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カテゴリ:読書(09~ノンフィクション)
![]() 掲載誌のせいか、少し共産党の評価が甘すぎるとは私も思いますが、おおむね納得の出来る分析でした。「民主党の多面性をどのように評価し、どのように対処したらいいのか分らない」と戸惑っている人が多いと思いますが、これは見事な指針になりうると私は信じます。わざわざ全文を時間をかけて打ち込んだのは、巷にあるそのような想いに対してヒントになるのではないか、それ以外の意図はありません。無断使用の不都合があればすぐに対処しようと思います。 「学習の友春闘別冊号」 「どう考える、新政権誕生と政治の動き」 1.新しい政治の第一歩は始まった 09年8月30日の総選挙で、自民両党は大敗北し民主党が大勝した結果、鳩山政権が誕生しました。 民主党を大勝させた主足る力は、自公によって推進された構造改革の政治に対する怒り、構造改革の政治を止めてもらいたいという声でした。構造改革を止めろという声が政治を変えた点で、日本が新しい政治の第一歩を踏み出したことは間違いありません。 しかし、この第一歩は、決して構造改革が破綻したとか、終焉したという単純なことではありません。むしろ構造改革の政治を変える潮流とそれを再編維持しようという力が激しく闘う時代がやってきたという意味で「第一歩」なのです。 以下なぜそうなのか検討し、新たな情勢の下での労働組合の役割を考えましょう。 2.総選挙は構造改革反対の声が自公政権を押し流した まず今度の総選挙の結果をあらためて簡単にふりかえっておきましょう。 総選挙の第一の特徴は、いうまでも無く反構造改革の声が民主党にという形ではあれ、はっきりと姿をあらわし、自公政権を押し流したことです。 しかし、ここですぐ疑問わきます。もし構造改革批判の声が大きくなったのなら、その声は民主党と同時に、もっと徹底して早くから構造改革に反対し福祉の政治を主張していた共産党や社民党に集まってもよかったのに、実際にはこの両党の得票は伸びなかったことです。これが第二の特徴です。特に共産党は、蟹工船ブームや若者たちの共産党への関心が高まっていただけに、得票率が伸びなかったのは意外です。 この原因は二つあります。一つは小選挙区制中心の選挙制度の害悪です。衆議院家の480の議席のうち、実に300は小選挙区ですが、ここでの定数は一ですから有権者は共産党に投票しても当選しにくいので「次善の策」を考えようとする傾向が強く出るからです。もう一つは、もともと保守政党として出発し自民党と構造改革を競い合う政党として財界に期待され育てられてきた民主党が、小沢代表の下、07年の参院選を前に政策を劇的に転換し反構造改革の声の受け皿になったことです。 民主党が政策を大きく転換した理由の一つは、小泉政権が強行した構造改革の矛盾が爆発し、その害悪が誰の目にも見えるようになっていたことです。小泉政権の末期あたりから、餓死、自殺、就学援助受ける家庭、さらに無保険者の増大などの形で構造改革の矛盾が爆発したために、民主党は自民党に対抗する為には大きく舵をきらざるをえなかったのです。 理由の二つ目は、民主党が小沢独裁であったために、政策論議を封じて反構造改革に舵を切れたことです。 しかし一番大きかったのは、日本はアメリカと違って純粋保守二大政党ではなく、自民党、民主党に加えて、共産党、社民党が常に活動していることです。特に共産党が民主党の左にいて反構造改革の方針を明示していたため、民主党は反構造改革の急進的政策を出さざるをえなくなったのです。 しかし、その結果、皮肉にも民主党が国民の反構造改革の声を総取りすることになったのです。民主党と自民党という保守二大政党の得票が固定化する保守二大政党寡占化の傾向も固定化し、今度の総選挙でも民主党、自民党あわせると69.1%をしめるに至っていることも無視できません。 以上の結果をまとめてみると、今回の総選挙では、国民は構造改革の政治を止めてもらおうという願い自公を政治の座から引きずりおろしはしましたが、しかしその声は、いぜん民主党にとどまっており、その意味で政治の転換の第一歩は踏み出したが、それが第二歩にすすむか、それともまた構造改革の政治に戻ってしまうかは、これからのわたしたちのがんばり次第だということが分かります。 3.民主党政権への相反する期待と圧力 民主党政権には二つの相反する方向の期待がかけられています。 一つは、構造改革をやめ、福祉の政策を実現してほしいという、多くの国民の期待です。 しかし、もうひとつの期待と圧力が民主党に加わっています。それは自民党政権の推進した構造改革と軍事大国化の政治を続けてほしいという、アメリカや財界からの圧力です。 彼らは、民主党政権が構造改革批判の声を受けて圧勝するとことが確実になったころから、民主党が政権に就くことを前提にしてこれを「善導」する方針に変わりました。「現実的政党になれ」という圧力です。 大マスコミもそれにならって、民主党政権に圧力を加える方針に転じました。民主党が総選挙に大勝した8月31日の朝日新聞社説は、「賢く豹変する勇気を持て」と書いたのです。マニフェストに書いてある福祉の政策も、いざ政権に座ったら、気にする必要は無い。現実的に「豹変する」勇気を持てというわけです。 もっと露骨に言ったのが、アメリカの政府高官であったマイケルグリーンです。9月6日付けの読売新聞の論説で、グリーンは「オバマに学べ」と言いました。「民主党はオバマ政権が選挙運動用の美辞麗句を捨て去り、「政権を握ったら話は別」と割り切った先例に学ぶべきだ」というのです。具体的には、普天間飛行場移設問題などで民主党の野党時代の首長は捨てろと要求したのです。 以上が前半です。ここまでならば、わりと一般的な民主党の評価ですが、渡辺論文の特徴は実はこれからなのです。明日に載せます。
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