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STRONG SOUL!!

STRONG SOUL!!

第57話 一回戦その1

 更に あっという間に一週間。ザンキの試合の日だ。大会は開催6日目を迎え、毎試合観客席は人でいっぱいである。
ザンキの試合はこの日の最終試合。春を迎えるこの時期、少し陽は傾いたが、まだ十分選手達が戦う姿を見ることができる。
「それでは!本日最後の試合です。選手入場!」司会は黒い服を着た若い男だった。噂によると3年前の優勝者らしい。司会のその声と同時に観客席の歓声と入場口からザンキと対戦相手の男が出て来た。
「あれ?あの人・・・見たことない?」観客席の一部にダーティ達も来て試合を見ている。ソフィアがザンキの対戦相手を見た。
「あれはこの間街中にいた男だな。槍の刃むき出しのむさ苦しい男だ。」
「あ、それよ、それ。」ソフィアが思い出した。
「十中八九、ザンキに分があるな。」ダーティが言った。「あとはどうやって勝つかだな。じっくり見させてもらうぞ。」
二人はリングにあがり、審判から武器のチェックを受けた。「それでは30試合目・・・」その声が出るとザンキは腰の後ろに差しているナイフを二本ホルダーから外し、両手に持った。左腰には宿の主人からもらった宝剣がある。男も背負っていた槍を持って構えた。「はじめぇ!」審判がそういうと先に仕掛けたのは男の方だった。槍を構えたままザンキ目掛けて突進した。ザンキは高く跳んで男の背後をとった。男は振り向いて槍でザンキを突いた。力任せの槍は風を切り裂きザンキの体に穴を開けようとする。
だがザンキは左手のナイフで右側になぎ払う。男はすぐに槍を引いて再びザンキを突こうとした。が槍を突き出すのより先にザンキが投げた右のナイフが男の左足を切った。男は一瞬よろめいたがすぐに体制を直し槍から何度も突きを繰り出した。ザンキはそれを一つ一つかわした。試験の時の石に比べたら止まって見える。
ザンキは男の疲れを見計らい左のナイフを投げて男の右肩を切った。すかさずザンキは右手で剣を抜き、槍を左に思い切り払った。右肩が傷ついた男は一瞬をつかれ、槍が両手からはなれてしまった。
「しまった!」もう遅かった。ザンキは突き出した剣を男の喉元で止めた。
「ま、参った・・・」男が手を上げた。「勝負あり!勝者ザンキ・スカーレット!」客席から歓声がわいた。ザンキはその歓声に両手を上げて少し答えるとリングから退場した。
「あのナイフは外したの?」ソフィアがダーティを見た。
「狙ったんだよ。」「あの距離で外すわけがない。」
「へぇ・・・でも私に敵わないかな?」「お前と対戦するまであと6回もある。何か変わるだろう。」
「その通り。じゃ、帰るぞ。」ダーティは席を立ってもう一度だけ司会しかいないリングを見ると出口に向かった。

「・・・どうですかね?」昨日と変わらない席に座るジョーセツがその隣りのエルグラドを見た。エルグラドの隣りに王はいない。
「流石ノリアード最高幹部。武器の選択もいい。敵に〔ナイフしか持っていない〕という先入観を与えられるし、ナイフをおとりに使える。」
「そ、そうなんだ・・・」エルグラドの言葉に少しジョーセツは驚いた。
「予想だが・・・ダーティはザンキより強いだろう。ダーティの試合が楽しみだ。」それだけ言うとエルグラドは笑みを浮かべた。


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