仕事のノウハウ・スキルを同僚にどう伝えるか
仕事をする上で培ったノウハウやスキルを同僚に伝えることは、決して簡単なことではありません。特に、業務が複雑化し、求められるスキルが高度化している現代においては、「ただ教えればよい」という単純な話ではなくなっています。同じ会社、同じチームで働いているからといって、全員が同じ経験を積んでいるわけではありませんし、知識やスキルの前提が異なることも多いです。そのため、効果的にノウハウを伝えるためには、 「何を・どの時間軸で・どのレベルで」 伝えるのかを考え、状況に応じた伝え方を工夫する必要があります。この記事では、仕事のノウハウ・スキルの伝え方について考えてみます。1. 仕事のノウハウを伝える際に考えるべきポイント仕事のノウハウを伝える際には、以下のような観点を整理することが重要です。(1) 時間軸を意識するノウハウの移転は、短期間で完了するものもあれば、年単位でじっくりと教えていくべきものもあります。例えば、• 業務の進め方(社内システムの使い方、定例業務の流れ)• Excelの基本操作や業務で使うテンプレートの作り方• 業界・業種特有の知識や専門スキル(会計、システム、英語など)• 仕事の進め方の考え方(意思決定の基準、交渉のポイント)• 組織の中での役割の理解(上司や関連部署との連携方法)ノウハウを伝える際に、 「この内容は1週間で覚えてもらうべきか、それとも長期的に身につけてもらうべきか?」 を考えることが、効率的な指導につながります。(2) どのスキルを伝えるべきか整理するノウハウ・スキルは、大きく分けると以下のようなカテゴリに分類できます。1. 業務基礎スキル(ツールの使い方)Excel、社内システム、報告書のフォーマット、メールの書き方など例:「このExcelのマクロを使えば、月次のデータ処理を行える」2. 業務関連知識(専門的な知識)会計知識、システム知識、英語、業界理解など例:「この業界では、営業利益率が○%を超えると優良企業とされる」3. 業務の進め方(業務フローや意思決定の考え方) どのタイミングで誰に相談すべきか、交渉の進め方、リスク管理など例:「社内で稟議を通すには、まず課長に相談して合意を取ることが重要」4. 目の前の業務の分担(実務の割り振り方)どの業務を誰がどのように担当するか例:「このプロジェクトのデータ収集はAさん、レポート作成はBさんが担当する」これらのスキルを、相手の状況に合わせて適切に伝えることが重要 です。2. 組織構造によるノウハウ移転の難しさノウハウの伝え方は、 組織の構造 によっても大きく変わります。(1) 階層型組織(部長・課長・平社員が明確な組織)このような組織では、役職ごとに役割が決まっているため、 計画的なノウハウ移転 が可能です。• 若手には業務基礎スキルを重点的に教え、徐々に業務関連知識や判断スキルを伝えていく• 課長が部長の視点を学ぶなど、キャリアの段階に応じたスキル移転が可能この場合、 「次の役職に求められるスキルは何か?」 を意識しながら学ぶのが有効でしょう。 (2) フラットな組織(ベンチャー企業、人手不足のチーム)一方で、ベンチャー企業や人員が少ない組織では、 短期間で何でも習得する必要がある ため、計画的なノウハウ移転が難しくなります。 • 目の前の業務が優先され、体系的な教育が後回しになる• 人手不足のため、長期間かけてスキルを身につける時間がないこのような環境では、 「最低限これだけは知っておくべきこと」を整理して伝えることが優先されてしまい、長期を見据えた成長やキャリア設計が難しくなります。3. ノウハウの伝え方では、実際に同僚にノウハウを伝える際、どのようにすればよいのでしょうか。 (1) 口頭説明+実演の組み合わせノウハウを伝える際、口頭で説明するだけではなく、 実際に手を動かして見せ、本人にも作業を行ってもらうことが重要です。• 「まずは私がやるのを見て、その後あなたがやってみてください」• 「このExcelの関数はこう動くから、こう使うと効率的だよ。次の業務でも組み込んでみて」• 「次の資料作るとき、前に見せたあの資料の構成を参考にして作ってみて」このように、 実演・実例を交えながら伝え、本人にも手を動かしてもらうことが大切でしょう。(2) マニュアル化・ドキュメント化口頭で伝えたことは忘れやすいかつ、参照がしにくいため、 簡単な手順書やマニュアルを作成すると、ノウハウの移転がスムーズになります。最近だとWeb会議ツールで録画もできるので、一度説明した内容を録画して、新メンバー含めいつでも見返せるようにするのが効果的です。• 「定型業務の流れは、この資料にまとめておきました」• 「説明会を過去に動画で録画しておいたので確認してください」特に、短期間でのノウハウ移転が求められる場合は、 「すぐに参照できる形」で情報を残すことが大切 です。(3) 実際の業務を一緒にやる「見て覚えろ」ではなく、 最初は一緒に業務をこなしながら、ポイントを伝える方法も有効です。• 「最初の1回は一緒に作業しながら、どこが重要か説明する」• 「2回目以降は任せつつ、チェックやフォローする」こうすることで、単なる知識の伝達ではなく、 実践的なスキルとして身につけてもらうことができます。基礎知識を実際の業務に応用してもらうにはこの方法しかない気もします。4. まとめ仕事のノウハウ・スキルを同僚に伝える際には、 時間軸・業務レベル・組織の構造を考慮すること が重要です。また、単に説明するだけではなく、 実演・マニュアル化・実務での体験を組み合わせることで、より効果的にスキルを定着させることができます。業務の効率化だけでなく、組織全体の成長にもつながるノウハウ移転を意識しながら、日々の業務に取り組んでいきたいものです。結論、ノウハウ習得に長期間必要な場合には、業務を一緒に行っていく、プロジェクト形式で積極的に関わっていくことが重要だと思います。特に、フラットな組織では意識的に若手や育成対象者を巻き込んでいくことが組織としての成長に重要だと思います。--ノウハウ交流関連の書籍--知識創造企業(野中郁次郎)暗黙知という言葉を広げた野中郁次郎さんの書籍です。新装版として読みやすくなって再登場とのこと。知識創造企業(新装版) [ 野中 郁次郎 ]引継ぎChange&Education(宗澤丘史)どの組織でも発生する引き継ぎを人材育成の機会として捉えてみたらどうかと提案してくれる書籍です。引継ぎ Change & Education 生産性を3倍に跳ね上げる【電子書籍】[ 宗澤岳史 ]