|
テーマ:日々自然観察(9846)
カテゴリ:昆虫(カメムシ)
先ず、幼虫を紹介しよう。以前にも書いた様に、このヨモギヒョウタンカスミカメやヨツボシヒョウタンナガカメムシ等の小さなカメムシは、大きさと言い歩き方と言い一見アリの様に見えるものが多い。成虫の場合は、翅があるのでやや平たく見えるからまだ区別が付くが、幼虫は体に丸味があり、本当にアリによく似ている。実際、コナラの葉裏にはアリも来ているので、何度かアリをカメムシの幼虫と間違えた。 成虫の大きさは翅端まで約5mmあるが、5齢(終齢)幼虫では体長約4mm、下の写真に示した若齢幼虫は3mm弱である。老眼鏡を掛けないとアリとの区別は一寸難しい。
さて、次は捕食の様子である。カスミカメムシ科にはイネその他を吸汁して被害を与える農業上の大害虫が沢山居る。しかし、中には専ら他の昆虫を捕食するものも居るし、環境によって食性を変えるものも居る。何れにせよ、口吻を突き刺して唾液を送り込み、相手を消化して汁を吸うのだから、カメムシにとっては大した違いでないらしい。
上が捕食中の写真である。困ったことに、被捕食者が何者なのかが分からない。一見、ヤノイスフシアブラムシ(ヤノイスアブラムシ)の若齢幼虫の様に見えるが、そうではない。詳しくは、後で考察する。
50秒後の写真(上)を見ると、この不明幼虫が萎んでいる。カスミカメに吸い取られたものと判断して間違いないであろう。
別の捕食の様子を2コマ(上と下)示す。3番目、4番目の写真もそうだが、何れも口吻でただ触っているだけの様にも見える。しかし、カメムシは口吻そのものを突き刺すのではなく、その中にある口針を伸ばして刺すのである。口吻は謂わば口針の鞘に当たる。 これらの他に写真は示していないが、口吻の先がコナラの葉に触れているものもある。葉から吸汁しているのか、或いは、只休んでいるのか、区別は難しい。しかし、3番目と4番目の写真から、少なくとも、ヨモギヒョウタンカスミカメがこの不明幼虫を捕食することがあるのは確かであろう。 「カメムシBBS」に問い合わせたところ、「この属(Pirophorus)の仲間は基本的にアブラムシなどの小昆虫を捕食して生活しているものと思われます」との回答があった。 なお、このヨモギヒョウタンカスミカメの近縁種であるクロヒョウタンカスミカメは、コナジラミその他の吸汁性小昆虫を広範囲に捕食する為、現在、生物農薬としての利用を目指して研究が行われているそうである。
ところで、この捕食されている不明幼虫である。一体何の幼虫であろうか。ヤノイスフシアブラムシの幼虫と似ているが、このアブラムシの幼虫には毛がかなり生えているにも拘わらず、件の不明幼虫には、次の写真に示した通り、毛が生えていないし、背面にある赤色の点列は2列しかない(ヤノイスフシ幼虫では4列)。それに、ヤノイスフシ幼虫よりもずっと小さい。 写真に示したのは、終齢と思われる最も大きな個体であるが、体長僅か0.41mmである。ヤノイスフシ幼虫の方は約1.25mmで、体長にして3倍もある。 この被捕食者が終齢とする根拠は、他のこれよりもずっと小さい同様の形態を持つ幼虫が沢山居り、また、かなり長い期間観察したにも拘わらず、これ以上大きな幼虫個体は見つからなかったからである。
終齢幼虫が居れば、その成虫や、種類によっては蛹が見つかって然るべきである。しかし、このコナラの葉裏に見られる怪しげなものと言えば、最後以外の全ての写真に写っている長径0.5mm位の黒くて中央の白い楕円形の「何か」しかない。これは一見ある種のコナジラミの蛹殻に良く似ているのだが、普通のコナジラミの場合は小さなものでも長さ1mm位はある。これはその1/2である。 それに、コナジラミの幼虫は普通は葉に固着して略円盤形をしている。こんなアブラムシの様な6本脚で歩き回る幼虫ではない(この不明幼虫と白黒円盤とは関係ない可能性もある)。 ある種のカイガラムシの幼虫はこの「不明幼虫」に似た形のものもあるらしい。そこで「日本原色カイガラムシ図鑑」で調べてみたが、該当するものはなかった。 そこで、この黒白の円盤も「カメムシBBS」に問い合わせをしたのだが、残念ながら回答は何も得られなかった。専門家も投稿するこのサイトで回答がないのだから、こちとらとしてはもうどうしようもない。精々、来年の夏に辛抱強く観察するほか手が無い様である。 葉裏の世界は難しい。しかし、正体不明のものが色々と有って、妙に好奇心をそそる世界でもある。読者は来年も葉裏の話でウンザリさせられるかも知れない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[昆虫(カメムシ)] カテゴリの最新記事
|