今日の一強7 【本1】町山智浩著「最も危険なアメリカ映画」
最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで [ 町山 智浩 ]映画にハマり始めたのは中学生の時からです。おそらく家庭に録画機能付きのビデオデッキが到来してからでしょう。「月刊ロードショー」で遥かかなたハリウッドに思いを馳せつつ、毎週TVで放送される映画を必ず録画しては、テープが擦り倒すほど視聴していました。時は80年代後半、スティーブン・スピルバーグプロデュースの特撮映画隆盛の時代です。星煌びやかな作品で溢れかえっていましたが、群を抜いて光り輝いて見えたのが「グーニーズ」、そして、王者「バック・トゥ・ザ・フィーチャー」(「BTTF」)でした。「BTTF」は「2」「3」と続きますが、むしろ続編があることでより完成度を高めて行った杞憂な作品です。観るたびに新しい発見や理解があり、むしろ歳を経るにつれその完成度に感服。ついには我がオールタイムベスト映画となるのでした。時を経て、町山智浩氏の映画解説に出会います。町山氏の批評の最大の特徴は、徹底した一次資料の読み込みです。映画作品の「なぜそうなったのか」という謎部分を、一人よがりの推論ではなく、きちんとした証拠を集めた上で解説します。原作や原案段階まで遡るのはもちろん、時には監督や俳優など映画関係者に直接コミットします。映画の謎部分を解説していく展開は、実にサスペンスフルで毎回、どんな映画でも驚かされます。そして、最後までわからない謎部分については正直謎と認めた上で、ようやく独自の推論により解説しますが、その推論が実に面白い!「町山の評論は映画本編より面白い」と言われる所以です。映画批評というか、映画史全体において、私は「町山以前、町山以後」があるのではと思っています。映画を一回丸裸にし、立体的に見せることで、さらに映画の魅力を高めていく、いわば「映画再生師」でもあります。一方で、映画の魅力を落としかねない危険な「映画アサシン」でもあります。特に超名作と言われる映画ほど、山ほどある一次資料を辿れば、隠しておきたかった真実性はどうしても炙り出されてしまいます。このように、映画作品にとって町山氏の映画批評は、毒にも薬にもなるわけです。そんな町山氏に丸裸にされ、それまでの評価に一矢報いられた作品が「フォレスト・ガンプ」です。この作品ほど町山氏以前以後を体現している映画はないのでは、というくらいの裸ん坊状態です。テーマは黒人差別の歴史。なぜかくも町山氏は「フォレスト・ガンプ」を痛烈に「批判」するのか。本誌「最も危険なアメリカ映画」は、この「批判」のために書かれたと言って過言ではないほど、詳細な解説と理由が表明されています。「フォレスト・ガンプ」の監督といえば、かの「BTTF」の監督と同じ、ロバート・ゼメキスであります。まさかと思いきや、「BTTF」も同じ文脈で「批判」の対象となっていました。かと言って葬られるべき作品とまでは言及していません。ただ、「なぜそうなっているのか」を知っていることは必要かなと思います。私にとっては「BTTF」は今でもオールタイムベスト映画ですし、町山氏の評論も理解できます。しかし「フォレスト・ガンプ」は流石にやりすぎ感が拭えず、かつての感動の記憶は薄れてしまいました。😄