本のタイトル・作者
特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来 [ 南原 詠 ]
本の目次・あらすじ
特許権の侵害を申し立てることで賠償金を荒稼ぎする「パテント・トロール」をしていた大鳳未来。
敵の手法を知り尽くした彼女が、今度は弁理士として特許専門の法律事務所を立ち上げた。
彼女のもとへ緊迫した連絡を寄越してきたのは、VTuber事務所のエーテル・ライブ。
唯一無二の稼ぎ手である天ノ川トリィの使うモーション映像技術が、特許権侵害を警告されたのだ。
活動休止を宣告されたも同然の彼女を、大鳳は救うことが出来るのか!
引用
「私にプレイヤーとしての才は何一つありません。私が魅力的なパフォーマンスをしたり、使いやすい薄型テレビを自力で開発したり、特許を取得したり侵害したりすることは永遠にないでしょう」
怪訝な表情をしているトリィを無視し、未来は続けた。
「でも私には守る力がある」
未来はトリィに向き直った。
「特許で才能を守ることも、失うには惜しい才能を特許から守ることも、どちらも弁理士の仕事です」
感想
2023年029冊目
★★★
第20回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
私、てっきり『元彼の遺言状』(第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作)と同じ人が書いた本だと思っていたよ。違った。
ということに、本の巻末の選考員評を読んで気付いた。遅い。
二年連続で似たような作品を選んだんだなあ…。
・
元彼の遺言状 [ 新川帆立 ]
・
倒産続きの彼女 [ 新川帆立 ]
↑は「新川帆立」さん。この作品は「南原詠」さん。
南原詠(ナンバラエイ)
1980年生まれ、東京都目黒区出身。東京工業大学大学院修士課程修了。元エンジニア。現在は企業内弁理士として勤務。第20回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、『特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来』でデビュー
著者も弁理士。というわけでリアリティは折り紙付きなのだろう。
選考員は「法律用語が専門的で難しすぎる」というようなことを言っていたけど、私はそうは思わなかった。
しかしまあ、私はまず弁理士っていう仕事があることを知らなかったよ。
字面から「やけに口が立つ人なんかな、権利者の代弁者とかそういうイメージ?弁護士と何が違うの?」と思って、日本弁理士会のホームページを見てみたら、「弁理士は、産業財産権に関わるすべての手続を代理することができる国家資格保有者です。 」とのこと。
弁護士が法律全般を扱う仕事であることに対し、知的財産に特化したのが弁理士。
弁護士資格を持っていれば研修のみで弁理士登録が出来る。
なるほど。
となると、主人公の大鳳は弁護士資格は持っていなくて、弁理士資格だけなのかな?
法律事務所の共同経営者は、弁護士なんだよね。
内容は、売れっ子VTuberが、デビュー前にオークションで買ったモーション取得機器(これが土地調査のときに使用する機器として使われているものだった)の権利侵害を警告された、という今どきな内容。
私はYoutubeをまず見ないので(エクササイズ動画はお気に入り登録したものだけをひたすら再生してる)、そこからさらにVtuberとかなってくるともう何がなんだかなんだけど、メタバースもどんどんこれから一般的になってくるだろうし、新しいアイドルはそんなふうになってくるのかな。
二次元のアイドルであれば、私生活のスキャンダルはない。
かりそめの存在、架空の誰か。
それを生身の人間がキャラクターとして演じたらどうか。
過去を持たない「その人」。
きっとそれは商品として売りやすいだろうな。
演者もプライベートが切り分けられて私生活が侵食されなくて良いだろう。
なので、この作品に出てくる天ノ川トリィが、ほぼ生身の自分をそのままVTuberにしていることが私は不思議だった。
面倒なことを避けるため、というようなことを言っていたけれど、いやもろに現実に存在している本人だから余計に面倒なのでは…?
知的財産を巡る丁々発止のやりとり、駆け引き。
(法的対応だったら「ごねる、潰す、仲良くする、諦める」の4つ。しかしそれ以外の手段なら無限にあるのだそうだ。)
ドラマや映画にすると見栄えしそうな内容。
本編の前に、薄型テレビのエピソードがあるのだけど、これもまた続きがありそうだなと思っていたら、続編が出ているのね。
『ストロベリー戦争 弁理士・大鳳未来』。
しかし今度はいちごの名前を巡る戦いのよう。続きも読んでみたい。
以下蛇足。
私はハードカバーの初版を読んだのだけど、170ページの「中途半端」が「中途半『場』」になっていて、そういう単語があるのか、そういう表記もあるのか調べてしまった。
単純な著者の覚え間違いっぽいな…。
受賞作品を書籍化するときに気づかんかったんか…。
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