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2023年11月08日
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テーマ:本日の1冊(3671)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
![]() 「キリヒトにはマツリカの脳髄の中に、取るに足りない断片を引き寄せて一つの物語に組み立てていく強力な磁力の力の中心とでも言ったものがあるように思える。マツリカの頭の中に吹き寄せられた知識の断片は、その強力な磁場の中で整序され、それぞれ所を得て配列され、有機的に組織づけられてさらに巨大な知恵に織り上げられてゆく。 それはまさしく図書館の似姿だった。マツリカの中に図書館がある。いやマツリカこそがひとつの図書館なのだ。」 最終巻は、全4巻の中で最大長編なのだが、大どんでん返しもなく、これまでの展開を粛々と畳んで行くのに過ぎないように、私には感じられた。 確かに幾つか明らかになったことはあるけれども、なくても物語全体には大きな影響はない。1番描きたかったことは、既に描き切れていたからである。それが、冒頭抜き書きしたキリヒトのマツリカに対する評価である。 一見すると、ここで描かれているマツリカは現代のAIのようでもある。でもそれは「人間の姿をしたAI」ではない。「AIの能力を持った人間」として描かれる。それは同時に、言語学者としての著者が「現代の図書館を最大限活用したならば、貴方もマツリカになれるよ」というメッセージなのだろう。 そのためには、人間としてのマツリカを、そしてそれを補佐する「高い塔=一ノ谷の図書館」のスタッフたちの人間性を描かなければならなかった。そのための物語だったのだろうけど、私が編集者ならば枚数を半分にしろと言ったと思う。エンタメとしてのスピード感がなかったからである。綿密に作り上げられた世界観を持った上橋菜穂子のデビュー作「精霊の木」は、編集者により3/4に削られた。 更には、ファンタジーとしては世界観が未だ不十分。現代図書館の知識を十二分に応用したいという気持ちはわかるが、産業革命が未だ達成されていないのに、冒頭抜き書きにあるように、キリヒトが19世紀に確立した「磁力理論」に精通しているという設定はなんなの?とは思う。一事が万事。方々に出てくる難しい言葉は、「検索」すれば出てくるので、私は驚かない。著者が図書館の中の「(知識を)その強力な磁場の中で整序され、それぞれ所を得て配列され、有機的に組織づけられてさらに巨大な」物語を作ったのはわかるにしても、それをパラレルワールドとして成立させるだけの説得性が、未だこれほどの長編の中に感じられない。全く違う歴史過程で作られた世界ならば、そこまでは言わないけれども、この世界はあまりにも私たちの世界と似過ぎているので、大変気になるのである。 ‥‥厳しいことを書いてしまったが、 冒頭抜き書した著者の「メッセージ」には、大いに共感する。 主人公を、「言葉を発することはできないけれども、豊かな言葉を持ち」「その言葉を武器にして世界と渡り合う」「10代の少女」に設定し、それを補佐する者も、「10代の少年」に設定したのも、大きなメッセージを持っていて共感する。 あえて言えば、「究極の問い」は、こうだったのかもしれない。 図書館の中の「言葉」によって 未来をつくることはできるのか。 とりあえず、この物語の中では出来た。 そこは良かったと思う。
テーマ:本日の1冊(3671)
カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
![]() もうね、何処を開いても面白い。試しに、適当に開いてみました。 ◯「ダンゴムシとワラジムシ」(84p) うーむ、困った。面白くないのではなくて、全部面白い。出来たら全文書き写したい。 ゴメン、この調子でレビューするとものすごく長くなりそう。でも、私が「好きで」「後学のために」記録しているので、全部読まなくていいですからね。では、面白かったところの一部をメモ。 ⚫︎ダンゴムシもワラジムシも名前はムシになっていますが、虫(昆虫)ではなく甲殻類に属し、エビやカニの仲間です。 ⚫︎男女を問わず幼児に1番人気がある「虫」がダンゴムシです。「丸くなる」というのが、幼児にとってはチャームポイントとなるのでしょう。つまもうとしたら、くるっと丸くなるお菓子を発売したら、子どもに爆発的に売れるかも知れません。 ⚫︎ダンゴハムシには「交替性反応」といって、障害物にぶつかって最初に右に曲がった場合は、次にぶつかると左に曲がり、次は右に、次は左に‥‥という具合に、左右交互に進路をとる性質があります。もし障害物にぶつかるたびに同じ方向に曲がっていたら、ぐるっと一周回ってもとの場所に戻ってきてしまいますが、この性質により、敵に遭遇して逃げるときなど、より遠くに逃げることができます。 ⚫︎ワラジムシも足は7対ですが、ダンゴムシに比べて平べったい体をしています。ヨーロッパ原産の外来種です(はるばるヨーロッパからやってきて、日本で「草鞋を脱いだ」次第です)。こちらも石や床の下など湿ったところに住んでいて、ひの当たらない便所のあたりにうろちょろしているのが散見されるので、別名「便所虫」などありがたくないニックネームで呼ばれることもあります。両者ですが、ワラジムシはダンゴムシと違って、驚いても丸くならないので直ぐ区別できます。 ◯ムササビとモモンガ(12p) ⚫︎ムササビもモモンガも漢字では「鼯」(←鼠編に吾!)と書くことから、昔は両者を区別していなかったことがわかります。区別するようになったのは、明治時代になってからです。 ⚫︎ムササビもモモンガも「飛ぶ」のではなく「滑空」 します。哺乳類で飛ぶ(翼をバタバタさせる)ことのできるのはコウモリだけです。 ⚫︎彼らは決して地上には降りません。「ちょっと喉が渇いたので、地上に降りて岩の間から滲み出る湧水をごっくん」なんてことはありません。水分は食料に含まれる水分や夜露で補います。まさに完全な樹上生活です。人間の社会では「しっかりと足をつけて」などと諌めたりしますが、彼らは子どもを何と言って戒めているのでしょうか。 ◯アフリカゾウとアジアゾウ(15p) ⚫︎ゾウの中でも、アフリカゾウは現存する陸上動物の中でも最大で、オスには体重8tに達するものもいます。その大きな体を維持するために食べている量は1日に150キロくらいで、食事時間は10時間以上です。そしてウンチの量は一日に75キロ。じつにダイナミックです。 ⚫︎1日に10時間も草を噛んでいたら、歯も摩滅してしまうのでは?と心配になりますが、好都合なことに臼歯(奥歯)は摩滅すると、6回も生え変わります。一本の臼歯の重さは約3kg。 ⚫︎アジアゾウはアフリカゾウに比べると体も耳も牙も一回り小さく、メスの牙は外から見えません。サーカスで芸をするゾウは、アジアゾウと思ってまず間違いありません。 ⚫︎象という字は典型的な「象」(しょう)形文字で、まさに象(かたど)られたものです。ゾウと呼ぶのは漢語の「象」の呉音が「ゾウ(ザウ)」に由来します。寿命は60-70年です。 ◯ミーアキャットとプレーリードッグ(29p) ⚫︎ミーアキャットはアフリカ南部の平原や砂漠に住んでいます。日光浴が大好きで、朝は並んで日光浴をする姿が見受けられます。「キャット」と名付けられていますがネコの仲間ではありません(マングースの仲間)。岩場などに10-15頭の群れで暮らし、昆虫や小鳥を食べる肉食動物です。 ⚫︎プレーリードッグは北アメリカの草原に住んでいます。「ドッグ」と名付けられていますが、犬の仲間ではありません(リスの仲間)。犬に似た鳴き声をするのでこの名になりました。 ◯ニホンリスとタイワンリス(30p) ⚫︎ニホンリス、タイワンリスともに体は濃褐色なのですが、腹部を見るとニホンリスは純白なのですぐに見分けられます。また、餌を食べている時の尾っぽを見ると、ニホンリスは太い尾を背中に乗せていますが、タイワンリスは尾はだらりと垂らしたままです。 ⚫︎野外(特に市街地)で見かけるのは、間違いなくタイワンリスです。ニホンリスは四国・九州の亜高山地帯に住んでいて滅多に人前に姿を見せることはありません。一方タイワンリスは観光地や住宅に住んでおり、人間の与える餌に寄ってきます。与えられた餌を両手で挟んでモグモグタイム。 ⚫︎「リス」の名は「栗(を食べる)鼠」という「栗鼠(りっそ)」が転嫁したものです。 ←台湾でたくさんタイワンリスを見た。台湾のみかとおもいきや、日本もミャンマーやマレー半島にも生息域を広げて害獣対象にもなっている、とのこと。そういえば韓国でも南部の住宅地で見たことを思い出した。 ◯カブトエビとカブトガニ(54p) ⚫︎両者共にエビやカニの仲間ではなく、古代三葉虫から進化した仲間。カブトエビは3億年、カブトガニは2億年、姿や形を変えずに生きてきたため「生きた化石」と呼ばれる。では、3億年変えていないゴキブリは生きた化石なのでしょうか?残念ながらそうは呼びません。「生きた化石」という呼称は数の少ないものに限られています。 ←岡山県笠岡湾のカブトガニはいっとき絶滅したと言われていた。もしかしたら地球上で、1番生命力が強いのは、人類ではなくゴキブリなのかもしれない。 ◯イカの墨とタコの墨ってどうちがうの?(58p) ⚫︎イカの墨は粘り気があるので、直ぐに固まってしまいます。敵が近づくとイカはポッポッといくつもの墨を吐きます。敵にしてみれば、一匹のイカを追っていたはずなのに、突然目の前に現れた複数の黒い物体(イカ)に面食らい、頭がパニック。手当たり次第に黒い物体に襲いかかっては「ん?これではない」「ん?これでもない」と歯軋りする敵を尻目に、イカはまんまと逃げおおせます。まさに「分身の術」と言ったところです。 ⚫︎一方、タコの墨は粘り気が少なく、さらさらして海中で勢いよく広がります。急にあたりが真っ暗闇になり、敵にとっては突然停電が起きたような状態で、何が何だかわからなく戸惑ってる間にタコはドロンします。 ⚫︎イカ墨のスパゲッティはありますが、タコ墨のスパゲッティはありません。 ⚫︎タコやイカの墨を墨汁代わりに字を書くことはできますが、真っ黒な字を書くことはできません。どうなるかというと、茶褐色になります。タコやイカの墨はメラニン色素であり、メラニン色素はタンパク質なので、時間が経つと腐敗します。そのため長持ちしません。 ⚫︎「いかさま」という言葉がありますが、これはイカで書いた証文が数年経つと消えてしまうことから「イカ墨」が訛ったものです。 ◯フグとハリセンボン(79p) ←フグの雑学には、ミステリで使えそうなネタが山ほどある。 ⚫︎フグ。ふくれるので「ふく」、それがいつしか「フグ」と呼ばれるように。漢字で「河豚」と書くのは、体が豚のように肥大するからとも、釣り上げられたとき、「キー、キー」と豚のような声で鳴くからとも言われています。 ⚫︎フグの毒の成分はテトロドトキシンといい、神経を麻痺させます。毒は主に卵巣や肝臓、皮膚に含まれていますが、この毒は煮ても焼いても分解されません。毒に当たると、早ければ30分、遅いと3時間もしてから症状が現れ始めます。食べた途端に症状が現れるわけではありません。やがて痺れや麻痺、言語障害から呼吸困難に陥り、最悪の場合は死にます。 ⚫︎しかし、フグは生まれながらに毒を持っているわけではありません。稚魚の間は無毒です。フグは海底の土を小さな口で吹き飛ばしながら餌を食べますが、この時海底に住んでいる毒を持つ細菌も一緒に食べてしまいます。その毒がフグの体内に蓄積されるのです。したがって、稚魚の時から人工飼料で養殖されたフグには、毒はありません。 ⚫︎なお、フグ調理師免許は都道府県それぞれの免許であり、全国共通ではありません。そのため免許を取得した都道府県でしか認められないので他県では新たに免許を取り直ししなければなりません。 ⚫︎ハリセンボン。実際のトゲは370本ほどで、名前で言われる半分もありません。毒はありません。 ⚫︎なお、ハリセンボンという名前のカニもいます。ちなみに、指切りの際の常套句「嘘ついたら、ハリセンボン飲ーます」は、この魚やカニを頭から丸呑みさせるという意味ではありません。 ◯みそ汁のアサリの中の小さなカニ(83p) ←こんなに書き写していたら、著作権者から苦情が来そうですが、その時は対処しますので、権利者はお知らせください。もうホントに全部書き写したいほど面白いんです! ⚫︎アサリのみそ汁を食べている際に、時折貝の中に小さなカニが入っていることがあります。カニの子どもと思ってしまいますが、じつはこれは小さな大人のカニで、カクレガニ科に属するピンノというものです。それもメスです。 ⚫︎ピンノのメスは、生まれるとすぐに二枚貝の中に入ります。そのあとは一生そとに出ることはありません。貝の中にいることで、敵には見つからないし、貝が吸い込んだプランクトンを横取りできるので、食べるのにも困りません。自分で働く必要もなく、毎日「食べては寝て」の怠惰な生活を満喫(?)しています。怠惰な生活(寄生生活)のため、色素や体表面の石灰質までもが退化してしまい、体は白く甲羅もやわらかくなっています。 ⚫︎オスはどうしているのかというと、オスの体はメスの1/3ほどの大きさしかなく、開いた貝のわずかなすきまから自由に出入りできます。それでオスは繁殖期になるとその小さな体をフル活用して、手当たり次第に貝を訪問し、引きこもっているメスに出会うと「オー、ベイビー!ずいぶん探したゼェ〜い」と繁殖に励みます。メスは貝の中で卵を産み、卵からかえった幼生は「バイなら」と言い残して(これも既に死語でした)、貝の出水管から外に出ていき、メスはほかの貝に入水管から無断侵入してそのまま居座ってしまいます。 ⚫︎アサリの中に入っているのはオオシロピンノ、ハマグリの中に入っているのはマルピンノです。シジミの中にもシジミピンノがいることがありますが、きわめて珍しいことです。 ◯カモメとウミネコ(110p) ⚫︎カモメの嘴は全面黄色で、ウミネコは先端に赤と黒の模様があります。尾羽はカモメは全面真っ白ですが、ウミネコの尾羽には黒くて太い帯があります。 ⚫︎カモメ(鴎)の若鶏には褐色のマダラがあり、これを「籠の目」の模様に見立て「カモメ」と名付けられたとも、あるいは小さい「カモ」のようであることから、ツバメ、スズメと同じ小鳥をあらわす接尾語「メ」を加えて「カモメ」と名付けられたともいわれています。 ⚫︎ウミネコ(海猫)は「ニャオー、ニャオー」とネコソックリな声で鳴きます。ウミネコは世界中で唯一日本とその周辺地域だけに繁殖している鳥です。 ⚫︎ユリカモメ(百合鴎)は日本には冬鳥として飛来します。ユリカモメは別名「ミヤコドリ(都鳥)」と呼ばれ、東京都の鳥(都鳥)となっています。しかし、ミヤコドリという別種の鳥がいて、混乱してしまいます。つまり、東京都の鳥(都鳥)は「ミヤコドリ」なのですが、ミヤコドリではなく「ミヤコドリと呼ばれている鳥」というややこしさです。 ◯以下、まぎらわしい名前の生きもの ◯カジカ(130p) ⚫︎魚のカジカ(鰍)は、全長12センチほどのハゼに似た魚です。鰍は鱗がないので体表は滑らかです。水の綺麗な砂利ぞこの川にすみ、主にトビケラやカワゲラなどの水中昆虫を食べます。身の閉まった味。北陸地方の伝統的な川魚料理の主役、ゴリがそれです。ちなみに「ゴリ押し」という言葉は、ゴリを取るために川底に網を当てて強引に進む様子から生まれました。カジカというのは、その味が「鹿の肉」のように美味しい=「河の鹿肉」ということに由来します。漢字では「鰍」と書きますが、これは造字で、早春に産卵したあと餌を十分にとって、秋には丸々と太り、秋が旬となることからです。 ⚫︎カエルの方は一般に「カジカガエル(河鹿蛙)」と表記されます。渓流に住んでおり、体長は5センチほどです。体は緑色を帯びた褐色で暗褐色の斑紋があり、石の上では保護色になっています。日中は川岸の石の下などに潜んでいます。5-7月の繁殖期にオスが岩の上などで「ヒュル、ルルルル‥‥」という美しい声で鳴きます。それが鹿の鳴き声に似てる、河に住む鹿ということから「河鹿」と名付けられました。万葉集にはガエルを詠った歌が十数種類あるとのことですが、その全てがカジカガエルのことを詠っています。 ▲遂に字数が5500字ほどになった。キリがないし、一種迷惑なので、この辺りで切る。もし、全部読んだ方はご苦労様でした。 ▲本書はトリビアな情報満載だし、一度読んだらなかなか忘れない書き方なので、初めてのデートや子どもを連れての動物園・水族館などで事前に読んでおけば「パパ!なんでも知ってるんだね!」と目をキラキラさせて尊敬されること必至です。 ▲Kazuさんの紹介。ありがとうございます♪
2022年02月21日
テーマ:本日の1冊(3671)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
![]() 2022年2月x日、プーチンとウクライナ大統領と日本の◯◯は三者会談を行なっていた。今や世界の火薬庫と化したウクライナ危機を回避するためである。憲法9条を擁し、かつて世界中の平和の権威を持っていた日本は、とんでもない提案をした。それは、ロシア、ウクライナ、西側諸国全てに利益が上がる、三方両得とも言える提案であった。 とまぁ、「図書館の魔女(3)」はこんな粗筋である。プーチンが「ニザマ帝」、ウクライナが「アルデイッシュ」であるのはわりとうまく嵌ったと我ながら思うが、流石に日本が「高い塔」のメンバーたちというのはあり得ない(←自国なのに、このように断言できることがちょっと悲しい)。でも、現実の戦争も小説内の戦争も、人・物の消失、物流の停滞からくる狂乱物価、そして将来への禍根しか残さない。なんとか避けてほしい。現代に「図書館の魔女」がありましからば。 ここまではおそらく起承転結の「転結」直前、だと思えるので、改めて作品世界の設定について感想を述べたい。 舞台は、産業革命も未だ起きていない、西洋と中東、中国を一緒にしたような「世界」。活版印刷は始まったばかりののようだから、図書館に集められる本は文字通り当時の知識の集積場である。その割には、医学や心理学等の知識は近代・現代に近づいている。条約が国の行動を縛る世界というのは、もはや現代国家の姿と言ってもいいかもしれない。キリスト教こそ出てこないが、ソロモン伝説や菩薩信仰、麒麟伝説などは存在する。「海峡地域」は、中心地たる「一ノ谷」を挟んで、現代グローバル世界のような一大貿易商圏をつくっている。その一ノ谷が、図書館の魔女たるマツリカの先代・タイキの代に、手紙(交渉)のみで「遂に起こらなかった第三次同盟市戦争」を実現させた。その権威が、軍事力よりも、産業価値よりも「一ノ谷」という国の存立基盤になっている、という奇跡のような「世界」である。図書館の魔女は、いわば電気やAIのない時代に、世界のシンクタンク兼国連事務総長を兼ねている。 いまのところ、作者はウクライナ危機に役立つように世界平和に資する物語を作ろうとしてはいないと思う。それよりも描きたいのはひとえに「図書館の可能性」だろう。 「図書館にいったい何ができるのか」ひいては「(ソロモンや文殊菩薩のような)知恵をどのように集めたら、世界をもっとよくしていけるのか」 もう、そのためだけの小説だろう。 反対に言えば、未来を作るためには、「いま・ここ」だけを見ていてはダメで、古今東西に通じなければいけないよ、というメッセージである。 それを10代の若者マツリカとキリヒト、そして20代の大人の女性ハルカゼとキリンに託したのである。
最終更新日
2022年02月21日 14時57分44秒
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2022年02月19日
テーマ:本日の1冊(3671)
カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
![]() こんな世界が広がっていたなんて! 遂に10倍のルーペを買った。 試しに、いつもびっしり苔が生えているなぁと思っていた樹の表面に近づき覗いてみると、 今まで見ていた濃緑色の模様がなくなり、 一面、花畑のような「朔(さく)」が生えていた。 これだと、彼女の名前も知ることができる。 たぶん68pにある「ヒナノハイゴケ」だろう。 「低地の樹幹で最も普通に見られ、都市部の街路樹にも普通。雌雄同株で胞子散布は主に冬に行う。朔が成熟して帽と蓋が取れると、ルージュを引いたようなくっきりとした赤色の朔の口と朔歯が現れることから「クチベニゴケ」の別名がある」とのこと。 またメモとして「胞子は朔の口からモコモコと盛り上がるように出る。その様子は抹茶ソフトクリームのようで面白い」とある。あと1-2週間しか期間がない。見てみたい。 続け様に家の苔たちを見てみる。そうすると、全部同じように見えていた緑の苔が、全部違う表情を持っていたことがわかる。それと同時に、苔の観察は「かなり恥ずかしい」ということもわかった。宝石鑑定の要領なのでルーペから目を離したら絶対見えない。ルーペは小さいから傍目には「不審人物」のようにしか見えない。 それでも苔観察は、半径数メートル有ればこと足りる。黙って観察せざるを得ないし、コロナ禍では格好の「世界が広がる趣味」ではある。さぁやるぞー、と言ったところで、本の貸借期間が過ぎる。あと2週間借りれない。気に入った図鑑は嵩張るけど買うことに決めた。検索と要覧では、電子よりも紙の方が圧倒的に便利だということもわかった。 苔たち、また会いにくるからね。
最終更新日
2022年02月19日 13時31分55秒
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テーマ:本日の1冊(3671)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
![]() 上下巻の上巻後半にあたる本巻、少し安心した。蘊蓄話で終始するかと思いきや、巻末で思いっきりエンタメに振ったのである。 ひとつの「会話」から、鮮やかな「展開」が描かれ、畳み掛けるように「危機」が訪れ、それを思いもかけない方法で「回避」する。当然、世の事象を見事に分析することができるのが「高い塔」スタッフなのだから、前半部分で細かく張り巡らされた伏線は、多くは回収される。 さて、ここまで読んできても未だ私は、この作品が何を描きたいと思っているのか測りかねている。「いや、普通にわかるでしょ?図書館の魔女が実現する世界の平和しょ」と言われるのを承知で言う。 もしそうなのだとすれば、今のところ、権謀術数でしか平和は訪れない、となる。 そもそも、この世界は著者の思うようにつくっているのだから、将棋の棋譜を完璧にすることは容易くはないが可能だろう。 著者の描きたいのは「世界の平和とは何か」ではない、と今のところ思う。 後半に期待したい。
最終更新日
2022年02月19日 13時29分47秒
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2022年02月18日
カテゴリ:読書フィクション(12~)
![]() 最初は単なる性役割分担批判のマンガだと思っていた。 たくさんご飯を作りたい野本さんが登場する。料理が好きで、SNSで料理欄も設けている。でも「良いお母さん」「良い妻」になるために作っているわけじゃない。「自分のために好きでやってるもんを、全部男のために回収されるの辛い」と感じる野本さんであった。 その彼女に、住んでるマンションの隣に月に7-8万もの食費を使わないと食欲が収まらない「食べたい女」がいることが判明する。2人の利害は一致して、「作り、豪快に食べてくれる」生活が始まる。 女性同士だけど、美味しく食べてくれる、いろんな思いやりを示してくれる、そんな相手がいる、これがこんなにも嬉しいと野本さんは気がつく。 2巻目で、それが「恋心」に発展するのである。 まさか、この作品がBLならぬGL(ガールズラブ)の作品とは思わなかった。未だ2巻。未だ野本さんの片思いで、GLは成立していない。果たしてどこまで行くのか。注目したい。 「このマンガがすごい」オンナ編第2位。
最終更新日
2022年02月18日 19時31分45秒
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カテゴリ:読書フィクション(12~)
![]() マンガ好き800人が選んだ「このマンガがすごい2022」において、「オンナ編第一位」になった本書を読んでみた。夫と死別した68歳女性が、美大映像科に途中入学して映画を作り始める物語。 まだ一巻しか出ていない。私は「このマンガ」や「マンガ大賞」の上位に入った作品はチェックしている。そういう意味では小説と違って流行を追っている。マンガは時間的にそれが可能だからしているので、必ずしも賞をとった作品が総て素晴らしいとは思ってはいない。 画は構成から光線の使い方からとても映像的で、若い作家なのに申し分はない。還暦すぎて再出発は、流行りに乗ったのがもしれないし、切実なテーマが立ち上がるのかもしれない。まだ始まったばかりでなんとも言えない。この賞は、ある程度玄人読みする人が選んでいるだけあって、期待値で賞を取らせたのかもしれない。 (自分は)「映画を観る側」ではなく「作る側」なのかと気がつく主人公。そういう気持ちは、私はとっても共感する。私のレビューなんて、いつも大抵は「作る側の立場」で書かれている。気がついている人もいるとは思いますが‥‥。 まだ始まったばかり。ホントに評価すべきなのは「これから」である。
最終更新日
2022年02月18日 19時28分49秒
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カテゴリ:読書フィクション(12~)
![]() 「このマンガがすごい」オトコ編第4位。3巻まで一気読み。学園ラブコメ兼、オカルト兼、霊力取り込み変身モノ兼、超能力バトル兼、SF兼‥‥。編集者の作品紹介を借りれば、「怪異とバトルと恋が暴走中」!! 基調はラブコメなんだろか?オカルトなんだろか?それを保証する作者の画力は、驚く他はない。冨樫義博と藤田和日郎と吾峠呼世晴を足して三で割ったような、詰め込み方と描き込みとPOPさとスピードを持っている。あとはテキトーに恋と友情と勝利と「」付き努力とセクシー場面が描かれる。「楽しいマンガを見せたい」という気持ちはヒシヒシと感じるものの、弱点は、最終的には何を描きたいのか、全然見えてこないこと。むしろ、ダリのようなシュルリアリスムな世界を狙っているのだと言われた方がスッキリするけど。そんな難しいことは全く考えていないっぽい。 むしろ、若い人からは 「そんな難しく考えなくて、良いんじゃね?楽しければ、良いんじゃね?」 と言われそうだ。 ‥‥マンガって、むかしからそんなモンだろ? うーむ、上手く言えないけど、そんな作者は直ぐに飽きられると思うんだ。
最終更新日
2022年02月18日 19時26分12秒
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テーマ:本日の1冊(3671)
カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
![]() 今回、ネットカフェで集中して読書した。上位に入ったオトコ編4位、オンナ編1位、2位をチェックした。私は加藤周一の指摘を守って、文学は流行を追わないことにしている。人生は短く人生で読める本の数は限られているからである。よって、本屋大賞を流行世界の窓としている。ただし、マンガはもう少し間口を広げている。小説よりも速く読めるからである。 「このマンガがすごい」賞は、マンガの直木賞というべき、玄人読みが選ぶマンガの大衆賞と、私は位置付けている。直木賞と同じように、此処に選ばれているからといって、私がその年のマンガ作品ベストだと思っているわけではない。証拠に「進撃の巨人」最終巻などはオトコ編16位になっている。私は昨年出たマンガの中でベスト5に入る作だと思っていた。「きのう何食べた?」「ゴールデンカムイ」はノミネートから外れた。どうやらこの賞は、新しい方向性を打ち出したマンガに敏感に反応するようだ。『チ。-地球の運動について-』については、今回一通り読んだのだけど、まとめる時間がなかった。かなりの力作ではあるが、またの機会にレビューしたい。「ルックバック」「怪獣8号」「女の園の星」は既に評している。 もっとも、マンガの良いところは「多様性」にあるわけだから、私の意見も「多様性」のひとつに過ぎない。 それぞれの1位の作者には、スペシャルインタビュー記事が載っている。それは滅多にない作者の生の声なので、貴重だろう。 「ルックバック」(昨年12月にレビューした)の藤本タツキは、主人公2人のうち、藤野の方は自分がモデルだと認めていた。アシスタント時代の龍幸伸(「ダンダダン」)の絵もあるそうだ。「海が走るエンドロール」のたらちねジョンは、編集者主導のテーマ決定だった。 以下参考までに、今年のオトコ、オンナ上位10人までをメモする。 オトコ編 ★ 第1位 ★ 『ルックバック』 藤本タツキ(集英社) ★ 第2位 ★ 『チ。-地球の運動について-』 魚豊(小学館) ★ 第3位 ★ 『怪獣8号』 松本直也(集英社) ★ 第4位 ★ 『ダンダダン』 龍幸伸(集英社) ★ 第5位 ★ 『東京ヒゴロ』 松本大洋(小学館) ★ 第6位 ★ 『葬送のフリーレン』 山田鐘人(作)アベツカサ(画)(小学館) ★ 第7位 ★ 『【推しの子】』 赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社) ★ 第8位 ★ 『トリリオンゲーム』 稲垣理一郎(作)池上遼一(画)(小学館) ★ 第9位 ★ 『ペリリュー 楽園のゲルニカ』 武田一義(著)平塚柾緒(太平洋戦争研究会)(協)(白泉社) ★ 第10位 ★ 『ダーウィン事変』 うめざわしゅん(講談社) (オンナ編) ★ 第1位 ★ 『海が走るエンドロール』 たらちねジョン(秋田書店) ★ 第2位 ★ 『作りたい女と食べたい女』 ゆざきさかおみ(KADOKAWA) ★ 第3位 ★ 『大奥』 よしながふみ(白泉社) ★ 第4位 ★ 『うるわしの宵の月』 やまもり三香(講談社) ★ 第5位 ★ 『女の園の星』 和山やま(祥伝社) ★ 第6位 ★ 『ブランクスペース』 熊倉献(ヒーローズ) ★ 第7位 ★ 『かげきしょうじょ!!』 斉木久美子(白泉社) ★ 第8位 ★ 『しあわせは食べて寝て待て』 水凪トリ(秋田書店) ★ 第9位 ★ 『ブランチライン』 池辺葵(祥伝社) ★ 第10位 ★ 『ミステリと言う勿れ』 田村由美(小学館)
最終更新日
2022年02月18日 16時22分22秒
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2022年02月12日
テーマ:本日の1冊(3671)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
![]() 「図書館こそ世界なんだよ」 という図書館の魔女こと10代の少女マツリカと、 その司書兼通訳兼秘書たる3人の若者が 世界と対峙する、というお話なのかな。 始まったばかりなのでよくわからない。 この作品を多くの人はファンタジーという。 私がファンタジーに求める条件は2つ。 物語の始めから既に世界は作り込まれ、出来上がっていること。 究極の問いが発せられ、作者が作った世界内だからこそ、鮮やかな解決で終わること。 細かな描写は、かなりこなれていて存在感がある。 食べ物や地下水道など。 でもそれらは、中世から近代にかけたヨーロッパの文献から拾ってきたもののように感じられ、世界を作ったという感じかまだしない。お約束の「架空の地図」が提示されているが、「風の谷のナウシカ」や「守り人シリーズ」を想起するような地政で、まだ「おゝ」というような作り込みを感じられない。むしろ、ナウシカの「火の7日間戦争」が起きる前の世界のような気さえする。だとしたら興奮する(王蟲を作り出した知恵が図書館から発したのだとしたら‥‥)のだが、その段階まで至るにはこの時代から少なくとも数百年は必要なので関係はない。 究極の問いは未だ発せられていない。 よく考えたら、上下巻の未だ上の半分を読んだだけなのだ。もう少し読んでいこうと思う。
最終更新日
2022年02月18日 16時23分46秒
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