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2011年02月25日
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カテゴリ:加藤周一
加藤周一氏亡くなって二年、漸くいちファンに過ぎない私の許枕にも立ってくれた。彼は何故か漢文で「胸底有拙文」と謂う。謹んでこれを公表したい。

「丁丑公論私記 2011」
1877年(明治10年丁丑)、西郷隆盛が城山に討ち死にし、西南の役が終わって後、天下の世論は西郷を非難し、屍に鞭打ってやまなかった。そのとき福澤諭吉は「丁丑(ていちょう)公論」を書き、西郷を弁護した(しかし福澤はその稿を秘蔵し人に示さなかった。世間がその内容を知ったのは、1901年2月、福澤の死の前後、「時事新報」の連載による)。

福澤は、なぜ西郷を弁護したのか。維新の功より「古今無類の忠臣」とされていた西郷は、維新後10年、西南の役が起こるや、たちまち「古今無類の賊臣」とされ、新聞紙上の論説は、ことごとく彼を罵詈誹謗して、その状あたかも「西郷に私怨あるものかと疑はるる程」であった。福澤は、これが事実の反するとし「後世子孫をして今日(明治10年)の実況を知らしめ」るために、「丁丑公論」を作ったのである。しかしそれだけではなかった。

西郷に対する世論は、明治10年に豹変した。しかし世論が豹変したのは、それがはじめてではなかった。幕末において薩長は徳川への逆臣とされていたのである。それが維新で変わった。福澤はあらかじめ、そういうこともあったから、西郷のことにもこだわったのである。この「豹変」は時を隔てて、1945年を境にして「神聖にして侵すべからざる天皇」が「人間天皇」になり、「聖戦」が「侵略戦争」にもなった時にもおこっただろう。

1877年の福沢の感懐の背景は、またおおいに2011年のわれわれをとりまく状況に似ている。

去年から今年にかけて、天下の新聞テレビは小沢一郎のいわゆる「政治とカネ」問題をいっせいに攻撃するということがあった。日頃役者や人気歌手の私事の報道に専念してきた週刊雑誌さえも、決然起こって「政治腐敗」を糾弾するがごとく、その状あたかも、福澤流に言えば、小沢一郎にも「私怨あるか」のごとくであった。

不幸にして「政治とカネ」問題は、わが国において新しいことではなく、また小沢一郎に限ったことでもない。たとえば、政権党や野党が企業献金を受け入れて、企業に有利な法律や政策を通したり、それを黙認するようなことがなかったか(それはおそらくあるだろう。もしなければ、財界の懇談会が政党の政策を自らの利益と比べて通信簿をつけるというようなことも起きないだろう)。マスコミの場合は、政府より金をもらい、それによって報道の偏向はなかったか(それもおそらくあるだろう。もしないというのならば、官房機密費が公になったときに、そのことに無視を決め込んだのが、ほとんどの報道機関であったということにはならないだろう)。政治家個人の法律に触れるような所得隠しもなかったろうか(これもあったことが指摘されている)。

そういうことがあったときに、世の報道機関、世間の耳目挙げて、政府・与党・野党・報道機関・大企業の「政治とカネ」問題を糾弾してやまず、数ヶ月間、巷に批判の声が満ちたであろうか。決してそうではなかった。一方に、政権党、野党、政治家、大企業の制度カネにまつわる腐敗があり、他方に一政治家の政治とカネを巡る疑惑があるとしよう。今日のわが国の政治腐敗は、前者は後者の100倍にするに違いない。前者は政府・野党・大企業・の非、後者は一政治家の非。前者の100倍の非に沈黙して、後者の100分の一の非を弾劾してやまないのは、なぜであるか。「大勢に従」ったジャーナリズムにとって、政治腐敗はつまるところ、口実以上のものではなかったのだろう。

福澤が1877年の西郷批判について見破っていたのは、そういうことだろう。それはその時代に限らず、その人に限らない。






最終更新日  2011年02月25日 08時36分59秒
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