本のタイトル・作者
にげてさがして [ ヨシタケシンスケ ]
本の目次・あらすじ
もし、自分に、ひどいことを言ったり、する人がいたら?
君は、逃げていい。逃げるんだ。君を守るために。
そうして―――。
引用
にげて さがして、うごいて うごいて、
どうか いつか きみに
すてきな なにかが、
すてきな だれかが、
みつかりますように。
感想
2022年228冊目
★★★★
私が学校図書館で司書教諭をしていたら、新学期前に絶対この本を並べる。
二学期を前に娘に、と思って自分のほうが泣きそうになってしまった一冊。
ハンディな小さめ判型の絵本。
いじめ(という名を隠れ蓑にした暴力などの違法行為)を想定した絵本かな、と思っていたんだけど、いやこれ大人にこそ刺さる。
パワハラ、セクハラ、モラハラ、なんでもとにかく、そういう目にあっている大人。
ここにいて、踏ん張って、頑張らないと、と思っている人。
そのために自分が傷ついて、ぼろぼろになっている人。
逃げよう。
逃げるは恥かも知れないが、役に立つのだ。
逃げて、探しに行こう。
ここしかない、と思わされているなら、そんなことはない。
自分に言い聞かせるように、そう思った。
あの人はどうしてあんなに、わたしのことを嫌うのだろう。
無視され、嘲笑され、怒声を浴びせられ、それでも私は平気なふりをしなくちゃいけないのかしら。
何でもないように。
こんなことも知らないのと鼻で笑われ、お前は間違っていると発言するたび罵られて。
それでも黙ってここにいなくちゃ、いけないのかしら。
私はもうね、その人と極力接点を持たないようにしていて、とにかく接触を減らすようにしている。
その人のほうを向かないし、コピー機のところにいたら印刷しに行かないし、トイレも一緒にならないようにしている。
ここにいることしかできないなら、そうするしかない。
関係が悪いことは上司にも年度当初から伝えていたけれど、それでもこれじゃいけないと思って頑張った。
でもだめだった。
私はもう、仲良くなろうとする努力をやめた。
私を傷付ける人に、私は優しくしなくていい。
全ての人に好かれようと思わなくていい。
相手が私のことを嫌うのは、私にはどうすることも出来ないのだから。
私の何が悪かったのだろう、どこを直せばいいのだろう、と思い悩むより。
前を向こう。自分のことを考えよう。
稚拙なあれこれにかかずらっている暇はない。
私にはたくさんやりたいことがある。やるべきことは山ほどある。
私はただ前を向いて進む。
私が悔やむとしたら、それは私のことであって、他人のことではない。
そうしたらね、だいぶ楽になった。
とにかく接触を減らして、心理的に切り離す。
これもひとつの、「逃げる」だ。
でも、同じ空間にいる限り、不意打ちのように攻撃を受ける。
馬鹿みたいにまともに食らってしまい、やはりダメージは受ける。
だから、子会社出向の打診を水面下で受けた。
自分を守るために。
まったく自分の行きたい方向ではないけど、それもいいかと思って。
転職するのは、今の状況と環境だと難しい。
ならば出来る範囲で、変えてみよう。
にげて、さがして。
転がって転がって、思っていたところとぜんぜん違うところへ。
転がって転がって、思っていたものとはぜんぜん違うものがくっついて。
ねえ、きっとそれも楽しいよね。
いったい私は、何になれるんだと思う?
いったい私は、どこへ行けるんだと思う?
探す、というのは主体的な行為であるけれど。
そうじゃなくてもいいんじゃない?とも思うのだ。
キャリア形成、という言葉に違和感があるのはそれだろう。
会社の都合であちこちの部署へ都合よくやられるなかで、どんなキャリアプランを描けると?
人事に翻弄されて、駒のように並べられて。
けど、どんな場所でも学べる。
「学ぼう」とするその姿勢ひとつで。
知らなかったことを知るのは、楽しい。
出来なかったことが出来るようになるのは、嬉しい。
にげて、ころがって。
転がって転がって、私はその過程を面白がりたい。
転がって転がって、△で□な私が、最後に○になれたらいいな。
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