テーマ:本日の1冊(3685)
カテゴリ:ミステリー
「10年」をテーマに、人気作家五人が 「地球に磔にされた男」(中田 永一)・・・空から車が降ってくるという怪事件からしばらくたったころ、俺は、父の友人だった実相寺のじいさんの死を知らされた。実相寺の弁護士が言うには、蔵に残された研究機材や私物は、遺言で俺に遺されたそうだ。さっそく弁護士の車で、実相寺家の蔵へと向かった俺は、そこにあるコンピューターの奇妙なタイトルのファイルに気がつき・・・ 「白紙」(白河 三兎)・・・「十年後の自分」というテーマの作文を、白紙で出した女生徒に、担任である大塚はその理由を尋ねた。返ってきた答えは、「私の未来は真っ暗だから!」だった。しかも、彼女は、交際していた男子とも、最近わかれたという。心配なのと、やるべきことはちゃんとやったというアピールもかねて、家庭訪問をすることにした大塚だったが・・・ 「ひとつ、ふたつ」(岡崎 琢磨)・・・交際を始めて半年の恋人・一誠から、結婚を申し込まれた巴瑠の返事は、「・・・考えさせてください・・・」だった。一誠は、返事は又、今度でいいと言ってくれたが、明らかにがっかりしているようだった。一誠が、もうすこし、一緒の月日を過ごすまで待ってくれたなら、ふとしたきっかけで自分の体のことを打ち明けることもできたのに・・・ ターナー症候群。それが巴瑠の抱えている秘密だった・・・ 「君が忘れたとしても」(原田 ひ香)・・・整骨院に勤める結実子は、その日は残業もせずに、待ち合わせの場所へと向かった。10年前、甥っ子の壮馬から、「パパ、カノジョができたんだよ」と、教えられた結実子は、「よかったね」と応えたが、その後、そのカノジョから、とんでもないことを言い渡されることに・・・ 「一つ足りない」(畠中 恵)・・・中国の地で飢えと寒さに見舞われた九千坊河童とその一団は、海を渡って倭国へやって来た。倭国の河童とも上手くやっていくことができ、新しい住処を作り無事に西の地になじんでいくうちに、九千坊は西の地に広がった河童達から、河童の王と呼ばれるようになっていた。しかし、ある日突然、猿たちが河童を襲い始めた。しかも、猿たちは河童の秘薬の青玉を奪い、人の言葉を話せるようになったため、人間の武将に取り入って、味方につけていた!さて、どうする?? 「地球・・・」は、とんでもない状況ではじまったものの、気がつけば時空ヴァガボンドな展開後、なんとなくホッコリした感じで終わりました。まぁ、これはこれで、いい人生なんだろうねぇ。 何でわかんないのよ、このお馬鹿!彼女が抱えているのは、そんなありきたりなことではなく、もっと深刻で残酷なことだってわかれよぉ!と、読んでいる間中思っていたのが「白紙」です。 「ひとつ・・・」は、柔らかに紡がれる風景の中で、揺れ動く巴瑠さんのとまどいや、腹立たしさなどが丁寧に書かれており、彼女達の幸せな未来を、思わず期待してしまいました。 そして「君が・・・」 は・・・判らないではないのよ、再婚相手の子供があまりにもなついている、その子の亡き母の妹とは距離をおきたいという気持ちは。でもねぇ、それって、結局子供の反感を買うだけではないかと思うのよ。もしかして、子供だからら、しょせん何ヶ月か立ったら忘れるとでも思っていたのなら、子供の知性を馬鹿にしてるわ。そして、彼は忘れることなく、大人になったとき、親が断ち切った絆を、あえて親に繋ぎなおさせた上で、大好きだった叔母さんに会いにゆきます。 「一つ・・」は、万に千足りない九千坊親分のお話ですが、なんせ禰々子姐さんの活躍があまりに豪快で華々しく、サルの愚かな野望なんて、彼女の拳骨ひとつで雲散霧消します。お見事! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年01月10日 15時08分15秒
コメント(0) | コメントを書く
[ミステリー] カテゴリの最新記事
|
|