2373039 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

320life

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

ノマ@320life

ノマ@320life

サイド自由欄

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

カテゴリ

2022.05.01
XML
テーマ:読書(8187)

本のタイトル・作者



彼岸花が咲く島 [ 李 琴峰 ]

本の目次・あらすじ


彼岸花の咲く島に流れ着いた少女。
記憶をなくした彼女は、自分を発見した同世代の少女・游娜に海の向こうの楽園・ニライカナイから来た「宇美(うみ)」と名付けられ、島で暮らすことになる。
宇美の話す言葉ではない、不思議な言葉を話す島民たち。
「ノロ」と呼ばれる女たちが統べる、この島の秘密とは―――?

引用


でもある日突然、海の向こうがどんな感じなのか、気になったんだ。(略)みんなの言うことを疑っているわけじゃないけど、何もかもそのまま信じるわけにもいかないって、そんな気がした。だって、見たこともないんだよ。信じろという方が無理じゃない?


感想


2022年105冊目
★★★★

第165回芥川賞受賞作。
著者が1989年台湾生まれということで話題になった作品。

私は勝手に「戦時中の韓国・済州島に日本人の少女が漂着する物語」だと思っていて(どこから来たそのあらすじ)、蓋を開けてみれば「進撃の巨人」「約束のネバーランド」『新世界より』『No.6』系の、「高い壁に囲まれた世界と、その向こう側(世界の謎)」という系統のお話だった。
しかし冒頭(わずか14ページ目)でネタバレしているので、あとは宇美がどうなるのか、何を選ぶのか、世界の向こう側は「今」どうなっているのか、というところでハラハラしながら読んだ。

どちらかというと、これは言語的実験作品として読むものだと思った。
宇美が話す「ひのもとことば」(日本)は、外国語(漢語)排斥のため、「やまとことば」を用いることになっており、「やまとことば」で表せない概念(言葉)は世界の共通言語である英語を借用することになっている。
これ、戦後の日本語を思い出した。

日本が戦争に負けた時、日本の国語教育がその原因のひとつだと取り沙汰されたことがあった。
いわく、漢字を使っているからいけない。
日本人は、膨大な時間を漢字の勉強に割く。
日本語をもっと平易なものにしなくてはならない―――。
当時は、日本の表音文字化(アルファベットによるローマ字表記)や、ひらがなのみでの表記、フランス語公用化案(志賀直哉)まであったそうだ。
結果、日本語は日本語のまま残ったのだけれど、漢字は大幅に簡略化された。
中国も繁体字ではなく、簡体字を用いるようになった。
ベトナム語や韓国語にも漢語が多くを占めているけれど、これらも表音文字を採用したことで漢字は廃れている。
漢語圏の「漢字を使えば通じる」とう共通語としての表記文字は意味をなさなくなった。

植民地化された国ぐにでは、大学などの高等教育を現地語で行えないことも多い。
それは、概念をあらわす言葉がないからだ。
日本では、明治期に英語が大量に入った際、知識層が懸命に漢語に翻訳したので、日本語のまま高等教育を受けることが出来る。
(現在はほぼカタカナ語として英語をそのまま入れているけれど)

今、インターネットの普及により、世界は英語に塗り替えられた。
英語が出来るようになりたい。でもそれは=日本語を捨てるということではない。
私は自らが生まれついたこの豊かな言語が好きだ――――他の言語が同じように豊かなように。

インドネシアの子が、「日本語には文字が三つあるよね?」と訊いてきたことがある。
(インドネシアでは高校の第二言語で日本語を学ぶ機会があるそうだ)
「ひらがなと、カタカナと、漢字は、オフィシャルさで変わるの?」
私は質問の意図が分からなかった。
「つまり、公文書では漢字を使うの?ってこと」
ああ!その発想はなかった。
しかし硬い文章になればなるほど、漢語が増えるのは確か。

宇美は「ひのもとことば(和語)」で育ったので漢字が読めない。漢語が使えない。
これ、実際にやってみるととても難しい。
たとえば、「実際に」は使えない。
宇美の話している「」の中を読んでみると、苦心して(ああ、この言葉も、このことのはも、)禁忌を侵さないように書いているのが分かる。

そういう意味でとても興味深く、面白い小説だった。


↓ 「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです ↓

にほんブログ村 にほんブログ村へ







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2022.12.04 00:19:53
コメント(0) | コメントを書く
[【読書】小説(日本)] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.