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2008年12月07日
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カテゴリ:加藤周一
加藤周一氏には一度だけ会ったことがある。もう15年ほど前だったと思うが、地元の団体が加藤周一講演会を企画したのである。ところが、その講演会にどうしても参加できない用事があった。嘆いている私を哀れに思って、その講演会を企画したメンバーの一人の女性がそのあとにあるレストランでの懇談会にもぐりこませてくれるというではないか。もちろん私はいちもにもなく頷いた。

寒い日だった。今はもう店はないが「サヴォイ」というフランス風レストランに現れた氏は黒のタートルネックセーターにウールの紺の背広を着ていたと思う。氏はいつもネックセーターであり、決してネクタイは締めなかった。氏は最初に見たときには、背を丸めたよぼよぼの老人であった。ところが、歓談は10人ほどで始まり、みんなが講演会の感想を述べだすと、突然と背は伸び表情は引き締まり、氏はそのひとつひとつに見ようによっては非常に怖い目をして真剣に聞いていた。そして、氏のコメントはその場でも古今東西に及んだ。どうしてとっさにあんなに頭が回るのか、「そのことについて問題点は三つほどあると思います」と言って第二の講演を聞くが如しだった。目の前に起こることが信じられない想いだった。老人とはとんでもない、ひとりの日本を代表する知性がそこに座ってた。私はあれも聞きたいこれも聞きたいということがあったのであるが、自分の番になると頭が真っ白になってしまい、なんかとんでもないことを言ったようである。おそらく正直に最初老人だと思ったこと、話を聞くとやはり凄い方で、本当に尊敬していること、氏は日本は集団的競争主義社会で閉鎖的だといっていますが、そういう日本が民主的になるにはどうすればいいのか、けれども氏はそうは言ってももうお年であり、これからの若い人間が頑張らなくてはならないこと、等々言ったのではないか、と思う。私を無理言ってこの場に座らせてくれた女性は私をきっとにらみつけたが、後の祭りであった。氏は悠然と微笑み「その通りです。私の先はたぶんもう長くない。知りたいこと、したいことは多く、人生は短い。だからこそ、私は若い人たちに期待しています。今出来るだけ若い人たちと語り合いと思っている。私は日本の未来を悲観していない」およそこんなことを言ったような気がする。氏はその言葉をその場限りの言葉で言ったわけではなかった。その後精力的に講演会に出かけ、対話本、講演本は10冊以上を数え、「居酒屋の加藤周一」(かもがわ出版)という対話本を作ったり、「テロリズムと日常性―「9・11」と「世なおし」68年 」(青木書店)などの本を凡人会という青年の読書会との共著で作ったりした。今までとは一歩前に進み出て、「九条の会」を創ったのも、そういうことと関係はあるだろう。私を誘ってくれた女性はその後数年間、私と言葉を交わさなくなった。よほど腹に据えかねたのだと思う。本当に申し訳ない。

10年ほどまえに「居酒屋の加藤周一」の仕掛け人の一人であったことを知らずに、京都市長選に出馬する前にある講演会で井上吉郎氏を呼んだ。その後の懇談会で私が加藤周一のファンで著作のほとんどを読んでいると言うと、井上氏は大いに喜び、大いに盛り上がったことがある。私が「大ファンだけれども、批判的に読みたいと思っている」と色々というと、井上氏は「そんな難しいことはいいから、加藤さんの女性関係を調べてくれ。彼の年表を見ても、彼がどんな人と結婚しているかわからないだろう?」と言ってひとつのヒントを呉れたのではあるが、「私の専門は思想史であって国文学ではないので、そういうことはちょっと‥‥‥」とむべもなく断ってしまった。人を思いやる回路が欠落しているのが私です。

加藤周一の研究本は丸山真男のそれと比べてあまりにも少ない。これからだろうと思う。






最終更新日  2008年12月07日 14時46分10秒
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