228.27000冊ガーデン [ 大崎梢 ]
書名27000冊ガーデン [ 大崎 梢 ]感想県立高校の司書・星川駒子。学校図書館の利用者を増やそうと、孤軍奮闘する毎日だ。ある日、生徒が本にまつわる謎を持ち込んで来てーーー。出入りの本屋・針谷さんと、日常の謎解きが始まる!という内容。すべて背表紙がひっくり返された本棚の謎。春雨づくしのレシピが載っている本を探せ。など、わくわくする謎がいっぱい。図書館にまつわる本が好きな人は好きな感じ。学校図書館が舞台の小説でいうと、・本と鍵の季節 [ 米澤穂信 ]・栞と嘘の季節 [ 米澤穂信 ]・図書室のはこぶね [ 名取佐和子 ]あたりだけど、この作品も上記3作に近い。日常の謎×本というテーマ。毛色はちょっと違うけど、・リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ [ こまつあやこ ]も学校図書館がキーになる。上記4つは生徒が主人子だけど、この『27,000冊ガーデン』は図書館司書が主人公。・麦本三歩の好きなもの [ 住野よる ]・麦本三歩の好きなもの 第二集 [ 住野よる ]・お探し物は図書室まで [ 青山美智子 ]らへんは、一般的な「図書館」が登場するし、司書視点もある。・この本を盗む者は [ 深緑野分 ]は私設図書館だし、・図書館がくれた宝物 [ ケイト・アルバス ]は第2次世界大戦中のイギリスの図書館が登場する。出版社、本屋、図書館。本が登場する小説って、どうしてこんなに楽しいのかなあと思いながら読んでいて、「本の中にたくさん実在する本が登場するから」かと思った。内輪ネタ、あるあるで盛り上がれるというか。(「中田永一」っていう作家さん、「乙一」の別名義なの?!読んだこと無いけど、別名で書いていること知らなかった。あと、「ちょー」の話で「美女と野獣」って続けるところ最高に好きな内輪ネタ…コバルト文庫、野梨原花南『ちょー美女と野獣』ね!ダイヤモンドにジオラルド!)これこれこういう作家を読んでいる男の子だ、という描写に、「センス良いね」と評するところなんて、まさにそう。どういう本を読んでいるかは、どういう本を選ぶかは、その人を表す。「…私、思ったの。本って、それそのものが密室みたいじゃない?」(略)「密室ですか」と、疑問の形で話を促す。「外から完璧に閉ざされていて、中で何が起きているかまったくわからない。知りたかったら表紙をめくり、書かれてある文章を読んでみるしかない。そう思うと、図書館って密室だらけよ。面白くない?」先輩司書が、主人公に言うこのセリフ。そうなんだよね。私は良く、表紙とタイトルから本の中身を想像して、だいたいそれと違いましたっていうところからレビューを書き始める。扉の向こうは別世界、秘密の花園の鍵穴の向こう。これは王国の鍵。この本の主人公は、県立高校の司書。タイトルは、「高校にある図書館蔵書数は、平均27,000冊」というデータから。学校司書の立場(教員じゃなくて事務員なんだ?!とか)や、年間の購入予算が20万円(え?!)で、保護者から月額200円ずつ集めてるとか、配架と廃棄の話とか、学校ごとの教育目標による図書室運営方針(選書)の違いなど、「へえええ〜」というお仕事内容がたくさんあって面白かった。ひとつ疑問だったのが「学校司書は事務員」という説明。私、知らなかったけど「司書教諭」と「司書」以外に「学校司書」という職種があるのね…。・「司書教諭」と「学校司書」及び「司書」に関する制度上の比較(文科省)まず、正規職員の「司書」がレアジョブになっている昨今。公設図書館の司書募集なんて、あれば良い方。ないのが当然、あっても数名。図書館流通センター(TRC)や、TSUTAYAを運営するCCC株式会社、丸善CHIホールディングス株式会社…。公設図書館はどんどん民間に委託されていて、委託先では最低賃金程度でアルバイトが多い。そんな中で、さらにレアジョブなのが正規職員の「学校司書」ですよ…。これも公立だと会計年度任用職員で、曜日ごとに行く学校が違ったりじゃないですか…。そんな中、この小説の主人公は、県立高校の学校図書館の専属フルタイム司書(公務員)なのですよ!私、求人検索して条件見て撃沈。私は司書と、司書教諭(教員免許資格+司書資格+αの受講で取れる)の免許を持ってるですが、そして出来ればそういう仕事を出来たらと思うんですが、「うーん」となってしまう。最近語学交換をしている相手に「そんなに本が好きなら、本に関する仕事をすれば?」「好きなことを仕事にしないと、毎日なんのために生きてるの?」というようなことを言われて、「そうなんだけどさあ」となってます。図書館って、本を貸し出すだけの場所じゃないんだよね。主人公は、「自分を救ってくれた大切な場所」としての図書館を、今度は「かけがえのない場所を守る側に回りたい」と学校司書を目指した。学校の中にあって、個人の自由が認められている場所。学校に本を納入する業者の書店員・針谷は言う。恵まれている子と、そうでない子。生徒たちには選びようもない、持って生まれた環境のもと、自分の心ひとつで、生きていくしかない。「ぼくはその話を折に触れて思い出します。そして、伸ばした誰かの指先に、届いてほしいと願いながら本を並べています。本から得られるものは無限であり、それは誰にとっても平等だと思うので。というか、そう信じていたいので」私も本の森に救われたひとりだ。だから、その場所を守る事ができたらな、と思う。あなたは本に守られている。その砦の中で、あなたは自由だ。たとえそこが外界から隔絶された箱庭でも、その中にいる間は、あなたは安らげる。あなたは本に守られている。大丈夫。深い森の中には、いくつも外の世界への扉が並んでいる。あなたはもうその鍵を持っている。いつでも来て良い。何度でも来て良い。どれだけいても良い。そんな場所が、ほかにあるだろうか。赦された場所。ーーー図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。そしてこの本は(公立の図書館であるならば)すべて無料で借りられて、あなたはそれを持ち運べるんだ。本を携えて、その物語を胸に抱いて、言葉を唇に乗せて。あなたは本に守られている。だいじょうぶ。だからどこへでも行けるよ。ランキングボタンです。クリック頂くとブログ更新の励みになります!