A型胃炎は,胃体部を中心とした胃底腺領域に萎縮性変化がみられ,抗壁細胞抗体陽性,抗内因子抗体陽性を認めることもあります。血中ガストリン値は高値を示し,悪性貧血の合併が多く認められます。なお,B型胃炎は,幽門前庭部を中心とする萎縮性変化がみられ,抗壁細胞抗体陰性,抗内因子抗体陰性,血中ガストリン値は正常以下の例が多くあります。現在,A型胃炎は自己免疫性胃炎の名称が一般的に用いられており,B型胃炎はH. pylori感染による慢性胃炎に相当します。
A型胃炎は,何らかの自己免疫機序により,胃底腺領域の壁細胞が破壊され,胃酸および内因子の分泌が低下するとともに,抗内因子抗体によりビタミンB12の吸収が阻害されます。胃酸分泌の低下により,幽門前庭部に存在するG細胞からガストリン分泌が増加するとともに鉄吸収が阻害されます。高ガストリン血症により,腸クロム親和性細胞様細胞が刺激され,その過形成から神経内分泌腫瘍を発症します。また,胃粘膜の高度萎縮および腸上皮化生が起こり,一部で胃癌が発生します。鉄吸収障害による鉄欠乏性貧血やビタミンB12吸収障害による悪性貧血をきたすまでは無症状です。1型糖尿病や自己免疫性甲状腺炎,白斑症などの自己免疫疾患を合併することがあります。