二十歳で母の、小説時々日常・・・

2006/12/16(土)16:58

once第二章 67 最後の笑顔

小説[once](178)

最初から&途中からははこちら (第二章を追加しました) ***67***  朝子は実家の戸を開けると、大きく一つ深呼吸をしてから挨拶した。 「こんにちは。・・・いちひと~!」 朝子の母親が出てきて「いっちゃん! ママが来たよ!」と言ったが、いちひとは家の奥で遊んでいて出てこない。 朝子は苦笑した。前は、走ってきてくれたのに・・・。 「いっちゃん! いっちゃん~ママが来たのよ?!」 何度もいちひとを呼ぶ母を遮り、朝子は言った。「いいわ。それよりごめんね。突然泊めてあげてなんて言って。お父さん、怒ってなかった?」 「・・・まぁ、ちょっとはね」そう言い、にっこり笑う母を見て朝子は思った。どうやら、けっこう怒っていたみたいね・・・。 「それよりどうしたの? 最近、疲れた顔しか見ていない気がするけど」 朝子は少し顔をゆがめながら、玄関先に腰を下ろした。「・・・ばれるね、やっぱりお母さんとキミカには」 母親はエプロンの裾を押さえ隣に座ると優しく言った。「何かあった?」 朝子は微笑んで言った。「・・・ちょっとだけ、ね。とにかく、これからもいちひとを頼むわ」 「何よ、あらたまっちゃって」 「へへ。たまに言っておかないと。で、早速なんだけど明日、いちひとを泊めてあげてくれないかな」 「あら。また?」 朝子は俯いた。「・・・・・うん」 「篤さん、明後日出張から帰ってくるんでしょう?」 「うん・・・多分ね」 「多分ねって・・・朝子」 「あの人、絶対仕事で手を抜かないの。問題があれば、残して帰ってなんか、絶対来ないわ」 そう言って彼女は笑ったが、視線は下を向いていた。それを見て母親は複雑に笑った。 「そう・・・」 朝子は淡々と言った。「まぁそれも彼のいいところだと思うけど」 「そうね」 「パパが帰ってくるまでに、お掃除もしたいし!」 「あらあら。無理しちゃだめよ」 「もう、そればっかりなんだから」 朝子は顔中で笑った。その笑顔の奥で孤独に押しつぶされそうになっていることなど、誰も想像しなかったほどに彼女はその日、嬉しそうに笑ったのだった。 ↓↓クリックでランキングが上がります。応援していただけると励みになります!!(南北に続く高架線 この先にはきっとあると囁いてる)←ELLEGARDEN 高架線 ↓↓こちらもお願いいたします(人´∀`).☆.。.:*・°

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