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Mechanical Watches~機械式時計の世界~ロレックス、オメガ、IWC、エポス、オリス

機械編

時計の機械に関する解説


下図はアンクル式機械式時計を裏側から見たときの基本構造です(しょぼい絵ですみません・・・)
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                      ※歯車の歯の枚数(ギヤ比)は適当です
○手巻きの場合、竜頭を回すとゼンマイの中心(巻き芯)が時計回りに回転しゼンマイが巻かれます。ゼンマイは常に伸びようとしますので、ゼンマイの外端部が接続されている香箱はゼンマイの力で時計回りに回ろうとし、2番車へトルクが伝わります。これが時計の動力全てになります(ソネリやリピーター、特殊なクロノグラフ等は、それらの機構専用にゼンマイを持っていることがあります)
○2番車は一般的に1時間で1回転するように設計されており、分針を直結させています。時針は2番車から動力をもらって連動しますが、上図では割愛しています。
○3番車は2番車から受けたトルクを4番車へ伝えます。
○4番車は1分間で1回転するように設計されており、秒針を直結させてスモールセコンドにしたり、2番車と同軸に設計または別の歯車を介してセンターセコンドにしたりします。
○ガンギ車は4番車から受けたトルクで回転しようとしますが、アンクルに付いた2つの爪(図中のピンクの爪)がストッパーになっているため、アンクルが動かないと回転できません。必ずどちらかの爪がガンギ車を止め、もう一方の爪は浮いている状態になります。(下図参照)
○アンクルはテンプの軸と振り石の働きにより、テンプの往復運動に合わせて、同じ周期で往復運動します。(下図参照)
○テンプはひげゼンマイ(上図では割愛)により、等時性のある往復運動を繰り返しながらアンクルを往復運動させます。(下図参照)
○アンクルの往復運動によりガンギ車はストップ&ゴーを繰り返すことになります。またガンギ車が進む瞬間、アンクルの爪を押し、アンクルはその力をテンプの振り石に伝えることでテンプに回転力を与えています。(下図参照)
○つまり、ゼンマイを巻くとそのトルクはテンプまで伝わりますが、テンプの振動には等時性があり、テンプが動いた回数分しかガンギ車は進むことができないため、ゼンマイは一気に解けず一定の速度で歯車を進めることができます。
テンプとアンクルの動作説明



<用語解説>
●石(ジュエル)
 時計の構成部品の一つで、回転体(歯車やテンプ)の軸受けや、アンクルの爪などに使用されている宝石のことです。磨耗に強く長持ちするルビーなどの宝石が使用されていることから「石」や「ジュエル」と言われています。主に人工ルビーが使用されますが、高級な時計では天然ルビーを使用したり、最も磨耗し易いテンプの軸受けにダイヤモンドを使用しているものもあります。よく「21石」とか「17J」と表記してあるのがこの宝石の数のことで、一般的には数が多い方が高級ということになりますが、自動巻きでは21、手巻きでは17石もあれば十分です。

●インカブロック耐震装置
 主にテンプの軸(天真)を衝撃から保護する目的で開発された機構です。テンプ以外にもガンギ車等に応用されている時計もありますが、全て軸を保護するために、大きな衝撃が加わった時に衝撃を逃がすための機構です。
 軸受には殆どの場合ルビーが使用されていますが、このルビーを固定するのに金属のバネ状のストッパーが使用され、ルビーは円錐状の窪みにこのストッパーによって押さえつけられて固定されています。テンプ等に大きな衝撃が加わると、ルビーがバネを押して円錐状の接触面を滑って衝撃を逃がします。この構造のことをインカブロック耐震装置と呼びます。

●インナーベゼル
 よくダイバーズウオッチなどに装備されている回転式のベゼルを、風防の内部の収めたもの。ハミルトンのカーキネイビーやIWCのアクアタイマー、ジャガールクルトのマスターコンプレッサーなどが有名です。インナーベゼルの操作は専用の竜頭で行うため、竜頭が一つ余計に付いています。操作時の防水性が気になるところですが、IWCアクアタイマーでは特殊な気密構造で、水中での操作が可能でありながら2000m防水を実現しています。

●コーアクシャル(CO-AXIAL)
 脱進機の一種で、アンクル式に比してエネルギーの伝達ロスが少なく、よって等時性や耐久性に優れると言われ、オーバーホールの間隔を飛躍的に延ばすことができると言われています。アンクル式ではガンギ車との接触は2つの爪ですが、コーアクシャルでは爪が4つ、ガンギ車は2枚あり、接触抵抗を分散することで1箇所当りの摩擦を小さくしています。オメガのHPで構造と動きを動画で見ることができます。

●ジャイロマックステンプ
 パテックフィリップが開発した緩急調節機能付きテンプです。ミーンタイムスクリュー(チラネジ)の代わりに天輪の内側にC型の錘を付けたもので、Cの口が開いた部分を内側に向けると慣性モーメントが増えて遅れ方向に、外側に向けると進み方向に調整できます。ミーンタイムスクリューに比べ、天輪を大きくできるため慣性モーメントを大きくできる、調整が容易、空気抵抗が減り歩度が安定しやすい、などの利点があります。
 
●振動数
 機械式時計のスペックの一つに振動数があり、テンプが振れる速さを表すもので「18,000振動」や「毎秒5振動」と言う表現が一般的です。前者は1時間あたりの、後者は1秒あたりの振動数を指します。但し時計の世界では振動数=Hzではなく、テンプが1往復すると2回ガンギ車を進めるので、振動数は2とカウントされます。ですから「毎秒5振動」の時計のテンプは2.5Hzで往復運動していることになります。
 現在出回っている時計の振動数は、5、6、8、10振動が殆どで、6振動以下のものをロービート、8振動以上をハイビートと呼んでいます。一般的には振動数が多い方が正確になり、振動数が少ない方が耐久性があると言われていますが、実際どちらが優秀かというのはなんとも言えないというのが現状です(作る方にはそれぞれの言い分がありますから・・・)。
 最近ではタグホイヤーが毎秒100振動という驚異的なクロノグラフを発表しました。これはクロノグラフの動作専用に小さなテンプを持っており、通常の時間表示とは別の輪列でクロノグラフを動作させています。

●スワンネック緩急微調整装置
 テンプの振動速度を微調整するための緩急針を調節するための装置の一つです。「白鳥の長い首」をイメージさせる優雅なカーブを描いた金属製のバネで、緩急針を挟んで片側からビスで緩急針を押すことで微調整を行うものです。緩急微調整装置には様々な種類がありますが、かなり古くからある緩急微調整装置にこの「スワンネック」というタイプがあります。最近の時計は別の方式を採用する場合が多くあまり見かけなくなりましたが、名前の由来の通り、調整能力だけではなく外見上の美しさが理由で人気が高い装置です。
スワンネック
 この装置のように、片方からネジで押し、反対から常にバネの力で押さえられている構造は、ネジを押し込む方向と抜き出す方向どちらに操作してもヒステリシスが出にくく、これは微調整を行う上でありがたい機構と言えます。

●ちょうちんひげ
 ひげゼンマイの一種で、縦方向に巻かれ、一見「ちょうちん」のように見えることからこう呼ばれています。現在このちょうちんひげにお目にかかることはほぼないと言っていいでしょう。理由は簡単で、高さ方向に場所をとり過ぎるため、腕時計に採用することが現実的ではないためです。
 かなり古い時代の懐中時計(というか航海用のマリンクロノメーターなど)でしばしば見ることがあります。このちょうちんひげとデテントクロノメーター脱進機を組み合わせることで、文字盤を上に向けたまま衝撃を加えないようにすれば、非常に正確だったらしいです。(かつての航海は時計の正確さが何より重要だった)
ちょうちんひげゼンマイ

●チラネジ
 チラネジとは、テンプのバランスを取ったり慣性モーメントを高めるために、テンプの外周部分に取り付けたウエイト(重り)のことです。これは実物を見れば分るのですが、非常に手のかかる構造で、昔テンプの製作精度が悪かった時にはバランスを取るために必要なものであったと言われています。(緩急調整用のものはミーンタイムスクリューとして別に解説します)
 アンティーク時計には大抵付いています。
 現在は製作精度も上がり、また大変なコストがかかることから、殆どの時計でチラネジは採用していません。たまにチラネジテンプの機械を見ることがありますが、安めのはほぼ間違いなく「飾り」と思われ、恐らくテンプと一体で成型されたものと思われます。一部の高級ブランドでは昔ながらの構造のチラネジテンプを採用したりしてますが、かなり高額なものが殆どです。

●テンプ
 テンプとは中心に軸の付いたリング状の部品で、ひげゼンマイと合わせて規則的な往復回転運動をすることで時計の運針スピードを決定する非常に重要な部品です。
 形は違いますが「振り子」と同じような特性で往復運動するためによく振り子に例えられます。振り子では一定の重力下で竿の長さが変わらなければ振り幅に関係なく周期は一定です。テンプは重力に関係なくひげゼンマイの長さとテンプのモーメントウエイトが一定であれば振り幅に関係なく周期が一定になります。この特性のお陰で主ゼンマイの巻き具合で遅れたり進んだりしないのです。(本当は微妙に影響されますが、その辺は何れ上級編作成時もう少し突っ込んだ解説をしてみたいと思います)

●トゥールビヨン
 機械式時計には必ず生じる、避けることのできない重力による「姿勢差」を補正する目的で開発された機構です。脱進機を構成するテンプ、アンクル、ガンギ車を一つのカゴに収め、一定の速度でカゴごと回転させるという機構で、テンプの廻りをアンクルやガンギ車が回っているように見えます。理論上は、文字盤を立てた状態であればどの方向でも(12時位置が上でも下でも横でも)姿勢差は平均化され、一定の値になります。(但し、かのF.P.ジュルヌ氏曰く、ブレゲがトゥールビヨンを発明したのは脱進機廻りのオイルを全体に潤滑させるためだった、とのこと。CHRONOS 2006.11号より)
 一般的に脱進機を収めたカゴが回転するものを全て「トゥールビヨン」と呼んでいる場合が多いのですが、本来は1分間で1回転する機構を「トゥールビヨン」、1時間で1回転する機構(ユリスナルダンのフリーク等が有名)を「カルーセル」と呼んで区別しています。
 更に近年は回転軸に角度を付けたり、回転軸を2つ設けて3次元的に回転するものなどが開発され、文字盤の向きに関係なく姿勢差を平均化するという超複雑なトゥールビヨンも開発されています。
 しかしながらその複雑さ故、精度を出すのが大変難しく(組み上げるだけでも高度な技術が必要と言われるくらいで)中途半端な機械ではなかなか思った通りの精度が出ないと言われています。ただ視覚的な面白さは抜群で、ファッションとしての「トゥールビヨン」は定着しつつあります。(本末転倒ですな・・・)

●ひげゼンマイ
 テンプを規則的に振動させるための極細のゼンマイのことで、外端はブリッジ側に固定され、内端はテンプの軸(天芯)に取り付けられています。このひげゼンマイがテンプの回転に合わせて収縮と膨張を繰り返すことで等時性のある振り子運動が行われます。「平ひげ」「巻上げひげ」や「ちょうちんひげ」などがあり、それぞれ一長一短があります。

●平ひげゼンマイ
ひげゼンマイのうち、単純な渦巻き状(真横から見ると一直線)のひげゼンマイを「平ひげ」と言います。 平ひげの長所は、製造が比較的簡単であることと、高さ方向に場所をとらないため薄型のムーブメントに適していることです。短所としては、どうしても天芯から見て同心円状に収縮・膨張できないために姿勢差が出やすいことです。しかし近年では外端の曲線形状が改良されてきたことで姿勢差が出にくくなってきているとも言われています。
 現在の腕時計ではほとんどがこの平ひげを採用しています。やはり製造が容易(量産向き)なこととムーブメントの省スペースに貢献するところが大きな理由と思われます。
平ひげゼンマイ

●フリースプラング
 時計の歩度調整の方式の一つで、緩急針を持たない方式のものをフリースプラングと言います。直訳して「自由振動ひげ」とも言います。緩急針が、ひげゼンマイの有効長を変化させて歩度調整する機構であるのに対し、フリースプラングシステムではひげゼンマイに一切触れず、テンプに付いたウエイト(ミーンタイムスクリューなど)の調整により歩度調整する機構です。
 緩急針での調整に比して、ひげゼンマイの膨張・収縮運動に悪影響を与えず、これにより姿勢差や振り角の変化による歩度の変化が出にくいと言われています。巻上げひげと併用することで、一層精度の高い調速装置になります。
ロレックスのCal.31○5系やパテックなどの超高級機、また最近(2000年ころから?)のオメガもフリースプラングを採用しています。

●ブレゲひげ
 同巻上げひげ

●ヘリウムガス排出バルブ
 30気圧防水以上の飽和潜水に対応したダイバーズウォッチに採用される時計の保護装置です。300m以上の飽和潜水では呼吸気体がヘリウムガスと酸素の混合気体になります。ヘリウムガスは分子構造が小さいため、通常の防水機構では防げず時計内部に進入してしまいます。水が入るわけではないので、ヘリウムガスが進入すること自体問題ないのですが、減圧していく過程で時計内部に残圧が残ってしまい、内外の差圧により時計が破裂するということが起きます。時計は外圧に対しては非常に強いのですが、内圧に対してはあまり強くない為です。このトラブルを防ぐために、内圧に対して外圧が下がった時に、内部のヘリウムガスを排出するためのバルブを持たせたものを「ヘリウムガス排出バルブ」と言います。自動的に排出するものと、人が操作して開閉するものがあります。

●巻上げひげ
 「ブレゲひげ」とも言われるひげゼンマイの一種です。名前の通り、かの「アブラアン・ルイ・ブレゲ」が考案したひげゼンマイで、外端部が持ち上げられ、外周より内側に外端があるひげゼンマイです。このひげゼンマイの最大の長所は、ほぼ同心円状に収縮・膨張するため姿勢差が出にくいことです。但し外端部の巻き上げる形状が微妙で、製造が難しいと言われています。また巻き上げた分、高さ方向のスペースをとってしまうのでその分ムーブメントが厚くなってしまいます。
 高級ブランドでは、平ひげより巻上げひげを好んで採用する傾向があります。身近なところではロレックスが最も採用率が高いのではないでしょうか。昔(100年前くらい)の懐中時計をみると、殆どがこの巻上げひげです。
巻上げひげゼンマイa巻上げひげゼンマイb

●ミーンタイムスクリュー
 「チラネジ」の一種というか同じモノとして扱われことが多いのですが、テンプの外周に付けられたチラネジの内、十字方向に4つ付けられたものをミーンタイムスクリューと呼び、緩急(歩度)調整を行うためのウエイトです。ロレックス等で4つだけ付いているのはこちらです。昔の高級な懐中時計などでは、チラネジが金無垢なのに対し、ミーンタイムスクリューはプラチナで、かつネジの部分が長かったりします。



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