アイソレート電源の自作が難しい
今回はパワーサプライの自作についての検討です。
やや唐突ですが、私の脳内では紆余曲折あったのち、現状失敗に終わった段階にあります。他に書く事も無いのでメモ程度に残そうかと思います。
内容云々というよりも、普段自分がどんな考えをどんな流れで製作に向けてるか書き出したような話です。
今回のお話ですが、まず自分のエフェクトボードを作ろうという所からスタートしました。
投入するエフェクターそのものについては一人で考え堂々巡りに入り、他人から見たら意味の分からない部分にこだわり始める、ありがちでどうでもいいお話になるので割愛します。
これがある程度固まってきた段階で、ふと手元にパワーサプライが無い事に気付きました。
以前であればvoodooのペダルパワーなど定番だったのでしょうが、個人的な嗜好(チープ好き)を鑑みて考えるとややハイエンド過ぎます。それだけの魅力がある事も理解していますが、調べると現在は代理店業務終了で国内在庫がありませんでした。探してまで縋り付くものでも無いかな、と考え一旦保留です。
ディップスイッチを信用してない身としてはやや警戒もありますしね。
そこで別製品に目を向けると、近年のパワーサプライ業界の発展は目ざましく、なんかすごい感じです。安価で小型なアイソレート式電源が巷に溢れています。急に発達しすぎじゃないですか。
さて、そのアイソレート電源について、私もよく分かっていませんが一応補足を入れておきます。
曰く、これを使うとノイズ対策になるとの事。グランドループ云々なのかコモンモード関係なのかは不明ですが、特にデジタル機材を使用した際に、電源を共有する事で発生するノイズを回避します。
詳しい原理は不明ですが、デジタルエフェクトやチューナーなどが混在する環境で、電源由来のノイズ対策として強力に効く場面がある事は確かです。
そのアイソレートとやらが何をしているのかという話ですが、分かりやすく噛み砕くと個々の機材を電池や専用アダプターで動かすような状態です。大電流が頻繁に変動しているデジタル機材を専用の電源で動かす事で、そのノイズが電源経由でアナログ機器に回り込む事を回避します。
ちなみに、分かった様な事を言っていますが、勘でそれっぽい事言ってるだけなのであまり信じないでください。根拠とかゼロです。むしろどこかに根拠の明確な説明がありましたら、是非ご教示いただけますと助かります。
ここで話が戻りますが、自前のボードにパワーサプライを入れるとなった場合の選択肢として、アイソレートに対応した機材だけでも結構な種類があります。間違いなく現在のトレンドな状態です。
某社から出ている赤色の機種は小型のわりに全端子アイソレートで各端子500mAまで対応、電圧切替できる端子に至っては800mAまでカバーしています。これでペダルパワーの半分程度の価格というから恐ろしい。
某、国内のシステム製作メーカーのパワーサプライのアイソレート出力は500mAが2端子のみという事を考えると、前述の機種は後発とはいえスペック的にズバ抜けています。
そして、私としては「凄過ぎてなんか怖い」という理由で一旦見送りとします。
そこまでのスペックをそんな急にノーリスクで得られると思えない体質(?)というのと、ペダルパワーの時と同じく「スペック凄過ぎるものは何か嫌だ」という倒錯した考えからです。
第一、よく考えると個別に電源用意するなんて小型のアダプターを必要数並べたらいいだけなんですよ。2万円あったら2千円のアダプターが10個買えます。しかも全出力1A以上の定格で。
実際、前述とは別のシステム製作メーカーは多連アダプターを多用しています。ただ、それを自分でやるとなると満足度が著しく低いというのと、「なんかスイッチング電源って…」とか色々な邪念がそれを良しとしない気分にさせます。
そしてそこまで考えると、小型のアイソレート式パワーサプライなんて劣化版スイッチングアダプター詰め込み機材じゃん、と思えてきました。同一筐体というそれっぽさや満足度だけに大金を払える気分では無くなりました。そもそもデジタル機材での高周波ノイズを取りたいのにあえてスイッチング系の電源に移行する事も無いでしょう…。
その他アレコレ考えましたが、結局自作するのが一番早いという結論に至りました。できればアイソレート出力も組み込みたいですが、知識的にできる事は限られています。
スイッチング回路は設計できませんが、慣れ親しんだトランス回路だったら何とかなりそうな気がします。音良いって言うし。スイッチングって何か嫌だし。小型の機材ってチップ電解コンデンサとか死んだら目も当てられ無いし。酸っぱいブドウなんて食べたくないし、といった心境。
最初に名前のあがったペダルパワーですが、知る限りでは唯一トランスでのアイソレート方式を取っています。ただしこれを模倣するとなると特注のトランスが必要です。
なんとか市販のパーツでどうにかならんものか…と悩み抜き、ひとまず方針を決定しました。
方針1
電源はAC9Vアダプターから供給する
これが最大の難点であり、こだわるポイントです。AC100Vの商用電源を引いてくれば幾らでもアレンジが可能ですが、自宅に置いたり人に貸した際に、万が一、億が一、兆が一にも故障で火災なんて起きたら責任なんて取れません。電源はPSEを通った既製品を用意し、製作物は特定電気用品以外のものとします。結局、作ったものが燃えたら取り返しはつかないんで十全に気をつけ配慮するしか無いんですが、安全と保護と精神衛生のため、第一の確定事項とします。
方針2
市販のトランスを流用してアイソレート出力を得る(結果、ここが失敗でした)
なんとか市販のトランスを使って流用できないかと悩んだ結果浮かんだのが、一次側のタップを活用するという方法です。電源トランスでは海外電圧などに対応するため、入力が0-100-110Vなど小刻みに対応している事があります。この100V-110V(=電圧差にして10V)部分の端子間にAC10Vを入力すれば、出力側からは定格通りの電圧が取り出せるはずです。
つまり、一次側0-100-110V : 二次側0-10Vという定格のトランスを用意し、入力端子を組替える事で10V入力で10V出力の1:1のトランスとして使用します。入力側で目的の端子間に9Vを入力すれば(定格とは10%程度の誤差があるものの)出力からも問題なくアイソレートされた1:1の9V出力が得られる!といった寸法です。(真似しないでください。)
色々考えましたが、基本的な考え方は問題ない気がします。(この段階ではそのつもりでした。)
ここから先は実験しながら検討するのが早そうです。これは妙案だろうと、先日トランスを購入してきました。
一次側は0-100-110V
二次側は0-10V (0.5A) x2
という複数出力のトランスを購入しました。
合計1Aまでの出力に対応します。
入力電源は出力側と繋げてしまうとなんやかんや大変な事になりうるので、アダプター入力側は使用不可とし、これでようやく2系統、最低限のアイソレート出力が確保できます。
トランスと内径ドンピシャな筐体も見つけて購入し、その他パーツを集めて意気揚々と帰宅しました。この時点で結局パワーサプライが買える金額を使っています。
そして暇な時間にマジマジと眺めながら筐体内での配置を考えていたのですが、ここで重大なポイントに気付きました。
一次側のコイル線径が小さい。
出力側は0.5A x2系統で、合計最大約1Aの消費です。用意したアダプターは1.3Aまで対応しているので、鉄損など考慮してもギリギリの所で定格はセーフだと思います。そんなギリギリまで使わないし多分大丈夫でしょう。
だからこそパーツを実際に集めて作り始めた訳ですが、改めてよく考えると一次側コイルに流れる電流についての配慮が足りていませんでした。
本来は100Vから電源を供給する設計のトランスの訳ですから、出力側で10V x 1A(=10W)消費している場合でも入力側では100V x 100mA(=10W)+ちょっとの電流しか流れていない事となります。で、コイルの線径が細いという事は、一次側では1Aなんて電流の流し方は絶対に考慮していません。
つまり、一次側には最大でも100mA程度の電流しか流せない事となります。トランスは1:1で使う訳ですから、出力側も合計100mAまでしか取り出せません。
これでは、デジタル機材の電源を分ける目的では到底使用できません。気づかず作ってたら何処かしらが壊れる所でした。危ない。
ここで残された道は、手元のパーツを使って100mAしか取れない脆弱なアイソレートサプライを自作するか、朧げな知識で高額な専用トランスを特注するか、という辺りとなります。
100Vで動かせば早いんですけどね。それするなら安全なやつ買いたいです。
多分、2系統程度の出力なら特注してもそんなに高い金額にはならないと思うので前向きに検討したいと思います。けど想像してみると、低電圧の1:1だと作るの結構大変かもしれない。
ここから先は業者さんに相談です。その時は、整流など後段の条件を考えると入力は12Vが良いですね。
簡単に真似できそうな書き方をしていますが、(私も全て正しい事を言っている訳では無いでしょうが)基礎的な知識が分からなかった方は真似して自作などしないようにしてください。危ないもの。
メーカーさんから似たもの出たらアレですね。良い製品だったら買いたいです。
さて、ただアダプター持ってきて三端子レギュレータ入れただけのパワーサプライ作っても良いんですが面白くないし、次は何を企みましょうか。