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再出発日記

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2022年01月20日
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テーマ:本日の1冊(3600)
「文豪ナビ 藤沢周平」新潮文庫・編

時代劇作家は、文豪ナビシリーズには「司馬遼太郎」「池波正太郎」「山本周五郎」と、この「藤沢周平」ぐらいしか編まれていない。とりわけ、藤沢周平は他でも、文庫本の読本になる率が高いと思う。それほど、語っても語っても語り尽くせない世界があるのである。

正月、本屋の店頭に文庫オリジナル本を見つけたので、無条件で買った。もはや藤沢周平で未読の作品は数冊しかない。なんらかの発見があるだろうと期待しての買い物である。

半分以上は作品紹介である。
「市井の哀歓」「海坂藩」「武士の矜持」「捕物帖」「義に生きる」と5つに分けて短くまとめている。他には作品から抽出した名言集。ちょっと藤沢周平読み始めました、という人のための入門編である。
もう何度転載されたかわからない、井上ひさし筆の「海坂藩・蝉しぐれ地図」も出てきた。ここまで何度も出てくるのならば、この地図を改変して、藤沢周平全ての海坂藩作品地図を完成させてほしい。権利の問題もあるかもしれないけど、もうそろそろ出来るでしょ。

評伝の名手・後藤正治の「評伝」が載っていたが、正直枚数も読み込みも不足していた。ただし、藤沢周平没後に発見された「未刊行初期短編」の作品評から筆を起こしているのは、今までの読本にない視点だった。「木地師宗吉」を作品の完成度のみで評価しているが、私はもっと別の視点も書いて欲しかった。

珍しいのは、批評家や作家の藤沢周平論ではなく、俳優からのコメントが何人分も載っていること。特に「たそがれ清兵衛」で壮絶な死闘を演じた田中泯のそれは面白かった。真田広之も田中泯も、お互い殺すつもりで撃っているので、2人とも毎日「怖かった」そうだ。1週間かけた、あの死闘だったらしい。次の「隠し剣鬼の爪」でも永瀬正敏の身体に防御用クッションをしっかり巻いて師匠役の田中泯は遠慮なく胴を撃つ。永瀬正敏はうずくまりなかなか起き上がれなくなったらしい。こんな映画は少なくなった。

最も面白かったのは、藤沢周平の愛娘・遠藤展子さんのコラム「父にとっての家族」。数年前に発掘された「藤沢周平 遺された手帳」を全面展開して、「あの時の父親の気持ち」を初めて推察している。また、「獄医立花登手控え」シリーズのおちえは、明確に高校生の展子さんがモデルだったらしい。道理で、最初の頃のおきゃんな様子がリアルだった。かなり取材したらしい。娘に、ともだちの様子をしつこく聞いていて、「お父さん、娘のことをよく聞いてくれる」と思っていたら、不良仲間の友達が、そっくりの描写で出てきた、という。叔母さんの松江は、二番目の奥さんのエピソード(母に何か言われて黙って二階に消えるところなど)が使われている。「普通が1番」という口癖の藤沢周平の良好な家族の姿が浮かび上がる。

藤沢周平の既に移転した後の住居跡を探して、冬の大泉学園町を歩いたこともある。もはや、何もかもが懐かしい。






最終更新日  2022年01月20日 16時28分44秒
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2022年01月19日
「書痴まんが」山田英生・編 ちくま文庫

ごめんなさい。本の中身は、ほとんど読んでいません。表紙についてのみ、語らせていただきます♪

表紙は諸星大二郎「栞と紙魚子シリーズ」の紙魚子さんが、古本屋の店番をしているイラスト(初出・2010大阪古書研究会の合同古書目録「萬巻24号」に描き下ろし)の「部分」です。最近の大阪の天神さんの古本まつりのフライヤーとしても使われているらしい。

背後の背表紙を見ていただきたい。判読できるものだけでも「生首の正しい飼い方」「自殺のススメ」「古本探検」「不思議昆虫図鑑」「珍妙昆虫図鑑」「陳氏菜経」「邪馬台国は火星にあった」「古墳の呪的紋様」「殺伐詩集」「地獄の三時のオチャ」「サイボーグベビーの逆襲」「異聞馬頭教」「根暗なミカン」「魔王瑠死滅の生涯」そして、紙魚子さんが読んでいるのが「怪人猫マント」。

どうです?
いずれも、「あってもよさそうな本」と思いませんか。ブクログで検索したらいずれも、「この世に無い本」でした。「古本探検」などは「関西古本探検」はあったんだけど、この書名は一応ありません。ホントは原画は、もっといろんな背表紙を載せているんですよ。右上に隠れている「室井恭蘭全集」(1-7巻)などは、室井恭蘭で検索したら、信濃の地方図書館で見つけたという情報まであるのですが、良く調べると、とんでもないことになっています。右下に隠れている「虹色の逃走」などは、このアンソロジーに載っている諸星大二郎「殺人者の蔵書印」で詳細に語られています。是非お読みください。「殺伐詩集」「陳氏菜経」などは、紙魚子さんの他の短編で出てきます。

背表紙だけで、いろんな妄想がムクムクと湧いてきます。

「根暗なミカン」には、背表紙に可愛いイラストまで付いています。根暗だけど、かなり凶暴そうです。当然、ときは正月なのでしょう。美味しいミカンほど幸せだった時はまた短くて、ちょっと腐ったミカンと一緒にされるとオミクロン株と見紛う様なスピードで影響されてしまう。その危機を脱した根暗なミカンの運命や如何に‥‥という内容なのかもしれません。

「サイボーグベビーの逆襲」たるや、ボス・ベイビーならぬサイボーグベビーですか!もうはちゃめちゃで楽しそうです。

「邪馬台国は火星にあった」全然不思議じゃない。「邪馬台国比定地」で検索してみてください。もう無数にありますから。みんなオラが村にとか思っている様です。エジプトもあります。それなら、タイムパラドックスやら使って火星にあってもおかしくない。

「古墳の呪的紋様」これはね、考古学を少し齧ったモンならば「装飾古墳」のことだな、とピンときます。でも「装飾古墳の世界をさぐる」(大塚初重・祥伝社)ぐらいの普及本がせいぜいのところで、アレを最初から「呪的紋様」だとするのは諸星大二郎ぐらいなモノです。大塚初重先生の書物を紐解くと「朝鮮半島から幾何学紋様は来たのだろう」とか、「星とか太陽とか鏡を意味しているのだろう」とか、つまらないことしか書いていません。まあ、諸星先生の解釈は名作「暗黒神話」をお読みください。

今回の本屋アンソロジー。前回は古い短編が主でしたが、今回は2010年代の短編も相当採用されています。未だ読んでないけど、面白そうです。






最終更新日  2022年01月19日 15時37分40秒
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2022年01月18日
テーマ:本日の1冊(3600)
カテゴリ:加藤周一
「雑種文化 日本の小さな希望」加藤周一 講談社文庫

加藤周一という「知の巨人」がいた。
現代日本に「思想家」という冠をかけ得る人がいるとすれば、私は先ずこの人を挙げなくてはならないと思っている。
思想家とは(1)その思想が生涯に於いて首尾一貫していること(2)その思想が独創的で且つ社会に多大な影響をもたらしたこと。コレを、私は「思想家」の定義にしている。
よって、
思想家とは、テレビに出ている(東大出の)有象無象のコメンテーターのことではない。
思想家とは、竹中平蔵のようなマヌーバーのような理論で以って政界に(ひいては日本社会に)多大な(悪)影響を与えたような人物でもない。
よって、吉田松陰は思想家ではあるが、その弟子の何人も政治家ではあったが遂には思想家たり得なかった。木戸孝允然り、伊藤博文ならば尚更。
また、いっとき戦後思想界を牽引したと言われる丸山真男と清水幾太郎のうち最後まで自らの思想を進化させていった丸山は思想家だが、安易に保守に寄り添った(転向した)清水は思想家ではない。反対に一般的には無名だが、戦中戦後を通じて日本的唯物論を論じた古在由重は重要な思想家である。

閑話休題。
没後13年。これから日本思想史に位置付けが始まる加藤周一の代表作を再読した。かと言っても、本書は加藤周一の論文集であり、日本の雑種性を正面から論じた文章はごく短い。また、私は幾つかずっと疑問があった。そのことを含めて、この機に探ってみたい。

「日本文化の雑種性」(「思想」1955・6)
⚫︎「伝統的な日本」と「西洋化した日本」で分けて考えると、「日本文化の特徴は、その2つの要素が深いところで絡んで容易に抜け難いところ自体にある。
←これが加藤周一の「雑種文化論」の概要である。なんだ、当たり前のことじゃないか、と考える人は多いだろう。加藤周一がこれを堂々と論じてはや半世紀以上。誰もが堂々と言えるようになったことが、改めてこの論文の影響性のひとつかもしれない。もちろん加藤周一は「西洋化」だけを問題としていない。「神ながらの道」があった古代に「仏教化した日本」も同じように、「二つの要素が深いところんで絡んで」いるのは、私たちが日々実感するところだろう。

⚫︎ キリスト教圏の外で、西欧の文化がそれと全く異質な文化に出会ったら、どういうことがおこるか、それが日本文化の基本的な問題である。
←雑種化は多くが認めることになった。実際加藤以前にもそのことを論じた人はいた。では、雑種化そのものは、未来の日本にどういう意味を持たせたら良いか?という問いかけをしたのは加藤周一の「独創」だった。そのためには、加藤周一は、もう一編文章を書いて寄稿する必要があった。

「雑種的日本文化の希望」(「中央公論」1955・7)
西洋文化が日本に入って雑種化した時に、何が残って何が残らなかったか、それが雑種化の「意味」のひとつになると加藤周一は言う(戦後民主主義の不可逆性)。もう少し具体的に言うと西洋伝来の民主主義という考え方、『「社会科教育を受けて成長した子供」「選挙権と教育を含めて原則上の男女平等を得た女性」「土地を得、得たことを当然と考えはじめている農民」「訓練された組織労働者」「戦前よりも世界情勢に敏感になった知識人」』これらのことは「ものの考え方や感じ方の変化がおこって容易にもとに戻らぬものがあるだろう」と加藤周一は分析している。←それから67年が経った。このうち「組織労働者」だけは大きな後退が起きた。しかし、戦前までは後退してはいない。「子供たち」はまた別のステージに上がっているだろう。

非キリスト教的世界でのヒューマニズムの発展が、文化の面、特に思想・文学・芸術の面でどういう形を取り得るかという見通しを立てることは、この当時の中国・インドの問題ではなく、日本の問題であった。加藤周一は、そこに日本の雑種性の「小さな希望」を見出している。近代的合理主義の背景に、「プロテスタンティズムの倫理」を日本に求められないとすれば、何がその思想を支えるのか。朱子学にしろ、実存主義にしろ、日本人の民衆の根に降りはしなかった。マルクス主義「のみ」が、「西洋伝来のイデオロギーを日本の大衆の道具に使おうとした」。しかし外国で既に出来上がった型を輸入したために「日本の特殊性に応じたイデオロギーの型を生む」には至っていない。という。

「それ」はどうしたら生むのか。

以降、いろいろと述べているが、実は「日本の特殊性に応じたイデオロギー」「小さな希望」は何処にあるのか。遂には具体的には語らなかった気がする。

ただ、雑種文化だからこそ、優れたものを生み出す可能性がある。そのことまで言及した人は、加藤周一だけだったことは強調するべきだと思う。

1974年「文庫版あとがき」
‥‥私がここで言おうとしたのは、現代日本の文化の雑種性に積極的な意味を認めようではないか、ということと、対外的には、排他的でもなく、外国崇拝でもなく、国際社会のなかでの日本の立場を、現実に即して、認識しようではないか、ということであった。

1974年、加藤周一は既に「日本文学史序説」を著し始め、日本文化の姿の全体を明らかにしようとした。しかし、「現実に即して」どういう「日本の特殊性に応じたイデオロギー」を用意するのが、国際社会での生きる方向なのかは、遂には著さなかったように私は思う。←それで良いよね。

いま、「特殊なイデオロギーがないこと」もしかしてそれこそが日本の生きる方向なのかと、これを書きながらふと思った。

あ、「ずっと思っていた疑問」について、展開できていないですよね。なんか、ぐだぐだした文章になっています。昨年の夏から書き始めて、途中放り投げ、また書き始めたので、こんな感じになっています。つまり、今回再読してもハッキリわからなかったんです。かつて高校生の時に梅棹忠夫「文明の生態史観」で、日本の地政的な立場がアジアよりも西欧的な文明化への道を歩もうとしている、という「わかりやすい説」に私は影響されました。大学時代に加藤周一はそれを明確に批判した文章を読み、生態史観を卒業しました。小松左京の「未来学」を読んで、じゃあ日本の未来の青写真はどうなのか、と青臭い青年は未来が気になって仕方なかったのも、この頃です。マルクスの「共産党宣言」を読んで、「日本型の革命」は何なのだろう?と思ったのも、この頃です。柳田國男は「日本人の本性は事大主義である」という。そんな日本人の何処に希望があるのか?と思い、民俗学の講師と夜を徹して討論したのもこの頃です。その中で、「いま・ここ」主義の日本の文化を、国際的視野と歴史的知識で眺めながら半世紀論じ尽くした加藤周一の言説に、その「回答」があるのではないかと、ずっと約40年間思ってきた私です。加藤周一の著作に手をかけて登って眺めてみたら、未来を見渡すことができるのではないか?有為な若者だった私も、少しは何か役に立てることができるのではないか?とずっと思っていた。

青年老い易く学なり難し。
むしろ、終わりが見えてきた。
あと10年で、形を作りたい。

未だよくわからない。もう少し再再読してみたいと思う。






最終更新日  2022年01月18日 14時45分12秒
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2022年01月16日
テーマ:本日の1冊(3600)
「池澤夏樹の旅地図」池澤夏樹 世界文化社

スタンダールが自分で選んで刻ませた墓碑銘が「アッリゴ・ベール、ミラノ人。生きた、書いた、愛した」であったことは広く知られている。(略)ぼくならば「生きた、書いた、愛した」の他にどうしても「読んだ、旅した」が加わる。(245p)

そういう池澤夏樹だから、本書を紐解いた。結局私の人生も、大学4年間のほかは岡山を離れたことはないけど、魂は池澤夏樹に近い。ギリシャにしろ、沖縄にしろ、フランスにしろ、行ってみないとわからないことは多い。でも基本として移住者にはなれない。池澤夏樹は徹底しているから5年ほどは住んでみるけど、やがて気がついたら他に移っている。

そうやって池澤夏樹は旅人として生きてきた。それが、一冊の中に縦横に語られている。

自分の本領は自分語りではなく、旅で得たことを語り広げることだと、池澤夏樹は若い時に規定した。だから材料を集める必要がある。山の頂点にある作品をモノにするためには、その基底部の広い土地を自分のものにしなくてはならない。それは物凄く理解できる。池澤夏樹に5年間の旅が必要だとしたら、凡人たる私には時々の旅含めて20-30年間の「世界」の見聞が必要だということだろう。

豊富な写真と自らの旅体験を解説したインタビューとエッセイ、他者の批評、好きな旅本、旅映画、旅音楽の短評、著作ガイドを載せる。また、自分語りはしないが、唯一の例外として幸せだった6歳までの帯広体験を新聞連載としてまとめた文章も載せている。

以下は、インタビューの一部を抜粋して、以上に書いたこともう少し具体化する。

⚫︎僕の場合は、最初から飛行機の旅。シベリア鉄道ではないんです。安くてもホテルに泊まる旅でしたから、前にも言ったように、旅を目的にしない。旅先で見たものが大切なんであって、旅はその手段でしかないんです。(略)行かなければ見えないものはあるし、それを見なければ仕事にならない‥‥だから行くんです。(略)取材の旅でも、必ず見つかるものを取ってくることを取材とは言わないんです。もう少し越えていかないとわからない。駄目かもしれない範囲が普通のジャーナリストや作家の取材よりももう少し広くて、ダメでもともともある程度見込んでおかないと、予定したものしか見ないで帰ってくることになる。(75p)

⚫︎「池澤さんは還暦の前に新たなステージに移られた。そのエネルギーは、やはり作家としての挑戦として受け止めていいのでしょうか」
‥‥全然違います。この商売は仕込みに時間がかかるんです。ここまでくるのに、どうやったって50年はかかるんです。天才は別ですよ。ぼくはたたき上げですから(笑)。何かの素質はあったと思いますが、ぼく程度の素質だけでは何もできない。人にとって意味あることを言うためには、土台を作らなければならない。それには時間がかかるんです。ピラミッドの斜面の角度が変えられないとしたら、高くするには底の幅を広げないといけない。ですから、まだ三合目。(78p)

⚫︎「『パレオマニア』の取材の旅はどうだったんでしょうか」
‥‥時間と労力が大変でした。一回の取材で2ヶ月分書くわけです。一回の取材は2週間かかります。年の四分の1は旅の空という暮らしが実質3年から4年かかりました。新聞連載と重なったときは、休載していました。(略)(知識は)走りながら勉強するの。みんな一夜漬け。ロンドンに行って博物館を見る。これを何度もしました。基本的には毎回ロンドン発の旅の形をとっています。まさか韓国に行くのにロンドン発にはしなかったけど。大英博物館を見て回って、気に入ったものを見つけて、それをデジタルカメラで撮影する。博物館の中は三脚さえ使わなければ、撮影は自由で、ストロボも大丈夫なんです。だから、ちょっと気になったものは全部撮る。物を撮ったらその説明プレートも撮る。そうしないと、後で何が何かわからなくなるから。それをその日のうちにコンピュータに取り込んで、タイトルをつけながらぼくなりのカタログをつくるわけです。その中から気に入ったものを一点選び、それが、どこでできたかを調べる。大英博物館のブックショップが非常に役立ちました。あれだけ本が揃っていますから。トランクいっぱいの資料を買って帰る。という旅の繰り返しでした。(略)僕の旅は、移動の体験が三分の一、遺跡を見るのが三分の一、後は考えること。印象より一歩踏み込んだ、今まで誰もやってこなかった旅だったと思います。実際には、行く先々の大半は観光地で、旅としては楽なんですが、その割に普通の人が見過ごしているところまで踏み込んで見ていけば、意味のある旅になる。(90p)

←『パレオマニア 大英博物館からの13の旅』は買って読むことに決めた。パレオマニアとは、古代狂の意。






最終更新日  2022年01月18日 14時36分28秒
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2022年01月15日
カテゴリ:洋画(12~)


今月の映画評「すばらしき世界」

  昨年観た映画は109作でした。その中で、ベスト5に入った作品です。

  魅力は、主人公三上を演じた役所広司に尽きます。人生の大半を刑務所で過ごした主人公が、再出発をする話です。もはや若くはないし持病もある。今度こそまともな職に就こうと頑張るのだけど、社会はなかなか彼を受け付けない。しかも、アパートの騒音を注意するのに、ついヤクザまがいの強面を使って見せたりする。仏の顔と鬼の顔が共存する難しい役を、役所広司は絶妙な演技でやって見せました。隣に三上が越してきたら、私たちはどう対応するのでしょうか?

 保護司やケースワーカー、町内会長、昔のヤクザ仲間、そして当初彼をテレビ番組で扱おうと取材を始めて途中で諦めた若い作家崩れの青年(仲野太賀)の目を通して、等身大の三上という人間が浮き彫りになっていきます。

 西川美和監督は凡そ15年以上前の著作で「まだ諦めきれない、もう一度闘うんだ、やりなおすんだ、と歯を食いしばっているような人物たち。そういう悔恨だらけの、黄昏の中に佇むヒーロー」を描いてきた、と告白しています。今作も正にその通りであり、それは翻って私自身でもありました。

 いろいろと我慢しなくてはいけないことが多く、理不尽なことも多い。「シャバは空が広い」それだけが、この「すばらしき世界」の正体なのかもしれません。

 主人公の最後に、力を貰いました。

(原作・佐木隆三「身分帳」、2021年作品、レンタル可能)






最終更新日  2022年01月15日 11時04分01秒
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2022年01月14日
カテゴリ:カテゴリ未分類
「映画評 シン・エヴァンゲリオン」

「家族で楽しめる正月映画を教えてくれ」
「君の家は中学2年の男の子だったよな。アマゾン・プライムは登録しているか」
「している」
「ならば、エヴァシリーズを4作全部観ることをお勧めする。今ならば、今年の新作含めて全部アマプラで観れるし。何しろ今年のマイベストワンは庵野秀行監督の『シン・エヴァンゲリオン』なんだ。面白いぞ」
「お前の趣味はオタク気質だから信用できないな」
「それは否定しないけど、息子さんと内容を巡って、ああでもない、こうでもない、と会話できるぞ。4作ムリならば、最新作だけでも良い。息子さんが既にチェックしている可能性はあるし、冒頭には過去作のダイジェストもある」

‥‥と、ここまで書いて月一度の映画評に再度「シン・エヴァ」を書く企ては諦めた。何故ならば、エヴァシリーズは確かに全て配信されている。しかし、それはAmazonプライムに限った話だ。DVDでも未だ「シン」は出ていないのである。

よって、12月号の映画評はいったん「初恋のきた道」になり、やがて「グランパ・ウォーズ」になった経緯は既に書いた。

今年のBest10も既に書いた。一位は「シン」になった。どうしようもない。Best10を載せようかとおもい!この文章を書き始めたのであるが、既に発表していることを思い出してやめた。

ネタを描き始めてやめた話を2つも書いたので、この辺りでやめにしたいが、色(写真)がないので、年末の年越しそばを二つ載せたい。

上は、岡山市内に場末の食堂で食べた蕎麦。

下は、岡山国際ホテルで特別食としてメニューに入っていた年越しそば。どちらも850円。どちらも、6割蕎麦ぐらいで、特別美味しくはなかった。










最終更新日  2022年01月14日 19時06分34秒
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2022年01月13日
テーマ:本日の1冊(3600)
「古代の食を再現する     みえてきた食事と生活習慣病」三舟隆之編 吉川弘文館

横文字である。よって研究者向けである。よって興味ある部分のみ「つまみ食い」する。しかも、古代とは言いながらほとんどの言及は、木簡文字等の文字資料のある奈良時代以降になっている。ただし研究態度は、考古学や民俗学との融合や調理実験検証の成果などを交流していて好感が持てる。私はずっと不満だったのだが、平安時代にしろ弥生時代にしろ、現代の博物館にある「古代の食事」展示のなんとみすぼらしいことか。殆どは材料をそのまま置き、或いは煮て焼いているだけ。とても美味しそうには見えない。

【内容紹介】古代日本人は食べ物をどう加工し、調理していたか。「正倉院文書」から土器、木簡までを総動員し古代食を再現。古代日本人の食生活や、病気との関係を明らかにする。オンライン開催の2020年9月のシンポジウム討論も収録。

では、この本で「美味しそうな調理」が出たかというと、出ていないと言わざるを得なかった。唯一の主張は、「単なる材料を並べただけの再現は、もうやめにしたい」という意思表示だけであった。そこだけは評価したい。反対に言えば、ここまでが現代研究の到達点なのである。西欧古代料理の到達点となんとかけ離れていることか(←おそらく、文字の歴史が1600年ほどの日本と3000年以上ある西欧との違い)。

以下内容は、弥生時代まで遡れる可能性のある知見と関連する知見のみをメモする。

⚫︎ 甑(蒸し器)を使った古代の炊飯方法   西念 幸江/著
「奈良時代はうるち米を蒸していた」というのを調理実験すると、蒸しただけでは食べれるご飯はできなかった。今までの定説の再考が必要。

⚫︎ 古代の食事と生活習慣病   シンポジウム総合討論   
奈良時代「正倉院文書」の貧乏な写経生も多くは、ご飯等を相当食べていた(現代一般男性の最大が3800kcalとすると、写経生は5600kcalもあった。更には塩分も現代は7.5gが推奨されているが、87gも提供されている)。彼らは「糖尿病」になっていた。それでみると、「日本霊異記」にある皮膚病や視覚障害の原因もそれが疑われる。また、写経生の病欠の記録には足病、腹病、皮膚病、赤痢がほとんど。これも糖尿病の合併症の可能性が高い←琵琶法師が多く輩出したのは、こういう背景があったからなのか。これが米しか支給のなかった都市の貧乏人の病なのか、お米が新しい栄養源となった日本全体の国民病なのかは、未だ検討が必要。←田舎では、米だけを食べるはずがなくて、きっと「都会病」と位置付けて良いと私は思う。

⚫︎ 『延喜式』にみえる古代の漬物の復元  土山 寛子/ほか著
・根や灰汁の処理を行わず、重石や落とし蓋を使わないと直ぐにカビが発生した。重石で空気が遮断され、漬け汁も出ると1か月は保存できる。塩は約4%ほど。また、塩水で洗うと良い。10%以上の濃度の梅干しでは数年保存はできるが、野菜はどうしていたのか。

⚫︎ 古代の堅魚製品の復元   堅魚煎汁を中心として   三舟 隆之/著 中村 絢子/著
煮鰹に塩漬けして干したもの、或いは海水で煮て天日干ししたものが「堅魚」。削って酒に浸して旨味を出すのに使われていた可能性はある。

⚫︎ 古代における猪肉の加工と保存法   高橋 由夏莉/ほか著
煮佛後に塩漬けして5日天日干すと保存が効く。←「図書館の魔女」には「塩漬けした獣肉で出汁を取った雑穀スープ」が出てくるが、そのような使い方は弥生時代からあっても全然おかしくはない。

⚫︎古代における「豉」の復元
現在の納豆というよりか、寺納豆。グルタミン酸もあり、免疫力も増すことから薬として使われてきた。






最終更新日  2022年01月15日 10時59分18秒
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2022年01月11日
「楠勝平コレクション」山岸涼子・編 ちくま文庫

昭和マンガのアンソロジーを刊行し続けてきたちくま文庫が、満を持して個人コレクションを立ち上げ「楠勝平」を最初にとりあげた。当然の選択だろう。

【内容紹介】
1960年代後半から70年代初めの騒然とした時代、実験作が覇を競った『ガロ』。その片隅で、人の世のはかなさ、江戸庶民の哀歓をみずみずしく描き、迫り来る死をも凝視して逝った幻の作家。同時代にその息吹にふれ、市井の人々へのあたたかな眼差しに魅了されてきた作家が編む、珠玉の文庫オリジナル・傑作選集。【収録作品】「おせん」「茎」「梶又衛門」「鬼の恋」 他 

著者について
楠 勝平(くすのき・しょうへい) 
1944年、東京に生まれる。中学の頃より心臓弁膜症を患う。15歳のとき貸本マンガ「必殺奥義」でデビュー。白土三平、水木しげるらが常連の短編誌『忍法秘話』に作品を発表する一方で、同人グループによる短編誌『破―ブレイク』を刊行。その後、白土三平の赤目プロでアシスタントのかたわら、『ガロ』を中心に『COM』や青年劇画誌に佳作を発表したが、病が悪化。1974年、30歳で逝去。 


「山岸涼子と読む」と副題を付けているが、山岸涼子のソレは5頁の解説に過ぎない。それっぽっちの文章では語りきれない「観たことのない世界」が、作品集の中にはある。

最初に出会ったのは、青林堂のマンガ傑作集の一巻を古本で買ったものだった(「おせん」)。その頃好きだった山本周五郎の作風に似てはいた。が、明らかにそれとは一線を画す何かがあるとは思っていた。今回30年ぶりに読むと、当時はあまりにも展開が速すぎて汲みきれなかった「おせん」の悲しみも、「ゴセの流れ」のジンの残酷さも、その他多くのことが、今なら想像できる。

山本周五郎作品はテレビドラマにできるが、楠勝平作品の多くはテレビドラマにはできない。「どうして主人公はあんなに豹変するの」「救いが全くない」「話が飛躍し過ぎている」等の苦情が来るのが必至だからである。場面転換の鋭さ、下町景色の再現度の高さ、隠しきれない叙情、なによりも自らの死を意識している者だけが描ける世界を描いて、おそらく唯一無二の作品群だと思う。

今までの単行本は3冊のみ。いずれも限定発行か絶版。この普及版の発行が、楠勝平再評価の決定打とならんことを祈りたい。楠さん、貴方の生命削った作品群はどのような目に遭おうとも決して埋もれるべきものではないのだから。多分、「梶又衛門」「鬼の恋」は単行本初収録。






最終更新日  2022年01月11日 20時12分04秒
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2022年01月10日
テーマ:本日の1冊(3600)
「フーガはユーガ」伊坂幸太郎 実業之日本社文庫

「僕の喋る話には記憶違いや脚色だけじゃなくて、わざと嘘をついている部分もあるので、真に受けないほうがいいですよ」
伊坂幸太郎はエンタメ作家である。
ちょっとトボけて、ちょっと優しく、それでいて不思議な主人公が出てくるのが特徴である。
リアルな現実を描きこみながら、一つの嘘を紛らわすことでしか、真実を描けないことがある。
歴史家には出来ない。小説家にしか出来ない。
それがエンタメの役割だろう。

いっときはブンガク者になろうとした時期があったような気がする。伏線回収を行わず、ディストピア作家になろうとした時期があったような気がする。でも最近は吹っ切れて、読者が望む小説家になろうとしてるかのようだ。
曰く。魅力的なキャラ。伏線回収。アクション。勧善懲悪。笑って泣ける小説。でも寅さんじゃないけど、笑って泣ける話ほど難しいものはない。

「嘘をついているー」もそうだけど、前半から新幹線にしろ、ボウリングにしろ、ワタボコリにしろ、そして章立てに使われた熊のぬいぐるみにしろ、伏線アリアリ。お陰で半分予想がついた、と同時に1/4はビックリした。そして1/4は途轍もなく寂しくなった。

閑話休題。
フーガとユーガは双子の兄弟。同時にひとつだけ「現実離れした能力」を持つ、そして「辛い現実」を生き抜いてきたバディである。そんな2人の2010年代の物語。正月の一気読みでした。






最終更新日  2022年01月10日 21時33分40秒
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2022年01月09日
カテゴリ:洋画(12~)
12月に観た映画の最後の2作並びに2021年のベスト10を発表します!

「マトリックス レザレクションズ」
恐ろしいことに、20年経っても全く同じことを、まるで猫の「デジャヴ」のようにやっていた。反対に言えば、20年前から仮想現実の話を作ろうとしたら、アレ以上のこと(当然少しは変化はある)が出来ないのだということを証明してしまった。

キアヌ・リーヴスもキャリー=アン・モスも、20年の歳だけをとった。それは見事に現れていて、それを記録した作品とも言える。スミスもサイフォスも、代替わりしたのに、である。


STORY
ネオ(キアヌ・リーヴス)は自分の生きている世界に違和感を覚え、やがて覚醒する。そして、マトリックスにとらわれているトリニティーを救出するため、さらには人類を救うため、マトリックスと再び戦うべく立ち上がる。
キャスト
キアヌ・リーヴス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット=スミス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、プリヤンカー・チョープラ・ジョナス、ニール・パトリック・ハリス、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ、クリスティナ・リッチ、(日本語吹き替え版)、小山力也、日野由利加、諏訪部順一、中村悠一、内田真礼、津田健次郎、本田貴子、水樹奈々、間宮康弘、小野大輔
スタッフ
監督:ラナ・ウォシャウスキー
上映時間
148分

2021年12月27日
MOVIX倉敷
★★★


「偶然と想像」
必ず、人生にしても、ドラマにしても偶然がドラマツゥルギーを与える。

監督・脚本家の想像が、ドラマをつくるだけでなく、俳優の想像がドラマを創造する。

極限に限定した設定で、終始彼らにそのセリフを喋らせることで、ひとつの世界が出来上がる。

更に観客が、それを解釈してゆく。

何度も観たい!
そう思わせる、稀有な作品。

特に女優がいい。
古川琴音が全面に出ているが、玄理、森郁月、占部房子、河井青葉が良い。彼女たちになんらかの賞を挙げたい特に森郁月が良かった。

(解説)
親友同士の他愛のない恋バナ、大学教授に教えを乞う生徒、20年ぶりに再会した女友達…
軽快な物語の始まり、日常対話から一転、鳥肌が立つような緊張感とともに引き出される人間の本性、切り取られる人生の一瞬…
小さな撮影体制でリハーサル・撮影時間を充分に確保し、俳優たちの繊細な表現を丁寧に映した。まるで劇中に流れるシューマンのピアノ曲集『子供の憧憬』のように軽やかかつ精緻で、遊び心に溢れた俳優の演技は必見だ。
日本映画の新時代を感じさせる映画体験が、観るものの心を捉えるだろう。
偶然――それは、人生を大きく静かに揺り動かす

第一話 魔法(よりもっと不確か)
 撮影帰りのタクシーの中、モデルの芽衣子(古川琴音)は、仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)から、彼女が最近会った気になる男性(中島歩)との惚気話を聞かされる。つぐみが先に下車したあと、ひとり車内に残った芽衣子が運転手に告げた行き先は──。

第二話 扉は開けたままで
 作家で教授の瀬川(渋川清彦)は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木(甲斐翔真)の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しに。逆恨みをした彼は、同級生の奈緒(森郁月)に色仕掛けの共謀をもちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。

第三話 もう一度
 高校の同窓会に参加するため仙台へやってきた夏子(占部房子)は、仙台駅のエスカレーターであや(河井青葉)とすれ違う。お互いを見返し、あわてて駆け寄る夏子とあや。20年ぶりの再会に興奮を隠しきれず話し込むふたりの関係性に、やがて想像し得なかった変化が訪れる。

2021年12月30日
シネマ・クレール
★★★★


2021年Best10 

1.「シン・エヴァンゲリオン」
2.「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」
3.「コレクティブ 国家の嘘」
4.「デューン 砂の惑星」
5.「すばらしき世界」
6.「花束みたいな恋をした」
7.「サマーフィルムにのって」
8.「グレタ ひとりぼっちの挑戦」
9.「アオラレ」
10.「21ブリッジ」






最終更新日  2022年01月09日 08時29分03秒
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