176.みんな知ってる、みんな知らない [ チョン・ミジン ]
本のタイトル・作者みんな知ってる、みんな知らない [ チョン・ミジン ]”누구나 다 아는, 아무도 모르는”by 정미진 (2017)本の目次・あらすじ1995年、ひとりの少女が姿を消した。天真爛漫な一人娘、9歳のチョン・ヨヌ。誘拐犯は、韓国社会に少女が虐待されている音声と写真を送り続けた。49日後、彼女は解放され―――その間のすべての記憶を失っていた。全国民の耳目を集め、全ての人が記憶した事件。犯人は捕まらないまま、誹謗中傷にさらされた少女の一家はアメリカに移住する。そして20年後、両親を亡くした彼女は再び、韓国の地を踏んだ。足跡をたどる彼女。しかし誰も、20年前の事件のことなんて、覚えていなかった。○ヨヌの同級生、ユシンは、医師の夫と結婚し、双子の男の子に恵まれて幸せに暮らしていた。ある日、マンションのエレベーターに閉じ込められるまでは。そこで彼女は、子どもの姿を見る。カウンセリングで、忘れていた記憶が蘇る。9歳だった彼女に、何が起きたのか。みんな知ってる、みんな知らない。あなたは知ってる、私は知らない。私は知ってる。誰も、知らない。引用今の私は、人の反応など気にしない。相手が私のことをどう思おうが、どう記憶しようがかまわない。あるがままの私を見せるだけ。私はもっとたくさんの人と知り合い、より広い世界へ進み、よりよい人生を生きるつもりだ。感想2021年読書:176冊目おすすめ度:★★★朝日新聞書評で紹介されていた本。ところどころに挿絵が入って、なんだか少し絵本のような雰囲気もある、ひたすら暗くて悲しい、傷跡がじくじく痛むような話なのだけど、御伽話みたいだった。色彩の抑えられた、単純化されているけど写真みたいな絵。特に三日月と顔の絵、ぞくっとした。著者は、1983年生まれ。現在はチェコで執筆しているそう。男性だとばかり思って読み進めていたので、女性だと知って驚いた。(外国の作家の名前、それだけで性別が分からないので、先入観なくていいかも)内容はサイコミステリー。前半は誘拐されていた女の子、後半は誘拐犯と目された男の娘の話。前半で「なぜ友達のお父さんがヨヌを車に乗せ、山で降ろしたのか?」と疑問だったので、後半で謎が解けた。前半は『西洋骨董洋菓子店』のオーナー(橘)の話を思い出した。私は、後半の方が物語に深みがあって好き。しんと静まり返った貯水槽の底。ざわめきに包まれた森の中。ふたりが「閉じ込められていた」記憶。そして、それを忘れなくては生きていけなかった、子ども。辛い。韓国語の原題は「누구(誰も)」「아무(誰も)」と2つあって、これってどう違うんだろう、と調べたら、名前だけわからない(特定されている)時は「누구」、漠然とした不特定多数は「아무(誰も)」らしい。へえ。英題は "Everybody knows, Nobody knows" で、누구にEverybody、아무にNobodyをあてている。日本語はどちらも「みんな」と訳しているけど、確かに「みんな知ってる」のは特定されたみんな、で、「みんな知らない」のみんなは漠然とした全体としての集合体だなあ。↓ 「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです ↓