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カテゴリ:特撮
アジトに戻ったおれは作戦室に呼ばれた。
親切なクモ男さんに教えてもらったのだ。ありがとうクモ男さん。 「おまえ、作戦室も知らんのか?マヌケなヤツだ」このひと言がなければあなたをもっと尊敬できたのに。マヌケもなにも、おれはまだここに来たばっかりだっての。 細い通路を歩くと、周囲と違ってひときわ大きなドアがみえた。あそこか。 ドアの前に立つと、自動的に左右に開いた。へぇ、自動ドアか。だけどなぜ不揃いにぎこちなく開くんだろう? 薄暗い部屋のなかに入る。正面に、鷲だか鷹だか、ともかく鳥が地球の上にまたがっている紋章が飾られており(なんちゅう趣味だ?)、その中央部が緑色に点滅している。ざっと辺りを見回したが、他には人がいないようだ。 と、聞いたことのある声が突然部屋に響いた。 「よくやった、戦闘員5号」 へっ?おれの名は5号?他の呼び方はないのかなあ。たとえばコードネームとか、もっとイカした名前をつけてもらいたいもんだ。 もう一度部屋を見回すが、やはりだれもいない。ただ紋章の中央が点滅を繰り返すだけだ。 首領はどこにいるんだろう? 「キミの働きによって、我々ショッカーは本郷猛を手に入れることができた」 声が続く。あのなぁ、おれはただクモ男に言われて気絶させただけだっての。働きなんて言えるほどのことはなにも…。 「よって、キミを特別に、改造人間に生まれ変わらせてやろう」 かいぞうにんげん?なんだそれ?まさかあのクモ男みたいなヤツのことか?あんな化け物みたいなヤツにされるのか? とんでもない!今のこの変なペイント顔ですらショックだってのに、これ以上おれの体をどうかされるなんてまっぴらだ。 だからおれは言った。 「首領、おれ、い、いやわたしは、まだそんな活躍などしておりません。改造人間になど、滅相もございません」 こんなていねいな言葉使いがおれにできるとは。ちょっとホメてやりたいぞ。 「ならぬ!おまえは本郷猛の改造終了後、次の計画によって改造されることが決まっておるのだ!」 なんだ、うまいこと言いやがって、はじめからそのつもりだったんじゃないか。しっかしきたないよなぁやり方が。さっきまで“キミ”だったのがもうおまえ呼ばわりだし。 あの不揃いに開く自動ドアが動き、白衣の人間(かどうかあやしいものだが)がキャスターつきの台車を押して入ってきた。 台の上にいくつかのケースが置かれていて、それぞれの中になにかうごめいているのがチラリと見えた。 「これらのなかから、好きなケースを選ぶがよい。それが今回の働きに対するおまえへの、私からの褒美だ」 まだ言ってる。最初から改造は決まってたって言ってたくせにヌケヌケとまぁ。 うれしくない褒美だなぁ。いやいやながら近寄ってケースの中を見た。 ハチ、コウモリ、カマキリ、コブラ、サソリ、その他…まったくありがたい。この中から選べって言うのか首領さん。 「どうした、早く選ばぬか!」 首領はそうとう短気な性格らしい。まったくもう…。 もちろん、できるならどれも選びたくない。顔のペイントも取って逃げ出したいくらいだ。 しかし、もしそうしようものなら、短気な首領のどんな仕打ちが待っているかわからない。こわい! ケースを見比べて、おれはそのうちのひとつを指さした。 「首領、こ、これでお願いします」 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.08.18 20:25:00
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