本のタイトル・作者
水たまりで息をする [ 高瀬 隼子 ]
本の目次・あらすじ
ある日、夫が飲み会で後輩に頭から水をかけられた。
それから彼は、お風呂に入れなくなった。
水道水は臭いと言い、雨に打たれ、遠い川へ入りに行く夫。
彼は、狂っているのだろうか。
引用
衣津美にも、内側で誰の声も届かないほどの爆風が吹きすさんで、ずたずたになった心の中身が、自分でも想定していないほど遠くの、意外な場所まで飛んで行ってしまう時がある。ただ、彼女は手で耳を覆って、誰の声も聞こえなくなる代わりに嵐の音も聞こえないようにできるし、心が繊維状に散り散りに破れてしまっても、それを拾い集めてより合わせ、前と同じ形に似せることもできる。それは、そうしようと決意しているわけではなくて、子どもの頃から自然とそうしてしまうのだった。
感想
2022年167冊目
★★★
第165回芥川賞候補作ということで読んでみた初著者。
ほか、『犬のかたちをしているもの』という作品を書かれているみたい。
いまいち私のドストライクではなかった。
・夫のちんぽが入らない [ こだま ]
(
8月に読んだ本①)
・
いまだ、おしまいの地 [ こだま ]
のこだまさんのトーンが好きな人は好きな感じ。
あと、私はこの作品を読んでいる間中、頭の中で細田守監督の「おおかみこどもの雨と雪」が同時上映されているような感覚があったので、そういう雰囲気が好きな人もいいかも。
夫がお風呂に入らなくなった。
それだけで、世界は簡単に狂ってしまう。
水たまりの中に閉じ込められて、どこへもいけない。
嵐がやって来て、そこから水が溢れてしまうまで。
実際自分の夫がお風呂に入らなくなったらどうするかな、と思いながら読んだ。
ミニマリストであれば、「湯シャン」を試したことがある人も多い(と、思う。たぶん)。
シャンプーやリンスをやめて、お湯だけで洗い流す。
でもこれ、普段よりうんとお湯を使って、何度も何度も熱めのお湯で流すことで皮脂を流す。
それでも結構ベタベタするんですよ、最初。
結局ガマンできなくて、私はシャンプー&リンスに戻った。
最後、東京暮らしだった彼らは、主人公の故郷である田舎へ移住する。
小川は川へ、川は海へ。
自分の川を遡上できなければ、私たちはどこへ還れば良いのだろう。
故郷の川がなければ。
彼女は故郷の川へ戻った。
彼女は最後に、そこからどこかへ行けるんだろうか。
それとも、水たまりの中で息をし続けるんだろうか。
その水は澱み、臭うようになる。
彼女はその臭いに、慣れるんだろうか。
そこで、生きていけるんだろうか。
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