心房細動の発作頻度は人により大きく差があります。多い人ではほぼ毎日のように発作が起こりますが、少ない人では1年に1回程度です。この、年1回程度の発作のために、それを予防する薬剤を毎日内服するのは効率的ではありません。抗不整脈薬には副作用があります。長期間内服することで、副作用出現の可能性は高くなります。 発作の頻度が低く、発作の時間も比較的短い人に対しては、継続的な薬の内服ではなく、抗不整脈薬をとんぷくとして用いることがあります。発作が起こったときだけ、それを抑えるために薬をのむという方法です。英語では「pill in the pocket 丸薬をポケットに」といいます。
継続的な服用の場合より、1回に内服する量が多くなります。発作が起こったとき、それを止めるためには、血中の薬の濃度を一気に、有効濃度まで上げなければなりません。そのためには、通常の2〜3倍の量を一度に内服する必要があります。とんぷくで効いているからといって、何年も使い続けていると、やがて効かなくなります。これは薬の耐性が出現したからというよりは、心房細動そのものの病態が進行し、とんぷくでは治まらなくなってきたことによるものが大半です。