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テーマ:日々自然観察(9825)
カテゴリ:昆虫(アブ、カ、ハエ)
早速、マクロレンズで覗いてみると、眼に縞があり、腹部には黒と橙色の縞がある。マメヒラタアブ属マメヒラタアブ亜属(Paragus(Paragus))のハナアブである。汚れたネットの上に居るのを撮るのではモデルに対して失礼だろうから、虫集め用に買ってきたコスモスの花の上に載せて撮ったのが上の写真。 このマメヒラタアブ亜属は日本に3種が生息し、この辺りに居る可能性のあるのはノヒラマメヒラタアブとシママメヒラタアブの2種だけである。双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に拠ると、シママメは河川沿いなどの草地に特異的に生息する種と考えられており、あまり一般的な種ではないそうである。・・・と云うことは、ノヒラマメか?
掲示板にはシママメとノヒラマメに関する過去の投稿が幾つかある。しかし、どうも両者の区別が今一つ良く分からない。其処で、急いで写真を調整してノヒラマメか否か御伺いを立ててみた。 早速、ハナアブに詳しいpakenya氏から御回答を賜った。これは典型的なシママメヒラタアブ(Paragus fasciatus)の雌とのこと。ハナアブ科(Syrphidae)ヒラタアブ亜科(Syrphinae)マメヒラタアブ族(Paragini)に属す。シママメは東京都本土部昆虫目録にも記録が無く、かなりビックリした。
pakenya氏に拠ると、「腹部背板3節以降に明瞭な横帯を持つのはシマです。特に末端節が黄色いノヒラの例はないようです。また、触角の第2節が第1節より明らかに短いこと、翅の中央部に微毛microtrichiaが認められないこともシマの特徴です」とのこと。写真のハナアブは正にその通りになっている。
また、pakenya氏の御話には、「シマは河川敷の草地に主に生息するようです。ご自宅は多摩川や野川の近くでしょうか?」とあった。我が家は野川からは約500m、仙川(川の仙川)からは約300mだが、両方とも崖を下った所を流れている。川から来たとすれば急斜面を上がってくる必要があるが、以前大型種のヒゲナガカワトビケラが飛んで来たこともあるし、飛翔の出来る虫にとって多少の勾配は大した問題ではないかも知れない。
実を言うと、最初のコスモスの花に載せた背面からの写真を撮った後、横から撮ろうとしたら、コスモスの鉢が倒れてアブさんは何処かに行ってしまい、見えなくなってしまった。 それでは2枚目以降はどうしたのかと言うと、次の日にまた現れたのである。虫集め用に買ったカラミンサの花に留まっていた。しかし、かなり弱っていて、時々花から落ちてしまう。同じ雌だし、恐らく同一個体で、昨日蚊を潰した時にかなりのダメージを受けたのだろう。可哀想なことをしてしまった。 コスモスとカラミンサは隣同士なので、或いは、コスモスが倒れた時に飛んで行ったのではなく、近くに放り出されて、カラミンサまで歩いて来たのかも知れない。其処で、落ちる可能性の少ないコスモスの花に載せてやった。既に掲示板に問い合わせた後であり、東京都未記録のシママメと分かっていたので、シッカリ写真を撮った。
写真を撮り終わり、コムピュータにデータを移して写真の出来を見た後、あることに気が付いた。東京都未記録なのだから虫体を確保して「双翅目談話会」の何方か(「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に書き込みをされている方の多くは「双翅目談話会」のメンバー)に送って何らかの記事にして頂ければ、シママメヒラタアブの分布に関する「新知見」になり、また、東京都本土部昆虫目録の種類数が1つ増えることになる(写真では確実な証拠とはならない。何らかの印刷物にする必要がある)。 私は、写真のモデルになって貰った虫は殺さないのを基本としている。しかし、もう余命幾ばくもない様だし、何時もお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂・改」の皆様(特に東京都本土部昆虫目録の双翅目を担当されているケンセイ氏)のお役に立てれば幸いと思ったのである。
其処で、シャーレを持って(毒ビンで殺す気はしなかった)庭に出たところ、シママメが居ない。ハナアブを狩るギングチバチは最近見ていないし(昨日のギングチバチは昨年9月に撮影)、飛んで逃げるだけの力があったとはとても思えず、やはり下に落ちてスレートの上を這い回っているのではないかと思い、周りの植木鉢をみな退けて探したのだが、残念ながら何処にも見当たらなかった。一体何処へ行ってしまったのだろう・・・。
その後、2日目に撮った写真を「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に載せようとしたところ、そのスレッドの最後にケンセイ氏からの書き込みがあり、東京都では未記録なので再度出現したら虫体を確保して採集報告を書いて欲しい、とのこと。上記の顛末を書いて、残念ながら・・・、とお詫び申し上げた次第である。
ところが、その数日後、この東京都では珍品の筈のシママメヒラタアブが沢山飛んでいる場所を町の奥の方で見付けたのである。今までに何回も撮影に行っているところで、こんな所にシママメが多産するとは、やはり今年は異常な年らしい。 急いで家にとって返し、採集道具を持って来て久しぶりに虫屋を演じた。私は採集報告を書くのに必要な専門的な文献も持っていないし、機関誌を発行しているの昆虫関係の組織にも所属していないので、採集した虫体は早速ケンセイ氏に送付した。これで少しはお役に立てたことであろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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