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ロックの部屋

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JOHN CALE

ジョン・ケイル『PARIS 1919』とカットアウト盤のお話



音楽のアルバムもCD化になって、もう20年以上。今では一部のファンを除いてはアナログ盤を買う人もいないでしょう。かつてアナログ(LP)時代には、カットアウト盤というものが存在していました。

カットアウト盤なんて知っているとしたら、かなり年配のロックファンになってしまうのではないでしょうか?カットアウト盤というのはアルバムジャケットの四隅のうちの一角(大抵は右上)をハサミかカッターで三角形に切り取って売られているアルバムの事です。あるいは、パンチで丸く穴を空けてあるアルバムもあります。

これは売れ残りや、売れないアルバムを安くして売っていますという目印のような物で、通常2000円前後で売られているものを1000円以下の価格で売っている物なのです。簡単に言うとアナログ盤のセールス品です。当然これは輸入盤のみで日本盤にはこういったものはありません。意図して傷ものにしてしまうわけですが、中身のレコードはけして中古ではなくて新品です。

カットアウト盤には、名盤と言われるものは、ほとんどないのですがたまに例外があったりします。私は5・6枚カットアウト盤を持っていたと思うのですが、今も持っているのがこの【ジョン・ケイル】の『PARIS 1919』というアルバム1枚だけです。

ジョン・ケイルと言う人は当時のロックシーンではアンダーグラウンド的な存在で、【ヴェルベット・アンダーグラウンド】のオリジナルメンバーであったり、プログレ関連では【ケヴィン・エアーズ】や【ブライアン・イーノ】と親交があったり、ニューヨークのロックシーンでは【パティ・スミス】や【ストゥージス】などのパンクシーンとも関わりがありました。マニアックなロック好きには支持されていた人でしたね。

ソロ作品にはアンディ・ウォーホールのアルバムデザインによる『コダカラー』なんていう前衛的なアルバムも出したりはしていますが、案外ポップな作風が主流だったりします。

この『PARIS 1919』などもその傾向のアルバムで、は1973年の作品です。クラシックの弦楽奏をバックにしたロマンチックでポップな楽曲が多いです。ダンディズムにユーモアにヨーロピアン志向の伝統的な優雅さも感じられて、裏ジャケットには前衛的な遊びもかすかに見せていたりします。

「CHILD’S CHRISTMAS IN WALES」のパイプオルガンなんて、【プロコル・ハルム】の「青い影」を思い起こさせる名曲です。「HANKY PANKY NOHOW」「ANDALUCIA」も美しいアコギとストリングスをバックにゆったりと語りかけるジョン・ケイルの円くて優しいヴォーカルにウットリします。

なおプロデュースにはクリス・トーマス、ゲスト・ミュージシャンには【リトル・フィート】のローウェル・ジョージも参加。

ジョン・ケイルはニューヨーク出身のアメリカ人かとずっと思っていたら、ウェールズ出身のイギリス人のようでした。

このアルバムは曲の良さが際だっている名盤、カットアウト盤にされていたのが不可解です。


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