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2012.04.04
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20120404 「遠い山なみの光」 カズオイシグロ を読んで

 英語を少しでも話せるようにと考えるようになったきっかけを頂いたと云って過言ではない方に勧められた書籍であり さっそくアマゾンで取り寄せて読んでみた、「アマゾンで取り寄せる」という表現は凄い 一昔前なら絶対に使用しない表現でこれも現代用語の一つであろう。
 この小説の感想を述べようとするとそのストーリーも若干書かないと表現できないので もし読んでみたいと思って居られる方がいらしたら以降の分は読まない事をお勧めします。

 主人公の悦子はイギリスの田舎町にここ数年住んでいて イギリス人の男性と2度目の結婚をし 今は一人で住んでいる ロンドンに住むニキという二女がここ数日悦子の家に来ているのであるがその理由は自殺した長女の葬式に出席する為である ロンドンの自宅に帰ろうとする二女との会話の中で嘗て長崎に住んでいた時代の出来事を思い出した悦子は自分の半生に想いを馳せる。

 終戦があり 原爆の被害から立ち直ろうとしている時代で朝鮮戦争が勃発した時代の長崎 悦子は何も無い焼け野原に建造された団地に1度目の結婚相手と住んでいた。
 身ごもっていてあと数カ月の出産を待つ身であるが団地から見える一軒の古家に最近引っ越してきた女 佐知子 とその娘 万里子 と知り合う事になる。
 幼い一人娘と活きる佐知子と悦子の生活はまるで違っていて その落差を埋めるという事もせずに 2人の付き合いは序所に深まっていくのである。
 悦子の口利きで近所のうどん屋でアルバイトをし 佐知子は生計を立てているのであるが実は裕福な実家があって 帰ろうと思えば何時でも帰れる身分ではある。
 ある日佐知子はアメリカ人の男と渡米すると云いだし その準備を始める 悦子は頼まれて貯金を差しだしてみたりするのであるが返してもらえる当ても当面は無さそう。
 幼い万里子はたびたび行方不明になるのであるがそれを佐知子は心配する風情もなく 悦子の心配をよそに自分の為だけに生きているように見える ただ口では「娘の将来を第一に考えている」とは云っているのであるが。。。
 悦子はそういった若い頃の回想をしつつ 二女ニキのロンドンへの帰宅を迎えるのであるが ニキの友人は悦子の生き方に感銘を受けて詩を仕立てたいという申出をニキを通してしており 悦子はそれを受け入れて 想いでの長崎の写真を娘にあげるのであるが 心に去来するの渡米したであろあの女の親子への想いである。

 ページ数は少なく1日で読める長さである そうかといって内容は非常に重い 太平洋戦争を生き延びた日本人が如何に必死に生きようとしていたかを簡潔な文章で表現している 朝鮮戦争の時代であるから「コクリコ坂」と同じ時代であろう。
 その必死さの半面残酷さも併せ持った時代で 小さな子猫などは都合で殺してしまってもお咎め無しの時代である 今の日本とは違う。
 しかし物語はそれを回想する主人公という2重構造になっていて 物語の現在は恐らく昭和の30年あたりであろう しかも主人公は長女を自殺で失ったばかりでそのショックも冷めないその瞬間を切り取った僅かな時間の話である。
 2軸の時系列で両方を行ったり来たりするのであるが その2つの事系列は当然に繋がっていて 自殺した娘とは正に回想している時代に身ごもっていたその子であろう 悦子は何故満ち足りた生活を捨てて渡英したのか? 何故長女は自殺したのか?本当は物語の核心はそこにあると思うのであるがその記述は無い。
 また渡米すると豪語していた佐知子が娘と一緒に本当に渡米したのかどうかも記述されていない 物語のエピソードは全て 完全な顛末を語られてはいない。

 作者であるカズオイシグロは日本で生まれ 5歳の時に家族と渡英し現代に至るそうで 恐らくそういう人生を彼なりに消化した所で生まれた小説で 悦子の想いはイシグロ氏の想いそのものかも知れない。
 しかし驚くべき事はこの小説は原作は英文で「A Pale View Hills」というらしく彼のデビュー作らしい という事は作者はその時代の日本をその目で見た事は無いと思われる しかし 作品の中の日本人は見事にその時代の日本人を思わせて 彼の創作とは思えない 相当な研究を積んだ上で 描かれた小説なのであろう。
 こういう時に日本人は「知りもしない癖に」と考えるであろう 確かにそうかもしれない原爆も終戦も聞き知った事でしかなく その恐ろしさを肌でしらない外国籍の日本人に「何が判るか!」と思う人も居るかもしれない しかし そこは完全に払しょくした所で物語は描かれている 作者の努力と 持って生まれた危機感に対する鋭い感性 物語の全体に漂う不気味な空気感。。。全てが特異でカズオイシグロのような生き方をしなかったら描けない小説であろう。

 ただ 一つだけ 気になるのはこのエピソード

 うどん屋で仕事をしたいので口をきいてくれと悦子に「お願い」し 僅かな期間であっても生計の足しになったというのに 物語の後半で渡米する算段になって店を去る事となった場面で うどん屋を蔑むような発言をする佐知子の言動はあり得ないのではないか?と思う 悦子に世話になってその悦子に対してその発言は失礼すぎる しかし 物語で表現されている佐知子は目的の為なら手段を選ばない冷酷な感情の持ち主なので そういう風に考えると「彼女ならそういう非常識な発言もしそうだな」と思える部分もあるにはある。







Last updated  2012.04.04 18:42:07
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 かどちん4467@ Re[1]:20130721 映画「風立ちぬ」を観て(07/21)  シーマスさん  メッセージありがとうご…
 シーマス@ Re:20130721 映画「風立ちぬ」を観て(07/21) 「零戦に似ても似つかぬ」飛行機が、最後…
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