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テーマ:お勧めの本(7423)
カテゴリ:大人の読書感想文
伊坂幸太郎の「チルドレン」読了。 相変わらずのテンポの良さで、質の良いコントを見ている かのような、心地よい面白さ。このチルドレンは5つの短編で 構成されていて、それぞれが一つのストーリーでもあり、5つ の話に共通の登場人物が出ており、変わりゆく時間の中で、 少しずつ変化する登場人物たちを追っかけることができる。 最初の短編はいきなり銀行強盗のストーリー。相変わらず 伊坂幸太郎はギャングが好きですね。そして相変わらず他の 小説とも微妙につながっている。ここらへんは伊坂幸太郎の ファンサイト「無重力ピエロ」でも上手にまとめられて いるようですね。 5つのストーリーに共通して登場するのが陣内という青年。 この陣内と友人の鴨居が偶然巻き込まれた銀行での強盗事件で 一緒に巻き込まれた盲目の青年永瀬。彼らがおりなす、普通の 日常にある、非日常的な話が綴られている。 陣内は不思議というか奇抜な人間で、考えたこと全て口に出す 男である。突飛で根拠の無さそうな、しかも断定口調で話す 陣内の話が、うまい具合に物事の本質を捉えるのが面白い。 一見面倒な性格の陣内ではあるが、この本質的な感性が、周囲 のメンバーにとって陣内らしさとして許容されている。 盲目の青年、永瀬が見知らずの御婦人に哀れみでお金を渡された あと、それを聞いた陣内が、 「ふざけんな」 「なんでおまえがもらえて、俺がもらえないんだよ」 と、憤慨し、それは盲導犬を連れているからだと諭す永瀬に対し、 「どうしておまえだけ特別扱いなんだよ」 と、更に怒って婦人から自分もお金を貰うべく必死に探す。 永瀬にとって、初めて普通に触れた瞬間がこれだった。 伊坂幸太郎が書く小説というのは、あっさりした文体と心地よい テンポの中で、どこか本質的な、普段見落としがちになる重要な ことをすっと入れてくる。感覚でいうとジャズのライブを聞いて いるような感じだろうか。だとすると、このライブはサッチモと レイチャールズが送る、楽しくも芯のあるジャズライブという 感じかもしれない。 盲目の人の方が、人間の本質を見抜く目をもっているかのようだ。 GOLA お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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