦しみながら、けれど確かにあの嵐を抜けてきた。 鏡を見て、私は思う。 美人?ううん。でも、とても勇敢。 私はあなたを誇りに思う。 だからきっと、歳を重ねることは怖くないのだろう。 神様が与えたもの、遺伝子の組み合わせ。それだけじゃない。 これは私のオリジナルだ。 私が人生をかけて得たものだ。 鏡よ鏡、と唱える。 世界で一番美しいのはだれ? 年をとった自分が映る。 傷だらけで皺だらけで、シミがたくさんあって。 そして私は向こう側の私に笑いかける。 長い間、ともに戦った友だちを、ふと見つけたように。 呪いを解くのは、私だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.10.31 00:00:13
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