【ネタバレ】京極夏彦「魍魎の匣」
さてさて「パッと読める」をこよなく愛する私めが、何を血迷うたか京極夏彦に手を出した。いきなりエラはまり(^_^;)。図書館に京極堂シリーズ全巻あったのも助かりました。おかげで連日寝不足です。やっと「姑獲鳥の夏」から「邪魅の雫」まで読みました。とにかく有名な作品なんで、ネタバレ踏まないようにするのが大変だった。うっかり「陰摩羅鬼の瑕」読む前にネタバレ見てしまった。こういうことがあるから、人気作品に手を出すのは難しい。まあそんなん言うてもしゃあないよね。信長が本能寺で死ぬなんて先に言わないでっとか、言い出したらキリないし。リアルタイムで読む盛り上がりはなかったけど、おかげでシリーズ一気読みができたから、よしとしよう。「塗仏の宴」で途中で待たされたら切れるよまったく。異論もあるだろうけど、割と純粋にミステリーとして読んでます。謎解きを楽しみにしてる。そんな無茶なって時もあるけど、だいたい理屈通ってると思う。あっそっかー、なるほどねー、きづかなかったよー、っと関心できればいい。ただ推理の過程が示されないよね。一応伏線はあるけど、京極堂が結論に至った理由がよくわからん。もう何でも知ってるやん。「見たんか⁈」ってツッコミありつつ。なんかホモホモしいのよねー。登場人物男が多いせいか、何かっていうとイチャイチャしてる。もう明らかに京極堂がツンデレ。関口がウケ。わざと狙ってんの?(^_^;)昔ながらの、「家上がってけよ」っつって飯までご馳走になるって、自分が大人になってからはないなあ。嫁の立場からだと迷惑だわー。でも古き良き時代を書きたいんでしょ。人と人の距離が近いの。ほんで最高傑作?という「魍魎の匣」についてです。以下ネタバレ。【送料無料】魍魎の匣 [ 京極夏彦 ]価格:1,140円(税込、送料込)「バラバラ遺体が発見されても、殺人事件とは限らない」というロジックを説明するために考えたお話なんだろうなあ。だからまあ元々無理がある。それを描写力でごまかしたというか、無理矢理持ってった感じ。百合描写が素晴らしい。さすがヲタ作家の鏡だ!つまり脳内妄想なのだ。リアルじゃないからどうしてもお上品なのだ。この百合描写だけでも読む価値あるよ。「にきび」があっただけで殺人を犯すというバカバカしさ。純粋とか無邪気とか、まあなんというか半径2メートルが全世界という若者独特の傲慢さが、「そんなやつぁいねえ」と言いつつ、なんとなく説得力がある。ヲタの脳内妄想が、実は人類に普遍的だったりするのか。でも、お母さんかわいそう。なんかちょっと救いありそうな展開に途中でなったじゃん。反省したじゃん。でも結局娘は死にました。ってほんとにかわいそうだ。このお母さん、生きるのに必死だっただけで、たいして悪いことしてないような。でも頼子が全ての原因だから、やっぱ死ななくてはならなかったんだろうな。そもそもこいつがきっかけで、連鎖反応的に全ての事件が起きて、関係ない家出少女まで巻き添えで死んじゃった。因果応報で言えば、頼子は死ななければならない。多分、反省する、後悔する、という展開が似つかわしくないからだろう。自らの妄想に傲慢な若者は、愛されてることにも気づかないで、勘違いで死ぬ方が似つかわしい。でもお母さんかわいそう。人の親になったからかしみじみ思うわ。何を間違ったんだろう。どうすれば娘は死なずに済んだんだろう。後悔は大人にこそ似つかわしい。さてさて、本作のキモである、箱詰めの少女というものに猟奇的なロマンを感じる、という気持ちはわかる。田島昭宇の漫画「サイコ」の最初の方であったよね。こういうのどっちが先なんだろうね。「サイコ」もかなり古いよー。こういう「どっち先論争」って不毛かな。気になる〜んだけど。「サイコ」のあれはクール宅急便の保冷箱だけど、けっこう隙間があった。あえて嫌がらせで絶対死なないように処置してた、おかげで隙間は普通にあった。でも「魍魎の匣」は、もっと「みっちり」入ってたように書いてある。そもそもが空間恐怖症から発想が来てたんだし、隙間があったらおかしい。更には延命目的はないので、骨盤さえとっぱらってる。点滴とかいらんし。さて、そうした時に、具体的なビジュアルがわからん。どんな箱にどういう姿勢で入ってたかわからん。しかも、蓋を開けたら顔が見えた、って上向き?みっちり感を出すには首曲げなきゃいかんけど、首苦しいだろうな。漫画かアニメ見たら解決するんかな。文章で読んでもビジュアルイメージが湧かなくて、そこが一番残念でした。折角京極世界にのめり込んでたのに、つまりどういうこと?って引っかかってしまいました。わざとぼかしてるんかもしれないけど。みっちり感なら、伊藤潤二の漫画「うずまき」のお父さんの方が強烈だよー。箱なんて四角いから、どうしたって隅が空間余るじゃん。「円」の方がよっぽど「みっちり」してるのに。そういや漫画「魔人探偵脳噛ネウロ」にも、死体を箱にする犯人おったな。多分作風的に、ばっちり「魍魎の匣」オマージュだと思うけど。つまりは自分だけのものにしたいっていう願望だよね。どこにも行かない、行かせない、閉じ込める、自分だけの、、、。「南君の恋人」とか「ラブプラス」とか「ミザリー」とか。大槻ケンヂの短編小説に、役者出身のエクソシストが、霊能力ではなく、ただの演技で憑きものを祓い落とす、という話があった。憑き物と呼ばれる精神疾患は、自分は憑いているという思い込みから起きるので、一連の除霊儀式(演技でかまわない)を行うことで、憑きものは祓われた、と思い込めば除霊される。肝心なのは、患者を思い込ませるだけの白身の演技。このコンセプトは京極堂だよね。微妙に違うけど根っこは同じ。霊能力なんてものは存在しないという前提で、演技やら言葉やらで人を癒す。京極堂は、言葉っていうより情報だけど。これもどっちが先なんだ〜。オーケンの本売っちゃったから詳細うろ覚え。宗教とか、新興宗教とか、民間信仰とか、基本的には信じてないわけ。オカルトを信じない。信じない上で、いいじゃんそれで気が楽になるならいいじゃん、ていうスタンス。ちょっと気になったのが、偶然が多いなあってこと。ご都合主義が目につくよねー。偶然あった、偶然知り合いだった。またか(^_^;)。「姑獲鳥の夏」みたいな閉じた世界ならいいんだけど、ていうか似合ってるよね。世界を広げよう広げようとして、無理してる感がある。そこが残念でした。【送料無料】多重人格探偵サイコ(1) [ 田島昭宇 ]価格:609円(税込、送料込)【送料無料】くるぐる使い [ 大槻ケンヂ ]価格:500円(税込、送料別)----追記(関連項目を追加しました)----関連項目【ネタバレ】京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」 【ネタバレ】京極夏彦「百器徒然袋―風」