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kaiちゃってもいいですか?

kaiちゃってもいいですか?

~第九章~


第9章:ほどかれた輪

少年は100年の木に、四角い箱に乗れたことを話した。

そして友人に出会えた事も。

100年の木は、少年が話していない事もなんだか知っているようだった。

 

少年は階段のある場所まで急いだ。

1段、2段、3段、そして5段目まで上りきった。

そして自分の意思で階段を下りてきた。

 

少年にはもうわかっていた。

一番上の段が出口につながってはいない事を。

そして、翼の無い鳥がどうして空を飛ぶことができるのかも。

 

「おいで、クック」

そう言うと少年は、もう一つの場所に向かって歩き始めた。

そして大きな四角い箱の一番前まで行き、箱に向かって話し始めた。

「僕、僕はこの箱にはもう乗りません」

「だから、出発して下さい」

乗り遅れたと思っていた箱は、いつでも少年の目の前にあったのだ。

少年はそれに気付かずに、嘆き悲しんでいただけだった。

「本当に行っていいのかい?」四角い箱が尋ねた。

少年は言った。

「僕は、歩いて行くことにしました。待っていてくれてありがとう」

四角い箱は優しく微笑み、出発した。皆を乗せて。

少年に外の世界から声が聞こえた。

 

立ち止まって 空を見る

立ち止まって空を見ている人を 見る

立ち止まって空を見てる人につられて 空を見る

 

そうやってみんなが上をむけたらいいねぇ

下ばかり向いている人が少なくなったらいいねぇ

でもたまには下を向かなきゃならんね

下には何があるかわからんからね

踏んづけて知らんぷりしちゃえばいいものもあるけど

拾って 優しく 大事にしたら花咲くものもあるからね

 

上も 下も 前も 後ろも

ぜーんぶ見ながら歩けたらすんげーね

でもそんなに見てたら目が回って倒れちゃう

でも倒れたら違った目線でものが見れるわ

いや 全部見てたら先にすすめないのか

そりゃー 元も子もねーな

 

自分の 時分を 自分の尺で

ゆっくり行こう ゆっくり生こう




 

グリルデガバチョ

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