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2022.03.26
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テーマ:読書(9051)

本のタイトル・作者



日本移民日記 [ MOMENT JOON ]

本の目次・あらすじ


まえがき
1 「いない」と言われても僕はここに「いる」
2 日本語上手ですね
3 引退します。ホープマシーン。
4 井口堂から、次のホームへ
5 「チョン」と「Nワード」、そしてラップ(前編)
6 「チョン」と「Nワード」、そしてラップ(後編)
7 僕が在日になる日
8 シリアス金髪
9 バッドエンドへようこそ
10 私の愛の住所は
付録 僕らの孤独の住所は日本

引用


それは、私にとって言語は「縛り」であるからです。
(略)
実際、英語と日本語を学ぶことで、韓国語によって構築されていた自分の思考と世界の限界が分かったからです。
しかし、一つの言語によって限られていた思考の可能性は、いろんな言語を学ぶことでむしろ広くなりました。


感想


2022年074冊目
★★★

MOMENT JOON。キム・ボムジュン。
韓国生まれの韓国育ち。2010年に19歳で大阪大学に入学し、留学生となる。
在学中、大阪大学をテーマにした「阪大生あるある」を歌った「I LOVE HANDAI」という曲を発表。
その後「外人ラッパー」という曲をネットに上げ知名度を上げる。
2012年から2年間、韓国の軍隊に従事。
2014年に日本のヒップホップを挑発する「Fight Club」を発表。
歌をやめたいと思っていた頃―――彼は、孤独を歌い始める。
「普通の日本人」に入らない人のための歌。

この方を存じ上げず、タイトルと表紙の絵(ああ、これ日の丸なのか)に惹かれて読んでみた。
もとは岩波書店ウェブマガジン「たねをまく」に連載された「日本移民日記」(2020年11月~2021年9月)。付録「僕らの孤独の住所は日本」は『図書』2020年1月号掲載のもの。

何と言えばいいのだろう。
私が思い出したのは、結婚することを告げた時、ある人が私に言ったこと。
「その人のこと、ちゃんと調べた?」
私は一瞬、意味が分からなかった。
国籍、出身地、ルーツ、親族に働いていない人がいないか、障害を持った人がいないか。
「私は結婚する前にちゃんと調べたよ」
いったい何時の時代の話だ?
私は驚いて、とても驚いて、そして酷く気分を害した。
だって、それは、私の妹のことだったから。

きっと、この人は自分の世界がベースなんだろう。
それが正しくて、当たり前で。
みんなが同じ輪の中に入っていると思っている。
それが共通認識で揺らぐことない地盤だと信じている。
あなたもそうよね?
私たちの仲間じゃないものを、入れちゃだめよ。
まったく何の悪気もなく善意から口にしているからこそ、とてつもない悪意に満ちている。

けれど自分を翻って思う。
私だって、同じじゃないか。
ここは、日本は、「普通の人の、普通の世界」。
それから少しでも違うものを、異なるものを、目ざとく見つけて、ことさらにその差異を騒ぎ立てる。
声を潜めて視線を交わす。
ほら、やっぱり違うよね。
―――だから「私たち」は、一緒だよね。

日本語と日本人。
それは合致するの?
何を持って日本人だと言うの?
安定した揺るがないものが、そこにあるというの?

同じ色に見える世界を、見せられている。
そう見えるように。
子供の頃、海外の児童文学ばかり読んでいた。
日本を舞台にした物語は、あまりにも私には辛かった。

何故彼らと私は、こんなにも違うのだろう?
それぞれが違いながら存在できる世界は、ここではない場所にあるのだろうか?

のっぺりとした一色に塗りつぶされた世界。
でも目を凝らせば、それはたくさんの違う色を持つドット。
それでもまだ、この世界は単色だと言えるんだろうか?

嵌め殺しのトイレの窓から、切り取られた青い空を見ていた。
この先にあるものは何なのだろう。
幼い私は、どこかへ帰りたかった。
そこがどこかも分からないまま。

大人になって、たくさんの偏見を身に着けて、居心地の良い高い壁のなかで仲良く暮らしている。
見えるものを見えないふりをして、聞こえるものを聞こえないふりをして。
―――みんな、同じだよね。
共通する暗黙の文化コード。
排他的な言語コミュニティ。
同質性のぬるま湯で揺蕩う。

それでも時折、私はふと顔を上げて気付く。
目を灼く光。抜けるような青い空。
高い壁に囲われて、どこへも行けない自分。
感じてはいけないと封じ込めた、途方もない違和感。

どこかへ帰りたかったのだ。
ここではないどこかへ、いつだって、気が狂うほど。


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最終更新日  2022.12.04 00:28:56
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