本のタイトル・作者
ポーチとノート [ こまつ あやこ ]
本の目次・あらすじ
女子高に通う16歳の未来(みく)。
時代劇好きの親友の芽衣には最近彼氏が出来た。
けど私には、まだ、生理が来ない。
人に言えない悩みをひとりで抱える彼女は、ノートに詩を書き記す。
そんな時、上階が空いて祖母が越してくることに。
17歳で母を生んだアサエさんは、いつまでも若くエネルギーにあふれている。
やがて季節は夏休みを迎え、学校の図書館にアルバイトの大学生・保阪さんがやってくる。
未来は彼に惹かれていき、保阪さんの企画でエスペラント語に出会う。
はじめての恋を、未来はエスペラント語で綴る。
引用
エスペラントは、それぞれの母語を大切にしている。(略)
みんな違う母語を持ってるんだよねって認め合って、誰かの言葉に合わせることはない。
母語をやめてエスペラントに統一しなさい、なんてことも求めていない。
何だか、とっても大らかだ。
それってたとえば、友達と会うとき、おたがいの家から真ん中くらいの場所で待ち合わせるようなものかも。
ちなみに「エスペラント」という言葉自体は「希望する人」という意味を持つらしい。
今でも、誰かと通じ合いたいという希望を持った人が学び始めるのかもしれない。
感想
2021年307冊目
★★★★
分厚くなくて、ティーンエイジャー向けの本だし読みやすいんだけど、内容はぎゅぎゅっと詰めてあって、この人が書きたいことが伝わってきて、良い本だった。
著者は、『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』のこまつあやこさん。
リマ~ではマレーシア語×短歌だったけど、今回はエスペラント語×自由詩。
今回も学校図書館や司書が登場。
ことばを大切にして、ことばの持つ力を信じてる。
本は人を救える。寄り添い、力になる。
そしてそれを、ご自身が司書ということもあるだろうけど、「本を通して何を伝えられるか」を考えているのだろうな。
この方は「誰に・何を伝えたいか」がはっきりしていて、それをなんとか伝える方法(舞台装置と物語)を考えている、という感じがする。
私、こまつあやこさん好きかもしれん…。
主人公は、生理が来ないことを誰にも言えずにいる。
(お母さんは気付いているけど、本人が否定するので触れられずにいる。)
私も娘がいるから、生理やセックスについてどう伝えていくか、という問題にいずれ直面する。
自分が子どもだったころを思い返すと、とても親から聞くのは難しいので(嫌やん)、やっぱり本に介在して欲しい。
ただ、その本を渡すのも読ませるのも、大きくなってくると一苦労だよね…。
私は子供の頃、生理って女の人への呪いみたいだと思っていた。
一度発動すると何十年も逃れられない、定期発動する呪い。
みんな平然と毎月血を流しながら生きているなんて、信じられない。
けれど、生理が当たり前に来ることが、奇跡みたいなものなのだと、あとがきでこまつさんは言う。
そうか。そういう受け止め方もあるのか。
生理が来て何十年。
今でもやっぱり煩わしいし面倒だし嫌いだ。
たまに、男は生理のことを忘れているんじゃないかと思う。
毎月、女が股から血を流しながら、普段と変わらぬ顔で生きていることを。
(村上春樹『ノルウェイの森』で、「生理中は赤い帽子をかぶっていてほしい」(苛々している原因が分かるから)と言っていたなあ)
けれどそれがなければ子供が産めないわけで―――昔から、初潮には赤飯を炊く。
呪いを祝う。
(それなら男の精通だって赤飯を炊いてやればよいのに)
呪いは、呪いじゃないのか。
私たち自ら、それを祝ってもいいのか。
どうすればそれが、出来るようになるだろう。
これは、十代はじめくらいの子が読み始めるのにすごく良い本。
生理や性についてというより、年上の大学生への淡い恋を軸に進むから、読みやすい。
エスペラント語という未知の世界へ、本を通して未来が入っていくところもワクワクする。
本は世界を開く。
日常の経験が、自分を中心に同心円状に広がっていくものだとしたら、本は自分と関係のない場所にある円に、ぽんっ!とワープできる感覚がある。
そしてこっちの円とあっちの円が重なり、連なり、どんどん世界が広がっていく。
それは同心円状に広がる円より、うんと大きく、広くなる。
本を読もう。
あなたはどこへでも行ける。
本の中で紹介されていた本
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世界中の女子が読んだ! からだと性の教科書 [ エレン・ストッケン・ダール ]
・通い合う地球のことば 国際語エスペラント [ 一般財団法人 日本エスペラント協会 ]
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