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2022.01.07
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本のタイトル・作者



インビジブル【電子書籍】[ 坂上泉 ]

本の目次・あらすじ


昭和29(1954)年。戦後9年が経った大阪。
戦前の内務省警察は解体され、昭和24(1949)年にGHQが地方分権と民主化のため導入した警察法のもと、人口五千人以上の市町村が運営する「自治警(自治体警察)」と、零細町村部を所管する「国警(国家地方警察)」が並立していたが、警察法改正によりその一本化が目前に迫っていた。
――これは、戦前への回帰なのか。
しかし、大阪市警視庁発足の翌年に中学を卒業し警察官となった新城洋は、民主警察とは名ばかりのその実態を目にしてきた。
強者に阿り便宜を図り、弱者に鞭打つ。
それに馴染めず、しかし抗うことも出来ない若輩者。
父は戦争で足を悪くし、母は空襲で亡くした。ただひとりの姉と支え合って生きてきた。
中学の担任は新城に言った。
刑事は、悪漢をつかまえる。それは民主社会の公正さを保つために大切な、人のためになる仕事だと。
戦争によりすべてがひっくり返った。
それでもまだ、信じられる「正しいもの」が、この世にはあるのだろうか。

ある日、新城は立ち寄っていた店で一報を受け現場に急行する。
麻袋を被せられ殺された遺体。
初めての、殺人事件だった。

殺されていた代議士秘書以外にも同様の死体が見つかり、国警から捜査員が派遣される。
なかば厄介者を押し付けられる形で、新城は東京帝大卒の守屋恒成警部補と組まされ、捜査にあたる。
正義を追求する守屋は、現場で衝突することも多く、新城は反発するが―――。

引用


それが、いま新城が身を置く大阪市警視庁の隠しようのない姿だ。
しがらみや建前に振り回され、やる気も職業倫理も欠如した警官だらけの環境で、臭いものに蓋をするように浮浪者狩りに勤しむ日々は、殺人の帳場に入ったところで変わることはなかった。
それでも何とかやれることをやろうとしているのに。
仕方がないことだと割り切っていくつも呑み込んできたことを、この男はすべてぶち壊そうとする。この何もかも気に入らない男が、この何もかも気に入らない警察を。


感想


2022年001冊目
★★★★

新年1冊目。年末から読み始めて読み終わるまで時間がかかりました。
表紙が重苦しくて開くのになかなか時間がかかったけど、読み始めるとぐいぐい引き込まれて「はやく続きが読みたい」と思う内容。
過去の回想(のちにこれは犯人の手記だと分かる)が間に挟まれ、「この回想は誰の記憶なのか」を追いながら読んでいく。

満州開拓団、シベリア抑留。
遠いその言葉が、実はさほど昔でもないこと。
この物語の舞台は1954年。
「戦後9年か、へえ」と言っていたら、夫が「それうちのお父さんが生まれた年やわ」と。
…!!!!!
そっか。そうなるんか。
復興していく世界と、取り残されて行く人々がない交ぜになっていた時代。
大阪の当時の様子が知れてとても興味深かった。
警視庁があったなんて初めて知ったよ。

「ALWAYS 三丁目の夕日」の舞台が昭和33年(1958年)。
前回の東京オリンピックが昭和39年(1964年)。
華々しく成長していった時代というイメージの光の陰には何があったのか、ということを思う。

恵比寿神社、蛭子神。
かなたから流れつく者、異郷の者、流された者、異形の者。
えびす信仰と結びつき、事件は展開していく。
捜査の展開は地味なんだけど、守屋と新城のバディがすごく好みのバディ感で読んでいて楽しかった。
蘊蓄もあるし、時代背景的にも京極堂シリーズを好きな人にもおすすめ。
ブロマンス好きなので、東京帝大卒のツンケンエリート(暗い過去持ち)×中卒たたき上げ巡査(現在進行形で迷走中)のバディがたまらんかったです。
上部の人が実情を知っていくところと、現場の人が理念を知っていくところ、どういうシチュエーションでも萌える。

戦中~戦後の、価値観がすべて壊されて、信じていたものが何もかも失われて、その中で過去に囚われて藻掻きながら新しい世界を生きていこうとする、という物語に惹かれる。
結局のところ、何が「ほんとう」なんだろうと思うからだろう。
私たちが今信じていることだって、後世には覆ることがあるだろう。
誰かが声を大にして喧伝したことを信じて、あとには何が残るだろう。
自分の頭で考えろ。考え続けろ。
それがこの時代の拘束を受けるとしても。箱から出られなくても。
安易に与さず、低きに流れず、考え続けるんだ。

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最終更新日  2022.12.04 00:50:00
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