本のタイトル・作者
〈あの絵〉のまえで [ 原田 マハ ]
本の目次・あらすじ
ーーーあの絵の前で、会おう。
日常のなかで、ふと、絵画に巡り会う。
その絵に再会するとき、はじめて出会うとき。
絵は、待っている。
ひっそりと、息をひそめて、あなたが訪れるのを。
その絵画の持つ力が、そっと背中を押してくれる。
あなただけの、特別な絵。
ハッピー・バースデー
フィンセント・ファン・ゴッホ「ドービニーの庭」ひろしま美術館
窓辺の小鳥たち
パブロ・ピカソ「鳥籠」大原美術館
檸檬
ポール・セザンヌ「砂糖壺、梨とテーブルクロス」ポーラ美術館
豊穣
グスタフ・クリムト「オイゲニア・プリマフェージの肖像」豊田市美術館
聖夜
東山魁夷「白馬の森」長野県信濃美術館・東山魁夷館
さざなみ
クロード・モネ「睡蓮」地中美術館
引用
―――あーちゃんのすばらしさに誰も気づくことはできません。なぜなら、あーちゃんはすばらしすぎて、一周回ってフツウに見えるからです。
感想
2021年読書:025冊目
おすすめ度:★★★
絵画にまつわる様々な話、かと思いきや、絵画についてはサラっとしていて、日常のなかに美術があった。
ああ、美術館に行きたいなあ、と思える小説。
最後に美術館に行ったのはいつだったろう?
ああ、そうだ。
2人目が生まれる前、娘を抱っこ紐で抱っこしていた。
展示品はおよそ興味のないものだったけれど―――試験官に入った砂がずらりと並んでいたのを覚えている―――子どもを連れて美術館に行ける機会なんて滅多になく、なんでもいいから見ておきたいと美術館に入ったのだ。
平日の午後の美術館はガラガラで、子どもは抱っこ紐の中で眠っていた。
歩き回っていると、子どもの重みがずっしりと肩にきて、疲れ果てた。
行きたいな、また。
今度は、絵が大好きな娘を連れて。
美術なんて、なんの役に立つの?
美術館なんて、つまんないじゃない。
そう思うなら、この小説を読んでみて。
きっとそれは、「お守り」みたいなものだから。
ルーブル美術館に行った時、オーディオガイドの電源が切れるまで歩き回った。
その時、ここにあるのは祈りなのだと思った。
遠い昔の誰かが残したメッセージ。
神様に、誰かに、届きますように。
多くの人に―――ただ1人でも、どうか、受け取って。
私が見たものを、感じたことを、ここにいたことを、覚えていて。
それがある時、届くのかもしれない。
時間を超えて。
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