2021/04/17(土)08:19
うちのプレベのパッシブ回路あれこれ
パッシブ回路好きを公言している私ですが、そういえばタップ回路以外ブログに書いていなかったので少しだけ記事にします。
これまで「パッシブ回路を組むのが好き」と伝えても、だいたい「意味が分からない」というような反応がほとんどだったので、少しでも輪と理解が広まるとパッシブ回路おじさんは嬉しいです。
さて、思いついたものを列挙しても仕方ないので、うちで転がってるプレベの回路をいくつか紹介したいと思います。
最初の頃は普通にCTSポットに5000円くらいのペーパーコンデンサを載せたりしていましたが、段々と変な回路を思いつくようになってからは、パーツは適当で、回路の実験機に成り果てて行くこととなります。
自作回路では一番長く載せてたTBXの応用トーンコントロールから話そうと思います。
しかし、それにしてもですね。頑張ってプレベ用に回路は作った訳ですが、まずそもそも、プレベには1ユニットのピックアップとボリューム、トーンのコントロールしかありません。
これが中々難しいものでして、何度考えてもアレンジする幅がもうほとんど無いのです。
各弦のバランスは崩せないため、タップすら不可能でシリパラくらいしかできることがありません。
実際シリーズ・パラレル切り替えスイッチのついた楽器も存在していましたが、使うかと問われると別にオリジナルのままでも…。というのが私の感じた印象でした。
しかもコントロールについてもボリュームは絶対的に必要で、完全に自由に扱えるのはトーン部分のみです。
ただトーンに関して、元々重心の重たい音色であるプレベに、通常のハイカットトーンは単調であると感じていたので、もう少し活用する幅のある回路にしたいと感じていました。
低域方向に偏重したトーンの単調さを改善する案として、すぐに浮かぶのはセンター位置を基準にしたハイカット/ローカットトーンですが、これはとりあえず「アリッちゃアリ」程度の回路です。
スイッチポットを用いてローカットへ切り替える回路も、「アリッちゃアリ」ですね。
ただ私はそういった既にあるような楽器を仕立てたいのではなく、新しく有用なパッシブ回路を作りたいのです。
唸った結果できあがったのが、フェンダーのTBXトーンを使った応用回路です。
TBXについての詳しい解説は、調べればたくさん出てくるので先達にお譲り致します。
少しだけ簡単に説明すると、センター位置の緩いハイカット(低い抵抗値)の状態を基準の音として、
・ノブを絞って行くと通常のトーン回路が繋がりハイカット
・逆に回せば負荷抵抗が大きくよりブライトな音色になる
というコントロールです。
ギタリストにも存外自然な変化として受け入れられていましたが、センター位置ではやや高域がロールオフしているというパッシブならではのクセがありました。
それでもパッシブの範囲で自然なブースト感、効果幅を狙ったものとしては相当優秀な回路であると思います。
実際、センター位置で普通のフラットだと感じていた方もかなり多かったかと思います。
さて、これに関してセンターでレンジが変わるのであれば辻褄を合わせればいい、という発想で組んだのが今回の回路です。
具体的にはピックアップをパラレルで接続して、下がったレンジを元に戻します。
TBXトーンではセンター時の負荷抵抗値が約82kΩと、通常のトーンポットの4分の1に近い数値まで落ちています。そのため高域が落ちてしまいます。
そこで、ピックアップを直列から並列に組み替える事でコイルの合成値を4分の1にして、下がった抵抗値におおよそ辻褄を合わせてしまうのです。
これならセンター位置で通常の周波数レンジと同等に落とし込むことができます。
センターでフラットなままですので、トーンを上げれば通常よりもレンジの広いブライトな音色へ変化し、トーンを下げれば通常のトーンを効かせる事の出来る回路になりました。
正直、他にアレンジしようが無い中でピンポイントで帳尻合わせができたので、プレベらしさと+アルファが実用的な範囲でまとまっていて結構気に入っている回路です。
ふむ。こうなると名前が欲しいですね。
「パラレルTBX」で伝わりますかね。
でも商標に引っかかるかもしれない。
さて、上記回路(またその応用)で満足していた私ですが、回路作りが趣味なのでその後も色々模索しておりました。
しかしプレベコントロール構成の縛りは非常に強力で、中々有用な回路は作れません。
別のアプローチでできあがったのが、現在搭載している「ただの定数組み替え回路」です。
入り口は、「そもそもプレベの最大の特徴ってローカットされない事じゃね?」と思ったことでした。
確かにパラレルTBXではジャズベに近いレンジ感まで持って行くこともできますが、それならジャズベに持ち替えちゃう層にはメリットなしです。
そこで、よりプレベの音を活かしたアレンジを考えた結果「定数変更と少しのアレンジ」で落ち着きました。
具体的には
1MΩのボリュームに100kΩのトーンを後段に配置。コンデンサは若干小さめです。
この場合だと、通常のポット並列合成値である125kΩよりやや小さい91kΩ前後の合成抵抗値となります。
普通に売ってるポットから選ぶとこの組み合わせになっちゃいました。
でもまーとりあえず問題はないと思います。
さて、ピックアップは通常の直列配線で、ポットの合成抵抗値もそこそこ同等の定数に合わせるわけですが、この回路のキモはトーンを後段に配置する部分かと思います。
普段はまずまずなレンジですが、ボリュームを絞った際にはピックアップから見た負荷の大きさが変化して高域バランスが変化します。
ボリューム操作も自然に変化させる事ができるようになります。
具体的に説明します。
分かりやすくボリューム半分の位置で説明すると、抵抗はボリュームの直列に入っている500kΩとグランドに向かう500kΩに分けて見ることができます。
そしてこの時、グランド側にある500kΩとトーンポットの抵抗が並列で配置される形となります。
トーンポットは100kΩですのでその部分の並列合成値は100kΩより小さくなりますが、ピックアップから見ると直列の500kΩの後に100kΩ弱の負荷が直列に繋がってみえる経路となります。
つまりピックアップからみた負荷抵抗の合成値は平常時91kΩだったものが、ボリュームポット半分の位置では500kΩ以上に変化することとなります。
これは1MΩのポットをボリューム&トーンに使う=500kΩよりも高い合成値です。
これによって少しワイドな高域バランスとなります。
またこの時、音量は5分の1ほどまで落ちる計算となり、分圧比が変化するためボリュームポットはBカーブが好ましいと思います。
そうすると明るさの変化と合わせてやや緩い対数カーブを描き、「スムースなテーパー」を描くコントロールが望めるかと思います。
少し煩雑な解説となりましたが、結局この回路ではボリュームを絞ると通常のように音色が暗くならず、体感として自然な音量変化が得られます。
また、もしかすると音色の明るさは要らないという方も居るかもしれません。
しかしそういう方はトーンを絞ると思います。
この回路の面白い点として、「トーンを上げているとボリューム変化時に音色が明るくなる効果が得られるが、トーンを絞り切るとボリューム変化時に音色が暗くなる効果が得られる」特性を持つ点があります。
求めたトーンに合わせてボリューム操作時の効果が変化するのです。(文章にすると魔法のようですが、実際は調整しないと扱いにくいです)
原理についてはごく基本的なハイカット(ローパスフィルタ)を考えてもらうと分かりますが、ハイカット用のコンデンサがボリューム抵抗の後ろにいるので、ボリューム操作での直列抵抗の増大により強いハイカットへと変化するのです。
このため、コンデンサは通常の定数ですと極端に音量が下がりすぎてしまうので、小さめにするのがオススメです。
あとこの回路はもちろんギターにもオススメで、実際似たようなことを試している方も多いようです。
ただしハイパスとの比較で扱われていることが多く、トーン後段接続にハイパスコンデンサを併用しているネット記事なども散見されます。
上記原理を理解しないでただ組み合わせても、高域に掛けるはずの直列抵抗をコンデンサでバイパスしてしまうような回路になってしまうので注意してください。
普通に組み合わせただけでは効果を殺し合うことが多いですよ。
でもまぁ、気に入っていればなんでも良いです。パッシブ回路もどんどん好みに合わせて選んでいきましょう。
あ、でも例の如くプロによる盗用と商用利用はお控えください。
なんとなくまとめたので、まず記事として投稿しちゃいます。
もっと分かりやすくするためにそのうち画像でも追加するかもしれません。ソノウチヤルヨ。