お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん(34)の『火花』(文芸春秋)。単行本は35万部超発行と人気。
物語の語り手は,又吉さん自身を思わせる若手芸人の徳永。花火大会の余興で出会った年上の漫才師・神谷の他人にこびないお笑いのスタイルに心酔し,慕うようになる。師弟関係となった2人は東京の街をさまよい,ときにお笑い論をぶち上げ,うだつのあがらない毎日を送る。
芸人として徐々にチャンスをものにしていく徳永に対し,笑いの純度を追求するあまり周囲に理解されず,私生活も持ち崩していく神谷。「お笑い」というショービジネスに夢を懸ける若者のおかしみと悲哀を,経験に裏打ちされたリアリズムで描き出した。