本のタイトル・作者
ひと [ 小野寺史宜 ]
本の目次・あらすじ
17才の時、料理人だった父が死んだ。飛び出してきた猫を避けて。
20才の時、母が死んだ。家の布団のなかで、突然死だった。
鳥取から東京の大学に進学していた僕は、ひとり残される。
大学を中退し、55円だけ入った財布を持ってお腹を空かせ歩いていたところ、行きがかりの総菜屋でメンチを負けてもらい、「おかずの田野倉」で働くことになる。
ひとりぼっちの僕が、秋と、冬と、春を経て、ひとりじゃなくなるまで。
引用
揚げものは子どもになるべく食べさせないという親もいる。わからなくはない。でもたまには許してほしい。たまに食べるカニクリームコロッケは、本当においしいのだ。人間はものを食べなければならない。ならば食べることを楽しみたい。おいしいものを食べたい。食べさせたい。
感想
2021年読書:004冊目
おすすめ度:★★★
2019年本屋大賞第2位受賞作品。
淡々とした小説。
どこかの物語で出会ったことのある男の子のような。
読んでいて嫌な気持ちがしない、湯たんぽみたいな物語でした。
2021.01.15「
002.希望病棟 [ 垣谷美雨 ]」を読んだときに思った。
人にやさしくする時に、線引きをする。
ここまでならいい。ここからは境界線を越える。
手を差し伸べられる範囲。
向こうが手を取り身を乗り出したら、すっと手を引く。
それは、ひどいことなんだと感じた。
だとしたら最初から、手を伸ばさない方がまし?
けど、どうなんだろう。
大学で組んでたバンドドラマーの川岸清澄のお母さんが良かった。
連れておいで。ごはん食べさせてあげるから。
そして交通費を多めに包む。
たぶんきっと、その子が大丈夫な子かどうか見極めて渡したんだろう。
なんだろうね。
お母さんになってからとりわけ思うけど、子どもがお腹を空かせているのはいけない。
お母さんが子供にお腹いっぱい食べさせたがるの分かるし、自分の子供じゃなくてもそうだ。
こういう人に、なりたいな。
手を差し伸べるのをやめるんじゃなくて。
自分ができることと、できないことを分かったうえで。
それでも、出来ることをやろうとする、ということ。
キャッチャー・イン・ザ・ライを思い出した。
守備範囲は狭くても、持っているネットが小さくても(「猫の恩返し」のラクロスのラケットのイメージ)。
それで誰かを救えるんじゃないか。
誰かの気持ちを掬えるんじゃないか。
君は世界にひとりぼっちじゃない。
具体的に何を、というと難しいし、小さいことから始めたほうがいいんだろうけど。
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